改定の行方が注目される地域別最低賃金について、2024年度も大幅な引き上げが見込まれることが分かりました。今年度は昨年度に引き続き、過去最高の引き上げ額目安が公表されたことを受け、従業員の賃金額見直しが必要となる現場が多く生じることが予想されます。今秋以降の最低賃金の動向を把握し、対応を検討しましょう。
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地域別最低賃金改定額の目安、2024年度は全国一律「50円」
各都道府県の地域別最低賃金額は、毎年10月上旬に改定されます。これに先立ち、2024年10月から適用予定の新たな最低賃金額の目安が、2024年7月25日開催の第69回中央最低賃金審議会で答申されました。最低賃金引き上げ額の目安は、都道府県の経済実態に応じて分けられたABCDの4ランクごとに提示されますが、2024年度はすべてのランクで一律50円の引き上げ額が示されました。
参考:厚生労働省「令和6年度地域別最低賃金額改定の目安について プレスリリース」
最低賃金は全国平均で時給1,054円に
2024年10月より適用となる地域別最低賃金額は、このたびの中央最低賃金審議会での答申を受けて地方最低賃金審議会での調査審議・答申を経て、各都道府県労働局長により最終決定されます。仮に、中央最低賃金審議会での答申通りの引き上げ額となった場合、最低賃金の全国平均額は「1,054円」となります。
これまで政府が目標としてきた「全国加重平均で時給1,000円以上の達成」はすでに2023年度に達成されましたが、都道府県ごとで見ると、依然として1,000円を下回るところも少なくありません。賃金額の地域間格差は、地方部から都市部へ労働力流出、地方の中小企業・小規模事業者の事業継続・発展の困難に拍車をかける一因となることから、地方における最低賃金の底上げは引き続き課題となりそうです。
地域別最低賃金引き上げ額の目安を元に、「従業員の賃金見直し」は急務
昨年度に引き続き、2024年度も過去最大の最低賃金引き上げが予定されることを受け、各現場においては今から、対応に向けた準備を進めていくことになります。雇用計画の見直しや生産性向上に向けた取り組みの他、さしあたり「従業員の賃金額確認・見直し」を10月までに確実に行っておく必要があります。
パート・アルバイト、及び試用期間中の時給が最低賃金を下回りませんか?
現状、最低賃金を基準に時給設定しているケースでは、10月以降、最低賃金を下回る従業員が出てくるでしょう。また、「雇入れ当初の試用期間中のみ、通常よりも若干時給を下げている」といった例でも、最低賃金を下回らない時給の設定が求められます。
必要に応じて、事業場全体で賃金引き上げを検討
意外と盲点になりがちなのが、「最低賃金を下回らない従業員への処遇改善」です。事業場内で下限となる賃金を引き上げる場合でも、最低賃金を上回る従業員の賃金に関しての見直しが手薄になっているケースを散見します。「新人の時給は毎年上がっているのに、ベテランは長年据え置き」、これではベテランの従業員のモチベーションは低下するばかりです。よって、最低賃金対応と全従業員の処遇の見直しはセットで行うのが原則と言えましょう。
この他、固定残業代を採用している場合にも見直しが必要です。何時間相当の時間外労働に対していくらの残業代が支払われているのか、時給換算するといくらになるのかを、最低賃金引き上げのタイミングで必ず確認しましょう。
最低賃金以上・以下の確認方法
「最低賃金以上か?以下か?」の確認方法について、日給制や月給制の場合の時給換算方法については厚生労働省が専用サイトにて示していますので、参考にされてみてください。判断に迷われる場合は、社会保険労務士にご相談いただくのが得策です。
参考:厚生労働省「必ずチェック 最低賃金」