大型連休明けの5月8日より、新型コロナウイルス感染症について、感染症法上の扱いが現行の2類相当から5類へ引き下げられます。今後、コロナ関連のあらゆる制限が撤廃され、いよいよ本格的にウィズコロナ、アフターコロナへと移行していくことを踏まえ、企業への影響や必要な対応を把握しておきましょう。
目次
「5類」移行により、新型コロナは「季節性インフルエンザ」と同等の分類に
新型コロナウイルス感染症の5類への移行方針が2023年1月20日に示されて以降、「何やらゴールデンウィーク明けから、コロナの取扱いが変わりそうだ」というのは明らかになりつつも、そもそも「5類」とはどんなものなのか、引き下げによって何が変わるのか等の具体的なことは一般にあまり周知されていないように感じられます。5月8日以降の企業対応の検討に先立ち、まずは感染症法上の「5類」について理解を深めましょう。
感染症法における新型コロナのこれまでの位置付け
感染症法は1999年4月1日から施行され、感染症予防及び対策の要となっています。あらゆる感染症を、病原体や感染のしやすさ、重症度等に応じて1~5類に分類し、これらに当てはまらない感染症を「新型インフルエンザ等感染症」、「指定感染症及び新感染症類型にあてはまらない感染症」に分類するものです。新型コロナウイルス感染症は、当初「2類」相当とされた後、2020年3月以降「新型インフルエンザ等感染症」に位置づけられ、法の定めに基づき、感染者及び濃厚接触者の外出自粛要請、行動制限、就業制限、緊急事態宣言等の厳しい措置を講じることが可能となっていました。
5類移行後は法律に基づく行動制限等が撤廃され、原則として「個人の判断」に
新型コロナウイルス感染症の分類が5類へと引き下げられる2023年5月8日以降、医療費等の公費負担、保健・医療体制、感染対策等の従来のあらゆる対応が見直される予定です。
例えば、マスク着用や換気実施等の基本的な感染対策は、あくまで個人の判断によるものとされます。また、コロナ患者の外出自粛に関しては状況に応じて推奨されるものとなりますが、法律に基づく措置ではなくなり、こちらも罹患した本人が周囲への配慮として自主的に行うこととなります。企業においては、5類移行に伴うこれらの取扱いの変更を踏まえ、職場のルールを見直していく必要があります。
参考:全国知事会新型コロナウイルス緊急対策本部「新型コロナウイルス感染症の5類感染症への変更に伴う主な課題と対応について」
職場における感染症対策 見直しのポイント
新型コロナウイルス感染症の5類引き下げに伴い、企業においてはコロナ禍で当たり前に行ってきた労務管理、従業員対応を再検討していかなければなりません。ここからは、具体的な見直しのポイントについて考えていきましょう。
マスク着用について
新型コロナの5類移行に先立ち、2023年3月13日より、これまで屋内では原則着用とされていたマスクについて「個人の判断による」とされました。この点、職場におけるマスク着用に関して、厚生労働省は「事業者が感染対策上又は事業上の理由等により、利用者又は従業員にマスクの着用を求めることは許容される」との事務連絡を発出していることから、職場方針については各現場の判断によるものとされています。ただし、企業は方針に従わない従業員に対し、マスク着用(もしくはマスクを外すこと)を強要してはいけません。
関連記事:『2023年3月13日より「個人の判断」となるマスク着用!職場におけるルール作りを』
手指消毒や検温について
コロナ禍に入ってからこれまで、前述の「マスク着用」以外にも、始業前の検温や定期的な手指消毒、パーテーションの設置、会話の制限等を講じてきた職場は多く見受けられます。新型コロナは5類に移行しますが、まだまだ予断を許さない状況であることに変わりありませんから、これらの基本的な感染症対策については継続する方向で取り組んでいくのが良いでしょう。
参考:厚生労働省「職場における新型コロナウイルス感染症への感染予防及び健康管理に関する参考資料一覧」
テレワークについて
コロナ禍で日本企業に一気に浸透したテレワークですが、新型コロナの5類引き下げを踏まえて、制度運用の見直しを行う企業が増えています。もっとも、テレワーク自体は感染症対策の観点だけでなく、働き方改革や両立支援の推進、多様な人材確保に寄与する等のメリットも大きいため、コロナ禍を脱するからと言って自動的に廃止されるべき制度ではありません。しかしながら、コミュニケーション上の問題や生産性の低下、人事評価や勤怠管理の難しさ等、実際にテレワークを導入してみて浮き彫りになった課題も多かったのではないでしょうか。こうした状況から、テレワーク自体の意義や制度内容を見直すタイミングに来ているのです。
体調不良者、感染者への対応
体調不良の従業員や新型コロナに感染した従業員から「体調が悪いため休みたい」との連絡を受けた場合、通常の欠勤扱いとして問題ありません。従業員から有給休暇や病気休暇の取得申請があった際には、就業規則の定めに則って処理します。
一方、新型コロナ感染が疑われる体調不良者、コロナ感染者でも症状が軽度で出勤を希望する従業員、もしくは濃厚接触者への対応には注意が必要です。前述の通り、新型コロナの5類引き下げに伴い、コロナ感染者等に対する行動制限は撤廃されます。ただし、企業は安全配慮義務の観点から、従業員本人が働ける状態であり就業を希望する場合であっても、テレワークを命じる、もしくは休業命令を出す等といった出社以外の対応を検討することになります。休業命令を出す場合、会社都合による休業となるため、休業手当の支払いが必要です。テレワークや休業を命じる期間に関しては、新型コロナと同じく5類に分類される季節性インフルエンザに関わる学校の出席停止期間(発症後5日経過、かつ、解熱後2日経過)の考え方に準ずるのが適切でしょう。
関連記事:『インフルエンザによる欠勤や出勤停止は有給か無給か?』