台風接近時の出社判断、「従業員任せ」はNGです!

全国各地で梅雨明けが報告され、早くも台風シーズンを迎えています。御社では、台風接近時の出社ルールを取り決めているでしょうか?実際の企業対応は各社様々ですが、一体どのような取り扱いが正しいのかと、判断に迷われることもあるでしょう。併せて、台風等の災害被害によって休業を余儀なくされる場合の対応についても、企業はあらかじめ定めておき、従業員間で共有しておかなければなりません。
今号では、台風接近時の出社ルール、及び災害時の事業継続計画策定の必要性について解説します。

台風接近時の出社判断に、法的な取決めはなし

台風接近時の出社判断に関しては、現場においてその時々で頭を悩ませるテーマでしょう。この点、結論から言えば、出社ルールを明確に定めた法律はなく、労働者を出社させるかどうかは会社に委ねられています。ただし、労働者に対する安全配慮義務の観点から、「通勤途中の危険が想定される中で出勤を求める」または「完全に労働者の自主性に任せる」といった取り扱いはするべきではありません。
会社として以下の観点におけるルールを定め、いざ台風が接近した際、労働者の安全に配慮した適切な行動指針を示せるように準備しておく必要があります。

✓ 出勤に関わるルール(休業、遅刻、早退等の取り扱いの基準、特別休暇や有給休暇の取得奨励等)
✓ 就労に関わるルール(泊まり込みや在宅勤務等の対応、休業者の管理等)
✓ 賃金補償について(休業手当等)

台風被害に伴う休業、労働者への補償は「使用者の責に帰すべき事由」の有無による

台風被害等の災害に伴い、やむを得ず労働者を休業させる場合の取扱いについては、個別事案ごとに諸事情を総合的に勘案すべきものです。大きな災害の発生時、政府は、労働基準法や労働契約法の観点から使用者が守らなければならない事項を公表しています。台風関連の取扱いに関しては、以下のQ&Aが参考になります。

参考:厚生労働省「令和元年台風第 19 号による被害に伴う労働基準法や労働契約法に関するQ&A

労働者を休業させる際の手当の支払いは、休業の理由が「使用者の責に帰すべき事由」なのか「天災地変等の不可抗力による事由」なのかによって異なり、ひと口に「台風による影響」といっても実態を考慮し慎重な判断が求められる点に注意しなければなりません。

災害時マニュアルをすべての企業に

出典:中小企業庁「中小企業BCP策定運用指針

東日本大震災の発生以降、企業におけるBCP(事業継続計画)策定への関心が高まりをみせています。御社では、災害時の対応マニュアルが作られているでしょうか?
地震や台風、火災等の災害は、突如として発生するものです。大企業と比較して経営基盤が脆弱な中小企業においては、もしもの時に有効な手立てを打てないことが、事業縮小や廃業につながる可能性も否定できません。折をみて、災害時マニュアルの策定に目を向けられることをお勧めします。企業におけるBCP(事業継続計画)策定時には中小企業庁の指針を参考にすることもできますが、専門的知識を要することから、専門家の見解を踏まえるのが得策です。

台風接近時の出社命令は慎重に判断を

台風接近時の出社命令は、「安全配慮義務」との兼ね合いから適切な判断が求められます。企業の安全配慮義務違反は、「予見可能性(ケガなどの発生が予測された、予測できたと認定できた)」「結果回避性(ケガなどを回避する方法があったのに実行しなかった)」「因果関係」から検討されますので、出社ルールについてもこれら3観点からの検討が必要です。しばしば「来られる人だけ出社して」等と従業員に判断をゆだねるケースが見受けられますが、会社としてのルールがなければ従業員側の混乱を招く原因となります。
令和元年度の台風19号接近時のツイッターで「#台風だけど出社させた企業」がトレンド入りする等、企業における災害時の就業ルールは社会的にも特に関心を集める話題であることが分かります。くれぐれも、企業として適切な対応を心がけましょう。

関連記事:「台風等による大規模災害時|使用者が守るべき労働関係の対応Q&A

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