【給与前払いサービスとは?】企業・従業員それぞれのメリットと導入のポイントを解説!

近年盛り上がりを見せる「給与前払いサービス」をご存知でしょうか?
「給与前払いサービス」とはその名の通り、会社で決められた給与の支払日前に給与を受け取ることができるサービスです。

本記事ではそんな給与前払いサービスについて、深掘っていきます。

給与の「前払い」とは

最初に概念の確認ですが、「前払い」は「前借り」とは異なるものです。「前借り」は、まだ働いていない期間の賃金を借金として借りるということに対し、「前払い」は、既に働いた期間の賃金を賃金の支払日前に受け取るということであり、借金ではありません。

労働基準法第25条には次のような定めがあります。

使用者は、労働者が出産、疾病、災害その他厚生労働省令で定める非常の場合の費用に充てるために請求する場合においては、支払期日前であっても、既往の労働に対する賃金を支払わなければならない。

給与前払いサービスが一般的になる以前から、実は、労働基準法において、労働者が給与の前払いを受けることができる権利は法的に認められていました。ただし、給与の前払いが認められるのは出産・疾病・災害などの非常時に限られおり、また、そもそもこのような法制度があること自体があまり知られていないというのが実情でした。

このような中、「ペイミー」「エニグマペイ」「キュリカ」といった事業者が登場し、給与前払いサービスは徐々に知名度が高まってきています。

従業員は理由に関わらず、本人が前払いを受けたいと思ったとき、上記のような事業者経由で給与の前払いを受けることができます。その際、本来の給与支払い日には、手取額から前払いで受け取った金額(および手数料)を差し引いた額が入金されるという形になります。

給与前払いサービスはなぜ必要?従業員にとってのメリット

給与前払いサービスは、働く人にとっても企業にとってもメリットのあるサービスです。

まず、働く人のメリットですが、ズバリ「キャッシュフローの改善」です。
給与は締日と支払日が定められており、多くの企業では「月末締め、翌月20日払い」とか「月末締め、翌月25日払」というように、翌月の中旬以降が給与の支払日に定められているのではないかと思います。

そうしますと、とくに新入社員の場合は、入社してから1か月半ないし2か月近く、給与を受け取れないことになるのです。
既存の社員の場合も、引越しや冠婚葬祭などで、急にお金が必要になることはあるでしょう。次の給与支払日がまだ先で、キャッシュフローが厳しくなると、貯金を切り崩すようになるでしょう。場合によっては、カードローンや消費者金融などでお金を借りたりして、急場をしのがなければならないということも出てきてしまうかもしれません。カードローンや消費者金融は金利も高く、負担が大きくなってしまうものです。

このようなときに役立つのが給与前払いサービスです。既に働いた分の給与を、給与支払い日前であっても、給与前払いサービス事業者を経由して受け取ることができるのです。
前払いサービスが窓口となることで、直接会社に依頼するよりも心理的なハードルを下げることができます。

給与前払いサービスを企業が導入する理由

次に、会社にとっての給与前払いサービスのメリットを紹介します。

会社が自ら社員に前払いを行おうとする場合、会社のキャッシュフローに影響が出てしまいます。
この点、「立替え型」の前払いサービスが役立つのです。給与前払いサービス事業者が、前払い分の金額を給与の本来の支払日まで立て替えてくれますので、給与前払いサービス事業者を経由することで会社のキャッシュフローを安定させることができます。

「デポジット(預り金)型」の前払いサービス事業者の場合は、企業があらかじめデポジットを拠出しなければなりませんので、キャッシュフローの改善にはつながりません。しかし、前払いの処理をする事務作業を代行してもらえるということで、少なとも業務の効率化にはつながります

さらには、給与前払いサービスは人事戦略においても役立ちます。
採用活動において、給与の前払い制度があることを求人広告に記載したり面接時に伝えたりすることで、社員に配慮した福利厚生制度の1つとしてPRすることができます。給与前払い制度を導入することで既存社員の満足度も向上するでしょう。

給与前払いサービスの注意点

給与前払いサービスを利用する場合の主な注意点は2つあります。

1つ目は、利用料や振込手数料の扱いです。

給与前払いサービスの事業者は、サービスの利用料や振込手数料を収益源としています。
これらの利用料や振込手数料を企業側が負担している場合は特段の問題はありませんが、社員側が負担している場合は、本来の給与から利用料や振込手数料が天引きされることになりますので、労働基準法で定められた給与支払原則の1つ「全額払いの原則」に違反する恐れがあります。この違反を回避するためには、「賃金控除の労使協定」を締結し、給与前払いサービスの利用料や振込手数料を従業員が負担することにあらかじめ労使の合意をしておくことが必要です。

2つ目は、勤怠集計を正確に行わなければならないということです。

給与の前払い可能額の計算は、勤怠データをもとに行われます。クラウド勤怠システムからCSVやAPIで勤怠データを取り込むことによって、給与前払いサービス事業者は前払い可能額を算出します。正しく勤怠データが入力されていない場合は、前払い可能額も正しく算出することができません。ですから、給与前払いサービスを導入する場合は、クラウド勤怠管理システムを導入することはもちろん、システムの正確な運用も求められますので、社員に対しては、確実に勤怠の打刻を行うことを周知徹底するようにしてください。

給与前払いサービスで、電子マネーによる前払いは不可

海外では、電子マネーによる給与の前払いが解禁されている国もあります。
しかし、日本では、労働基準法で給与は現金で支払うことが絶対的な義務とされており、前払いを含め、電子マネーで給与を支払うことはできません。

この点、日本発のベンチャー企業であるドレミング社は、海外で電子マネーによる給与前払いで大きな実績を持っています。
同社は、厚生労働省などにも働きかけ、日本でも電子マネーによる給与の前払いの実現を目指しているということです。
厚生労働省でも、以下のように電子マネーによる給与支払いの解禁に関する議論が始まっているようです。

厚生労働省は企業などがデジタルマネーで給与を従業員に支払えるよう規制を見直す方針を固めた。2019年にも銀行口座を通さずにカードやスマートフォン(スマホ)の資金決済アプリなどに送金できるようにする。従業員が現金として引き出すことができ、資金を手厚く保全することなどが条件。日本のキャッシュレス化を後押しする狙いで、給与の「脱・現金」にようやく一歩踏み出す形だ。(日本経済新聞 2018/10/24) 

まとめ:福利厚生として有用な給与前払いサービス

給与前払いサービスの導入は、企業にとって、大きなコストもリスクもなく、福利厚生を充実させられる魅力的な手段の1つです。近い将来、電子マネーによる前払いも認められるようになるでしょう。クラウド勤怠システムの導入と合わせ、給与前払いサービスの導入も、是非積極的に検討をしてみてはいかがでしょうか。

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