「コロナ後遺症」とは?企業において留意すべき、就業上の配慮を確認

新型コロナウイルス感染者が国内で初めて確認されてから3年が経過し、依然として終息には至らずとも、事態は着実に良い方向に向かいつつあると感じられます。その一方で目を向けるべきは、長期に渡り後遺症に苦しむ方の存在ではないでしょうか。コロナ罹患後の後遺症により、就業に支障をきたすケースも珍しくないようです。企業においては、コロナ罹患後の従業員へのケアを適切に講じていく必要があります。

コロナ罹患後、2ヶ月以上続く原因不明の体調不良は「コロナ後遺症」の可能性

新型コロナウイルス感染症に罹患した後、すでに感染性が消失したにもかかわらず、療養中にみられた症状が続いたり、新たに症状が出現したりすることがあり、これを「罹患後症状」(いわゆるコロナ後遺症)といいます。

新型コロナウイルス感染症における「罹患後症状」の定義

WHO(世界保健機構)によると、罹患後症状とは、新型コロナウイルスに罹患した人にみられ、少なくとも2ヶ月以上持続し、他疾患による症状として説明がつかないものと定義されています。罹患後症状の発症率は、当初に罹患した際の症状の程度により異なりますが、酸素吸入無しの患者であっても実に37.7%が、当初の発症後6ヶ月時点で何らかの後遺症を抱えていることが明らかになっています

主な罹患後症状の種類

ひと口に「罹患後症状」といっても、人によって症状は様々です。全身症状として倦怠感や疲労感、関節痛が長引く方もいれば、咳や息切れといった呼吸器系症状、集中力低下や記憶障害等の精神・神経症状、嗅覚・味覚障害が残る方も少なくありません。また、罹患した際には発症しなかった症状が、罹患後に新たに出てくることもあるようです。

参考:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)について

職場においては、コロナ後遺症の可能性を踏まえて、就業上適切な配慮を

御社にはコロナ罹患後、長引く体調不良によりたびたび欠勤している従業員、もしくは休業中であったり、復帰できずにそのまま離職してしまったりした従業員はいないでしょうか?新型コロナの罹患後症状が原因となって仕事に復帰することのできない労働者は、世界に約400万人いると言われています。企業においては、コロナ後遺症を踏まえた就業上の配慮を講じていく必要があります。

罹患後症状は労災適用対象となります

従業員が業務によって新型コロナウイルスに感染した場合、労災保険給付の対象となることはすでに別記事で解説した通りですが、罹患後症状により療養が必要な場合にも同様に、労災の適用対象となります。労災保険給付の請求は、原則として労働者本人が行うものですが、職場としても必要な支援を行いましょう。

参考:厚生労働省「業務によって感染した場合、労災保険給付の対象となります

症状に応じた就業措置の検討を

罹患後症状で欠勤・休業していた従業員の職場復帰は、主治医や産業医の見解を踏まえた上で、業務内容や職場環境に鑑みて最終的に事業主が「問題なし」と判断して初めて可能になります。ただし、必ずしも罹患以前の働き方が可能となるわけではないため、本人の症状や体力に応じ、適切な配慮を講じることが求められます。具体的には、時差出勤や短時間勤務、テレワーク、通院を考慮した勤務シフト等が挙げられます。併せて、定期の体調確認と就業措置内容の検討も欠かすことはできません。

罹患後症状に対する差別・偏見のない職場作り

新型コロナウイルス感染症に罹患した方のおよそ半数が、差別や偏見を経験したと感じたことがあるというデータがあります。感染拡大下を経て、感染者に対するこうした心理的負担への配慮は、すでに各現場で進められているかと思います。これと同様に、罹患後症状に関しても、従業員各人が正しい知識をもつことで、差別や偏見の目を持つことのないようにしていく必要があるでしょう

例えば、罹患後症状によって周囲の人が感染することはありません。新型コロナウイルスの感染可能期間は、一般的に発症2日前から発症後7~10日とされていますから、罹患後症状により通院中の従業員であっても、無理のない範囲で就業できます。「体調不良者は出勤しなくて良い」と会社が一方的に判断するのではなく、本人とよく話し合うことはもちろん、医師の意見も踏まえ、慎重に判断しなければなりません。

長引く罹患後後遺症について、正しく理解しましょう

今号で解説した、企業における罹患後症状への対応は、日本産業衛生学会と日本渡航医学会が公開する「職域のための新型コロナウイルス対策ガイド 第6版」に追加されています。新型コロナウイルス感染症は着実に収束へと向かいつつありますが、一方で罹患後後遺症の可能性に留意し、職場において都度適切に対応できるようにしましょう。

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