【働き方改革】賃金不払残業是正の実態 2019年度は大幅改善

厚生労働省から毎年公表されている「監督指導による賃金不払残業の是正結果」2019年度版より、企業における不払い残業代の状況が大幅に改善されていることが分かりました。本調査は、労働基準監督署が監督指導を行った結果、2019年度に、不払だった割増賃金が支払われたもののうち支払額が1企業で合計100万円以上となった事案を取りまとめたものです。

是正企業数、対象労働者数、支払われた割増賃金合計額において前年度比から大幅減

2019年度(2019年4月~2020年3月)の監督指導状況は下記の通りです。

■ 是正企業数:1,611企業(前年度比157企業の減)
うち、1,000万円以上の割増賃金を支払ったのは、161企業(前年度比67企業の減)
■ 対象労働者数:7万8,717人(同3万9,963人の減)
■ 支払われた割増賃金合計額:98億4,068万円(同26億815万円の減)
■ 支払われた割増賃金の平均額:1企業当たり611万円、労働者1人当たり13万円
(前年度は1企業当たり711万円、労働者1人当たり11万円)

前年度比でみると、「労働者1人当たりに支払われた割増賃金の平均額」を除くいずれの項目でも減少となっています。昨今の働き方改革関連法令の施行を追い風に、現場においては法令遵守への意識がより一層高まっているようです。

過去10年の遡及支払状況からも改善状況は一目瞭然


上図は、過去10年間の「100万円以上の割増賃金の遡及支払状況」を棒グラフ、折れ線グラフで示したものです。対象企業、対象労働者数、是正支払額の各項目は2017年度に急激に数を増していますが、2018年度、2019年度と連続で減少傾向にあり、働き方改革を契機とした企業における意識の変化を見てとることができます。

出典:厚生労働省「監督指導による賃金不払残業の是正結果(平成31年度・令和元年度)

今一度確認!勤怠管理の運用状況

労基署からの監督指導を受け、企業側の対応としてカギとなるのは「勤怠管理の徹底」です。具体的には、客観的な労働時間把握を正しく行うための取り組みとして勤怠管理システムを正しく運用することが挙げられます。勤怠管理システムは、単に導入し、打刻を行うのみでは適切とは言えません。

例えば、現場において以下のような運用はしていないでしょうか?

① タイムカード打刻前後の労働

所定終業時刻にタイムカードを打刻する前、もしくはさせた後に、労働をさせていないでしょうか?
タイムカードは作業終了時に打刻させることとし、残業する必要がある場合にはあらかじめ申請書を提出させ、申請を基に労働時間を把握しなければなりません

② 労働時間の切り捨て

労働時間の算定の際に、1日ごとに30分単位で切り捨て計算を行う等、労働時間の切り捨てを行っていないでしょうか?
労働時間の把握は1分単位で行う必要があり、給与計算もこうした労働時間に合わせて行わなければなりません

③ 固定残業代制度の不適切な運用

固定残業代を支払っている現場では、手当相当分の残業を超える時間外労働に対して割増賃金を支払っているでしょうか?
固定残業代制度を設けていても労働時間の把握は不可欠であり、手当相当分の残業を超える労働については割増賃金を支払わなければなりません。

不払残業代を生じさせないためには、勤怠管理システムの活用と併せて

✓ 勤怠データと実際の労働時間を乖離させないこと
✓ 労働時間を切り捨てないこと
✓ 固定残業代等の制度を正しく運用すること

が不可欠です。勤怠管理システムを導入していることのみで安心せず、必ず実態を踏まえた労働時間把握・管理を心がけましょう。

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