【労働保険年度更新2020】事業廃止の場合、「廃止日が4月1日より前か、後か」で手続きに違いがあります

今年も6月を迎え、労働保険年度更新の季節がやってまいりました。今般の新型コロナウイルス感染症の影響により、最近やむを得ず事業を廃止した、もしくは廃止を決断した事業所も少なくないかもしれません。今号では、事業廃止に伴う労働保険年度更新時の申告書記入方法について解説しましょう。

事業廃止時には、労働保険料の確定申告が必要です

事業を廃止した場合、「確定保険料申告書」にて申告・納付済みの概算保険料を清算することになります。廃止申告の手続きは、本来保険関係が消滅してから50日以内に行うものですが、毎年、年度更新のタイミングで年度末での廃止に伴うお手続きについてご相談いただくことも多くあります。その際には、年度更新ではなく廃止申告の取扱いとして申告書作成を進めさせていただいています。

廃止申告は、事業廃止の年月日によって提出する申告書が若干異なります。具体的には、事業廃止が「3月31日」か「4月1日以降」で変わります。よって、申告書③「事業廃止等年月日」は必ず記入しましょう。併せて、右下の㉔「事業廃止等理由」の記入も忘れないように行います。

事業廃止日が「2020年3月31日」以前の場合

出典:厚生労働省「令和2年度事業主の皆様へ(継続事業用)労働保険年度更新申告書の書き方(全体版)_25ページ

3月31日以前に事業廃止となった場合、確定した労働保険料を申告し、前年の年度更新で納付済みの概算保険料との差額との清算を行いましょう。
申告書の上段「確定保険料算定内訳」の各欄に記入し、⑩「確定保険料・一般拠出金額」の(イ)「労働保険料(労災+雇用)」と、下段の⑱「申告済み概算保険料額」との差額を算出します(各項目は、それぞれ図中の黄色囲みの欄)。不足があれば一般拠出金額と併せて納付し、納付済みの概算保険料額の方が多くなれば一般拠出金への充当や還付請求を行います。

なお、「概算保険料算定内訳」の欄には何も記入しません。⑭「概算保険料額」の各欄に「0」を書き込む例を散見しますが、廃止申告の場合は「0」も不要です。

事業廃止日が「2020年4月1日」以降の場合

一方、事業廃止日が4月1日以降で、年度更新を行う以前(例えば5月中など)の場合

  1. 通常の年度更新手続き(前年度の確定保険料申告と、4月1日以降事業廃止日までの概算保険料の申告・納付)
  2. 4月1日以降事業廃止日までの確定保険料の申告と、①で申告した概算保険料との差額清算

を行うため、2枚の申告書が必要となります。この場合の手続きは通常よりも複雑になりますので、労働局や労働基準監督署の窓口で相談しながら申告書作成を進めましょう。
また、事業廃止日が4月1日以降で、年度更新を行う日以降(例えば8月など)の場合、年度更新のタイミングでは一旦

  1. 通常の年度更新手続き(前年度の確定保険料申告と、4月1日以降事業廃止日までの概算保険料の申告・納付)

を行い、事業廃止日以降、改めて②の確定申告手続きを行うことになります。

労働者がいない、今後労働者の雇用見込みがない場合の取扱いは?

今号でご紹介した廃止申告は、3月31日時点で既に一人も労働者を雇用しておらず、今後も雇用の見込みがない場合の手続きとしても有効です。この場合、前述の<事業廃止日が「2020年3月31日」以前の場合>と同様に申告書を作成します。

ただし、4月1日以降、現時点で労働者を雇用していなくても、今後雇用の見込みがある場合には、概算保険料を計上し、保険関係を継続させる手続きが必要となります。この場合の概算保険料は、原則「前年度の確定保険料算定基礎額と同額」を計上することになっていますが、賃金総額の見込みが前年度と比較して1/2以下、または2倍以上となる場合には見込み額を記入します。

保険関係は、一度消滅させてしまうと、今後雇用した際に改めて適用手続き等が必要となります。現時点で労働者を雇用していない場合でも、長期的に見て雇用の可能性があるならば、安易に廃止申告をするのではなく、概算保険料を立てて保険関係を継続するのが原則となります。

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