2020年4月の施行から今年で4年目を迎える同一労働同一賃金、御社の取り組み状況はいかがでしょうか?非正規労働者に対する処遇改善がぐんと進んだ企業がある一方、「まだまだ手つかず」とのお声を聞くこともしばしば・・・といった実情に鑑みれば、取り組みの状況には現場ごとにかなりの差があるのだなと感じられます。こうした実態を踏まえ、2024年度は、企業における同一労働同一賃金への対応強化が求められる方針であることが明らかになっています。
目次
行政主導により、「同一労働同一賃金の遵守の徹底」が図られます
厚生労働省は、2024年4月1日付で「令和6年度地方労働行政運営方針」を策定しました。本方針は、各都道府県労働局において重点課題及び対策等を検討し、行政運営方針の取りまとめを行う際の参考となる資料です。「令和6年度地方労働行政運営方針」には、「最低賃金・賃金の引上げに向けた支援、非正規雇用労働者の処遇改善等」や「リ・スキリング、労働移動の円滑化等の推進」、「多様な人材の活躍と魅力ある職場づくり」等を柱として具体的な方針が盛り込まれていますが、これらのうち「非正規雇用労働者の処遇改善等」のひとつに「同一労働同一賃金の遵守の徹底」が明記されています。
監督署による定期監督等における確認、及び雇均部又は安定部等による報告徴収又は指導監督の実施
同一労働同一賃金の遵守の徹底に向けた取り組みの方針として、以下が明記されています。
- 監督署による定期監督等において、短時間労働者、有期雇用労働者又は派遣労働者の待遇等の状況について企業から情報提供を受ける
- 企業からの情報提供の内容を踏まえ、雇均部(室)又は安定部等による効率的な報告徴収又は指導監督につなげる
「報告徴収」とは、雇用管理の実態把握を目的として、労働局雇用環境・均等部が企業に対し、パート有期雇用労働法18条に基づき報告を求めることです。方法としては、事業所内の短時間・有期雇用労働者と比較対象となる正社員について、業務内容や責任の程度、基本給の仕組み、諸手当の取扱いといった所定の項目について書面で回答し、提出することにより行われます。報告徴収の結果、正社員との待遇差があり、その理由の説明が不十分な企業に対しては、監督署による点検要請の集中的な実施、支援策の周知を行うことにより、企業の自主的な取組を促すことにより、同一労働同一賃金の遵守徹底が図られます。
非正規雇用労働者の処遇改善・正社員化を行う企業への支援
企業に対する指導監督強化と併せて、非正規雇用労働者の処遇改善や正社員化(多様な正社員を含む)への取り組みが支援されます。キャリアアップ助成金では、「年収の壁・支援強化パッケージ」の一環として新設された「社会保険適用時処遇改善コース」、及び助成額が見直されより使い勝手が良くなった「正社員化コース」について、各コースの周知、活用勧奨等を実施されます。
この他、「働き方改革推進支援センター」では、専門家によるワンストップ相談窓口、コンサルティング、セミナーの実施等、きめ細やかな支援が行われます。さらに、「多様な働き方の実現応援サイト」に好事例を掲載することで、非正規雇用労働者の処遇改善に係る事業主の取組機運の醸成が図られます。
同一労働同一賃金を正しく理解して、適切に対応を
現状、同一労働同一賃金に対応できていない現場においては、早期に取り組みを進めてまいりましょう。「何から始めていいか分からない」という場合には、厚生労働省が公開する対応マニュアルを参考に、手順に沿って行うことができます。
企業における正規・非正規間の処遇格差については、しばしば「差があって当然」との暗黙の了解の元、同一労働同一賃金の対応に沿った検討が行われていないケースを散見します。もちろん、実態としてその差が合理的なものと考えられるならば問題ないのですが、同一労働同一賃金対応の観点で言えば、各処遇について「なぜ差があって当然なのか」を客観的に説明できるようにしておく必要があります。
「同一労働同一賃金」というと曖昧で分かりにくいですが、各従業員の処遇について、職場の「当たり前」「暗黙の了解」を今一度見直して明確にする作業、万が一不合理な格差があれば改善する作業と言いかえれば、ぐんと分かりやすく、対応しやすくなるはずです。必要に応じて社会保険労務士等の専門家にご相談いただきながら、一つひとつ、見直し・明確化・改善を進めてまいりましょう。
参考:
厚生労働省「「令和6年度地方労働行政運営方針」の策定について」
厚生労働省「同一労働同一賃金特集ページ」
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