【同一労働同一賃金】忘れていませんか?労使協定方式を選択した派遣元における「労使協定の更新」

数ある労使協定の中には、定期に更新が必要なものがあります。36協定のように毎年の更新を基本とする労使協定であれば、対応漏れは起こりづらいかもしれません。一方で、労使協定方式を選択した派遣元で締結する労使協定の有効期限については、ひな型に「2年以内とすることが望ましい」とあることから、「2年」に設定する現場も多く、この場合「うっかり更新していなかった」という例も少なくありません。2022年4月1日を始期とする労使協定で、有効期限を2年とした派遣元では、2024年3月末日までに忘れずに更新しましょう。

派遣元の9割が採用する「労使協定方式」とは?

派遣労働者の同一労働同一賃金対応として、2020年4月以降、派遣元事業者に対して「派遣先均等・均衡方式」又は「労使協定方式」のいずれかによる公正な待遇確保が義務付けられています。現状、派遣元のおよそ9割が「労使協定方式」を選択しているとのことです。「労使協定方式」では、派遣労働者の賃金について、地域・職種別に厚生労働省が定める一般賃金と同等以上とする旨の労使協定を派遣元で締結し、これを基準に派遣労働者の待遇を決定することとされています。労使協定では、基本給、賞与、手当、退職金等の賃金、そして賃金以外の待遇(福利厚生、教育訓練)について定めます。

労働者派遣法第 30 条の4第1項の規定に基づく労使協定 更新時の見直しポイント

冒頭でも触れた通り、「労使協定方式」を選択した派遣元においては、「一度締結したらそのまま」というわけにはまいりません。労使協定に有効期限を定め、定期的に更新を行う必要があります。新たな労使協定作成に際して、派遣元で見直すべきポイントは以下の通りです。

✓ 「同種の業務に従事する一般労働者の賃金」と各種「指数」の変更に伴う賃金表の見直し
✓ 派遣先から提供されている「業務に必要な能力を付与するための教育訓練」「食堂、休憩室、更衣室の利用」に関わる情報

毎年変動する「同種の業務に従事する一般労働者の賃金」と各種「指数」は必ず見直しを

「同種の業務に従事する一般労働者の賃金」及び各種「指数」は、派遣労働者の処遇が適正かどうかを検討する上での指標となる数字です。これらの数字は毎年変動するため、派遣元においては必ず確認してこれと同等以上の水準が保たれていることを確認する必要があります。2024年度労使協定方式に適用される一般労働者の賃金基準値(勤続0年)については、職業安定業務統計の職業計で前年度+22円の1218円、賃金構造基本統計調査の産業計で前年度+11円の1276円と増加しており、職種ごとで増減が生じています。また、通勤手当相当額が前年度+1円の72円に増えること、各派遣労働者の賃金水準検討に用いる能力・経験調整指数、派遣先に応じた地域指数に変動があること等にも留意しながら、前回締結時の数字を見直す必要があります。

参考:厚生労働省「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準(令和6年度適用)

労使協定有効期間内の数字変動にも要対応

なお、労使協定の有効期間中に一般賃金の額が変更された場合には、有効期間中であっても、労使協定に定める派遣労働者の賃金額が一般賃金の額と同等以上の額であるか否かの確認が必要です。万が一、一般賃金の額を下回っていた場合には早急に是正が必要となります。派遣労働者の賃金額が一般賃金の額と同等以上の額であることを確認できた場合には、「同等以上の額であることを確認した旨の書面」を労使協定に添付しましょう。労使協定の有効期間を「2年」とすると、つい毎年の確認を怠りがちになりますのでご注意ください。

参考:厚生労働省「協定対象派遣労働者の賃金の額に関する確認書のイメージ

派遣先に「教育訓練」「福利厚生」に関わる最新情報を確認

労使協定方式を採用した派遣元に対して、派遣先は以下について情報提供を行い、協定対象派遣労働者にも実施、もしくは利用を許可しなければなりません。

  • 業務遂行に必要な「教育訓練」
  • 福利厚生のうち「給食施設」「休憩室」「更衣室」

これらの情報は労働者派遣契約締結時に提供されますが、変更されていることもありますので、労使協定更新のタイミング等、定期に派遣先に最新の内容を確認しておかれると安心です。

関連記事:『【同一労働同一賃金】派遣労働者の福利厚生と教育訓練、労使協定方式でも「派遣先均等・均衡」が必要な項目とは?

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