給与計算の間違いで賃金支払いに過不足が発生!支払い済み給与の過払い・不足への正しい会社対応は?

給与計算に関しては、毎月の業務ながらミスが許されないとあって、プレッシャーを抱えているご担当者様も多いのではないでしょうか?どんなに気を付けていても、人間のやることですから間違いは起こり得ます。重要なのは、間違いが生じてしまった後に適切な事後対応を講じられるかどうかです。今号では、給与計算の間違いで賃金支払いに過不足が生じた際の対応について確認しましょう。

給与の過払い時には、従業員に返還を求めることが可能

勤怠登録上の誤り等で給与を本来の額よりも多く支払ってしまうケースは、実務上、多々見受けられます。そんな時、「こちらが間違えたのだから、返してもらうのも・・・」とそのままにしてしまうこともあるようですが、民法上、不当利得返還請求権に則って従業員に対して返還を求めることが可能です。

まずは従業員に対し、丁寧な説明と謝罪を

給与計算のミスが発覚した場合、従業員への説明と謝罪を欠かすことはできません。給与計算はお金、つまり生活の糧に直結しますから、些細な間違いであっても従業員にとっては気になるものです。間違いが発覚した時点で、どのようなミスが、なぜ生じてしまったのかを本人に伝え、誤りがあったことに対して謝罪しましょう。その上で、過払い分の返還に関わる手続きをとることに同意してもらう必要があります。
後述する通り、多くの場合、過払いは翌月の給与からの控除で対応することとなりますが、何の説明も謝罪もなく相殺処理(控除)を行うことのないようにしましょう。従業員感情を逆なですることになる他、賃金支払いの5原則のうち「全額払い」に反する取り扱いとなります。

給与過払いへの一般的な対応は「翌月給与からの控除」

賃金過払いがあった場合、翌月の給与から過払い分を控除するという対応が一般的です。ただし、賃金支払いの5原則の観点から、適正な控除を行う上では「過払い分の控除についてあらかじめ労使協定を締結している」、もしくは以下の3つの観点から調整的相殺の有効性が確認される必要があります。

① 過払いのあった時期と賃金の清算時期とが合理的に接着した時期になされること
② 事前に労働者に予告しておくこと
③ その額が多額にわたらず(概ね給与の4分の1以下)、労働者の経済生活の安定を脅かすおそれがないこと
(最高裁判例昭和44年12月18日福島教祖事件)

ただし、翌月給与からの控除を拒まれた場合、もしくは過払い額が大きい場合には、労使で話し合いの上、対応を検討することになります。

支給した給与に不足があった場合、すみやかに不足分の支払いを

一方で、支給すべき給与が全額支払われていなかったことが発覚した際には、すみやかに支払い処理を行いましょう。その際の従業員への経緯説明と謝罪は、過払い時同様です。その上で、翌月の給与支払日を待たずに現金で支給するのか、それとも翌月の給与で清算するのかを労使間で十分に協議して決定します。ただし、不足分を翌月に精算して支給することは、厳密に言うと「賃金払いの5原則」の「全額払いの原則」に反しますから、金額の大小にかかわらず、不足分は同月内で支給するのが望ましいと言えます。

賃金支払いの過不足処理を行う場合の実務対応

賃金支払いの過不足を処理する場合の実務対応を確認しましょう。ここでは、誤りのあった月の給与を翌月までに清算する場合の処理を解説します。

翌月給与で清算する場合

正しい給与計算で過不足額を確定させた後、翌月分の給与に過払い分の控除額、もしくは不足分の支給額を計上した上で、通常通りの給与計算を行いましょう。このとき、あらかじめ、給与の過払いもしくは一部未支給のあった従業員に対して、翌月の給与で清算処理があることを通知しておきます。

翌月の給与支給日を待たず、現金で清算する場合

誤りのあった月の給与計算をやり直し、誤って支給した給与支給額と計算し直した給与支給額の差額から過不足額を算出します。このとき、過不足額が生じることによる所得税額、雇用保険料の増減も考慮します。従業員には正しい給与明細を渡し、現金で過払い分の徴収または不足額の支給をしましょう。

クラウド活用時にも、必要情報の登録誤りにご注意を

勤怠登録や給与計算にクラウドをご活用いただいている現場も多いと思いますが、給与計算に必要な情報(勤怠データ、各種手当等)の登録誤りによる給与計算間違いを散見します。給与計算を開始する前に、必要な情報が正しく登録されているかを十分に確認しましょう!

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