フレックスタイム制導入・運用時に実務で迷う論点3選

多様な働き方が求められる時代背景や、コロナ禍によるテレワークの浸透などにより、フレックスタイム制を導入する会社が増えています。

フレックスタイム制については、書籍やWEB記事、厚生労働省のリーフレットなどで、既に多々解説されていますので、本稿では、フレックスタイム制の全体像を解説することは目的にしていません

そのかわり、本稿は、一般的な解説ではあまり触れられていないが、実務上よく問題となる論点を3つに絞り、「痒い所に手が届く」という視点からフレックスタイム制を解説させて頂きます

論点1 フレックスタイム制の遅刻控除の可否

フレックスタイム制では、コアタイムを設けない、いわゆる「スーパーフレックス制」も可能ですが、たとえば「10:00~15:00は必ず就労しなければならない」というように、コアタイムを設けることが一般的だと思います。

この点、コアタイムに遅刻があった場合、遅刻控除を行うことができるのかどうか、というのは実務上、よく受ける質問の1つです。

結論から申し上げれば、総労働時間がフレックス対象期間の所定労働時間に達していれば、遅刻控除を行うことはできません。フレックスタイム制は、「1ヶ月」など、労使協定で定めた期間の所定労働時間に対する過不足によって不就労控除を行う法制度だからです。

欠勤があった場合も同様に、他の日に長い時間働いて、欠勤分の時間数をリカバリーし、総労働時間に達した場合は欠勤控除を行うことはできません。

それでは、フレックスタイム制適用者は、遅刻も欠勤も「し放題」なのでしょうか?

それは違います。

あくまでも、賃金計算上、遅刻控除や欠勤控除を行うことができないというだけであって、「遅刻」や「欠勤」という「勤怠事故」の記録を残すことは可能です。

ですから、フレックスタイム制であっても、遅刻や無断欠勤があった場合には、人事考課に反映させて、昇進や賞与のマイナス材料として扱うことが可能です

また、労使協定にその旨を定めておけば、遅刻や欠勤を繰り返し、フレックスタイム制の適用が相応しくない労働者については、会社の判断で、フレックスタイムの適用を除外することも可能です。

論点2 フレックスタイム制の休日出勤の扱い

フレックスタイム制で休日出勤があった場合、所定労働時間の枠内に含めるべきかどうか、悩むことが多いようです。

この点、法定休日については、所定労働時間に含めることはできません。必ず別枠で計算して、35%以上の割増賃金を支払うことが必要です

法定外休日については、法律上の絶対的なルールはありませんので、労使協定の定め方次第です。所定労働時間の枠内でカウントすることも可能ですし、別枠で計算して、直ちに割増賃金の対象とすることも可能です。

しかし、実務上は、法定外休日の出勤時間数をどのように扱うか労使協定で定めておらず、給与計算時に右往左往することも珍しくないようです。

実際に休日出勤があった場合に備え、労使協定への定めを忘れないようにしてください。

なお、フレックスタイム制は「所定労働日」の労働時間を労働者の判断に委ねる制度であり、勝手に休日出勤することまでを認める法制度ではありませんので、この点は勘違いをしないようにしてください。休日出勤は通常の労働者と同様、会社による業務命令か、会社の許可を得て行なう必要があります。

逆に、所定労働日に、労働者の勝手な判断で休む(1分も労働しない)ことも不可です。

論点3 フレックスタイム制の総労働時間を超えた場合の割増率

フレックスタイム制では、実労働時間が、「1ヶ月」など対象期間の総枠として定められた所定労働時間を超過した場合に残業代が発生します

たとえば、「所定労働日数×8時間」を総枠労使協定で定めていて、ある月の所定労働日数が20日であれば、160時間が所定労働時間ということになります。

このとき、160時間を超えたら残業代の対象となるということは、容易にイメージをすることができるでしょう。

しかし、160時間を超えた時の残業代の単価が100%(割増無し)で良いのか、125%以上(割増あり)なのか、実務上は給与計算時に悩むことが多いようです。

この点、「法定労働時間」を超えている部分は、必ず125%以上としなければなりません

フレックスタイム制では、会社が定める「所定労働時間」とは別の概念で、「法定労働時間」という概念もあり、所定労働時間は法定労働時間を超えてはならないとともに、実労働時間が法定労働時間を超えたら125%以上の割増賃金の対象となります。

上記の例でいえば、ある月の歴日数が31日であれば、法定労働時間は177.1時間となります(月の歴日数により法定労働時間は異なる)。

ある月の総労働時間が200時間だった場合、「177.1時間超~200時間」の部分の残業は、125%以上の割増賃金の対象となります。

これに対し、「160時間超~177.1時間」までの残業は、100%なのか125%以上なのかは、労使協定の定め次第です。

この、「所定労働時間超~法定労働時間まで」の残業の取扱いについても、労使協定で定められていないことが実務上は少なくありませんので、是非明記をするようにしてください。

まとめ 正確な理解をした上でフレックスタイム制の運用を

このように、フレックスタイム制は、正確な理解をした上、労使協定を的確に締結しなければ、実務運用時に様々な困り事が生じてしまいます。

皆様の会社でもフレックスタイム制を導入している場合は、改めて労使協定の内容をチェックしてみてください。

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