雇用契約書ではなく、雇用契約書兼労働条件通知書を使おう!

労働者を雇う場合、口約束だけでも契約が成立しますが、トラブルを避けるために雇用契約書を作成している事業主は多いかと思います。この雇用契約書の作成は、事業主の義務ではありませんが、労働条件通知書を作成して労働者に渡すことは事業主の義務です。では、この雇用契約書と労働条件通知書の違いとは何か、どちらを作成すればよいのか等説明をいたします。

労働条件通知書とは

法律では、入社時に労働条件通知書を必ず交付しなければならないとされています。この労働条件通知書は、「貴方はこの条件で働きますよ」という内容で事業主が一方的に通知する書類です。一方的に通知するだけですので、労働者としては受け取った後「聞いていた話と違う」ということになれば、トラブルになる可能性があります。

雇用契約書とは

雇用契約書とは、労働契約書ともいい、事業主と労働者双方で取り交わす契約書です。労働条件通知書のように法律的に作成する義務はありません。では、なぜ義務がある労働条件通知書ではなく、雇用契約書を作成する事業主が多いのでしょうか?それは、労働トラブルを防ぐためです。口約束だけでは、「言っていない」「聞いていない」とトラブルになる可能性は否定できません。労働条件通知書しかりです。

そこで、事業主と労働者が「この労働条件で働きますよ」という合意の内容の文書が必要となってくるのです。また、契約書ですので、必ず「署名、押印(最近では署名があれば押印がなくてもOK)」の欄が必要となります。署名がないものは、契約の効力を主張できないからです。よく、雇用契約書に代表者等の印を押しているものを見かけますが、署名ではありませんので、必ず印が必要となります。また、労働者側の欄にすでにパソコンで入力して渡すケースがありますが、ここは本人に署名をさせてください。

雇用契約書及び労働条件通知書に明記すべき事項

雇用契約書でも労働条件通知書でも必ず記載しなければならない絶対的明示事項があります。この記載がないとトラブルになった場合、事業主の責任問題に発展します。
絶対的記載事項とは、下記の5つです。

  1. 労働契約の期間
  2. 就業の場所及び従事すべき業務
  3. 始業及び終業の時間
    所定労働時間を超える労働の有無
    休憩時間、休日、休暇、
    労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
  4. 賃金、計算及び支払いの方法、賃金の締切及び支払いの時期並びに昇給
  5. 退職に関する事項

有期契約の場合には、下記の項目も明示する必要があります。

  1. 更新の有無及び更新の条件
  2. 昇給、退職手当、賞与の有無
  3. 短時間就労者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口

最後の項目は、パートタイマー労働法の改正に伴い追加された内容で、わかりにくく明示していない事業主も多くみられますが、この内容に関しては、契約書に記載しなくても別の書面で「相談窓口があり担当者は〇〇さん」を記載して渡しても大丈夫です。

雇用契約書は、一度交わすだけでではダメ

トラブルを防ぐ雇用契約書ですが、入社時のままになっているケースが多いものです。法律的には、「同一条件で更新される場合には、その都度交付しなくてもよい」となっていますが、何年間も同じ条件が続くケースはまれだと思います。よくトラブルになるのは、仕事内容や就業場所です。この仕事内容でこの就業場所で働けると思って契約したのに、違うのはおかしいというものです。入社時の契約がそのまま続いているからでしょう。この場合は、必ず労働者の合意を得て契約書を変更する必要があります

さらに、この契約書は助成金の審査の際には必ず提出しますが、かなり厳しいチェックが入ります。助成金の申請を考えている事業主は要注意です。現在の雇用条件に合っている内容がどうか、さらに就業規則との整合性もチェックされます。就業規則の見直しを何年もしていない場合、現状と内容があっていないと指導されて、就業規則の見直しを直ちに行わなければいけなくなります。特に現状に合わせて昇給時期や退職時期を変更した時は、必ず就業規則の変更をお願いします。

まとめ_トラブル防止のためにも雇用契約書兼労働条件通知書がおすすめ

労働条件通知書は作成義務があり、雇用契約書は義務ではありませんが、トラブル防止に有効ということで、この2つを合体させて「雇用契約書兼労働条件通知書」の名称で作成をお勧めします。内容の絶対的記載事項はどちらも同じなので、それを網羅していれば何ら問題はありません。

会社にとっても、労働者にとっても、働くうえで非常に重要な「雇用契約書兼労働条件通知書」。双方がその内容に合意して「働いてもらう」「働きます」という取り決めです。また、最近の仕事等に関する現状が、契約書と大幅に変わるときには、必ず本人に「了解」を求め、それを書面である「雇用契約書兼労働条件通知書」に残しておきましょう。

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