2025年1月より、職業紹介事業の許可条件に「お祝い金・転職勧奨の禁止」が追加

企業において深刻化する人手不足、労働者の多様な働き方へのニーズを背景に、雇用する側とされる側を結ぶ職業紹介事業者の役割はより一層大きなものとなっています。職業紹介事業運営に係るルールに関しては、労働力需給調整の観点からその適正性が担保されるよう、ここ数年たびたび改正が行われてきましたが、2025年1月にまた新たなルール変更が予定されています。さっそく概要を確認しましょう。

2025年1月1日施行 「金銭等提供・転職勧奨禁止」が職業紹介事業許可の条件に追加

職業紹介事業者に対する「求職者への金銭等提供禁止」及び「就職後2年間の転職勧奨禁止」については、すでに2021年4月1日改正の職業安定法に基づく指針に盛り込まれていました。

参考:厚生労働省「「就職お祝い金」などの名目で求職者に金銭等を提供して求職の申し込みの勧奨を行うことを禁止しました

しかしながら、指針レベルでの規制では依然として状況改善にはつながらず、実態として雇用仲介事業者の金品提供による転職勧奨が後を絶たないことが問題視されていました。こうした状況を受け、このたび以下の追加措置を講じ、法的拘束力を持たせることで、本規制の実効性が担保されることとなりました。

新たに職業紹介事業の許可条件となる項目を確認

〇 職業安定法指針に規定されている求職者への⾦銭等提供禁止及び就職後2年間の転職勧奨禁止について、
職業紹介事業の許可条件とする。

 

2025年1月1日付の職業紹介事業の新規許可・有効期間更新から順次、各月の許可・更新手続時に、上記の許可条件が付されることとなります。仮に、更新月が到来するまでの間に本許可条件が付されていない事業者が当該禁止事項に違反した場合には、指導を行うとともに、本許可条件が付されます。指導によってもなお違反が継続・反復する場合は、許可取消の対象とされます。

現状、規制の対象外となっている募集情報等提供事業者へも、新たに指針を適用へ

求人サイト等を運営する募集情報等提供事業者は、現状、「金銭等提供・転職勧奨禁止」の規制対象外とされています。この点、2025年4月1日より、募集情報等提供事業(労働者の登録から就職・定着までの全ての過程)における金銭等の提供を原則禁止とする指針の適用を受けることとなります。
なお、募集情報等提供事業の範囲については2022年10月1日より拡大されており、これに伴う運営ルールの変更がありました。詳細は、以下よりご確認いただけます。

関連:厚生労働省「募集情報等提供事業について

法律上禁止される「金銭等の提供」には該当しない事例が明確化されます

このたび「金銭等の提供禁止」が新たに職業紹介事業の許可条件の追加されることを受け、今般の措置の趣旨(金銭等の誘因により、労働市場における適正な需給調整機能の発揮に支障が生じないようにすること)に照らし、問題とならない事例についても明確化される予定です。例えば、以下のケースは法規制の対象となる「金銭等の提供」にあたらないとされます。

①提供するサービスの質の向上を図るため、サービス利⽤者からアンケート等への回答を求める場合であって、回答者全てに対してではなく、抽選による少数者に対して、500円程度の電子ギフト券等を提供するもの
②イベント来場者を確保するため、転職フェアへの来場及びブース訪問者に対して、500円程度の電子ギフト券等を提供するもの(求人サイトへの登録の対価として提供されるものを除く。)

「雇用仲介事業の更なる見える化」のための追加対応も要確認

2025年に予定される職業安定法改正の柱は「金銭等提供・転職勧奨禁止の職業紹介事業許可条件化」ですが、この他にも「雇用仲介事業の更なる見える化」に向けた以下の対応も求められることになります。併せて確認しておきましょう。

職種ごとの紹介手数料実績の見える化

職業紹介事業者の手数料実績の公開が義務化されます。具体的には、職種ごとの常用就職に係る平均手数料率の実績を人材サービス総合サイトに開示するよう、省令に規定される予定です。公開義務化の対象となるのは、各事業者の取扱い上位5職種に限り、年間10件以下の職種は対象外とされます。また、手数料を定額制とする事業者は、率に代えて当該定額の開示が求められます。

違約金等に係るトラブルへの対応

募集情報等提供事業者の利用料金・違約金規約の明示が義務化されます。具体的には、規約の内容を分かりやすく記載した書面や電子メールにより、利用料金・違約金に関わる事項を利用者に対して正確かつ明瞭に提示するよう、指針に規定されます。なお、違約金規約の明示については、職業紹介事業者にも同様に求める方針です。

改正職業安定法は2025年早々からの施行が予定されているため、職業紹介事業及び募集情報等提供事業を営む事業者であれば早めの対応が得策です。改正項目を漏れなく確認し、現状の運営体制を見直しましょう。

参考:厚生労働省「金銭等提供・転職勧奨禁止の職業紹介事業許可条件化について

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