新型コロナ罹患後症状の労災適用の取扱いが明確化!コロナ後の諸症状にも労災適用の可能性

新型コロナウイルスに起因するあらゆる制限が徐々に緩和し始め、少しずつではあるものの「コロナもだいぶ落ち着いてきたな」と感じられるようになってきました。その一方で、罹患者の中には、コロナの後遺症ともいえる諸症状に長期間苦しむ方も、依然として多くいらっしゃいます。
こうした状況を受け、厚生労働省は2022年5月12日付で、都道府県労働局宛に新型コロナウイルス感染症に係る罹患後症状の労災補償における取扱いに関わる新たな通達を発出しています。さっそく概要を確認しましょう。

業務上のコロナ感染後の罹患後症状に関わる労災の取扱いが明確化

新型コロナウイルス感染症の労災適用については、すでに厚生労働省から発出されている「新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて」に基づき実施されています。本通達は主に、職場で新型コロナ陽性者が発生した際の労災適用の考え方を示したもので、打刻ファーストでも具体的に解説させていただきました。

参考:『従業員が新型コロナウイルス陽性者に!労災適用の判断は?

このたび発出された「新型コロナウイルス感染症による罹患後症状の労災補償における取扱い等について」では、感染性消失後の罹患後症状に関わる労災補償の取扱いが明らかにされています。

幅広く労災保険給付の対象とされる「罹患後症状」とは?

通達では、業務上の新型コロナウイルス感染後の症状(罹患後症状)について、療養等が必要と認められる場合は労災保険給付の対象とする旨を明記しています。「罹患後症状」としてどのようなものがあるかは、2022年4月に取りまとめられた「新型コロナウイルス感染症診療の手引き 別冊罹患後症状のマネジメント(第1版)」で具体的にされています。


代表的なものだけでも、これだけの症状が挙げられます。さらに、これらの発症の仕方は様々です。コロナの感染性が消失した後から持続するケース、一旦落ち着いたように見えても再発するケース、罹患後症状が変化するケース等があることに加え、現時点ではこれらが永続する症状か否かも明らかではありません。

これを踏まえ、罹患後症状に対する労災保険給付の取扱いは以下の通り示されています。

罹患後症状に対する療養補償給付、休業補償給付、障害補償給付の取扱い

■ 療養補償給付
医師により療養が必要と認められる以下の場合については、本感染症の罹患後症状として、療養補償給付の対象となる。
ア 診療の手引きに記載されている症状に対する療養(感染後ある程度期間を経過してから出現した症状も含む)
イ 上記アの症状以外で本感染症により新たに発症した傷病(精神障害も含む)に対する療養
ウ 本感染症の合併症と認められる傷病に対する療養

■ 休業補償給付
罹患後症状により、休業の必要性が医師により認められる場合は、休業補償給付の対象となる。
なお、症状の程度は変動し、数か月以上続く症状や症状消失後に再度出現することもあり、職場復帰の時期や就労時間等の調整が必要となる場合もあることに留意すること。

■ 障害補償給付
本感染症の罹患後症状はいまだ不明な点が多いものの、時間の経過とともに一般的には改善が見込まれることから、リハビリテーションを含め、対症療法や経過観察での療養が必要な場合には、上記のとおり療養補償給付等の対象となるが、十分な治療を行ってもなお症状の改善の見込みがなく、症状固定と判断され後遺障害が残存する場合は、療養補償給付等は終了し、障害補償給付の対象となる。

罹患後症状の労災申請に関わる相談には、できる限り寄り添う姿勢を

繰り返しになりますが、コロナの罹患後症状は様々な形で現れ、しかも発症の仕方・時期も一括りにできるものではありません。従業員から罹患後症状に係る労災申請の相談を受けた際、まず本人の辛い心情に寄り添い、会社として労災請求手続きに最大限の協力する姿勢を示すことが大切です。

このとき、「コロナはもう治ったんだろう」等と労災請求を退けるような対応は厳禁ですが、一方で、確実に労災適用となるような発言にも注意する必要があります。このたびの通達で示された通り、罹患後症状が幅広く労災適用となる可能性を理解しておくことは重要ですが、最終的に労災適用となるか否かはあくまで請求・審査を経て初めて判明します。くれぐれも従業員に対し誤解を招くことのないよう、丁寧かつ慎重な対応が求められます。

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