1分単位で労働時間を計算!?~アルバイトやパート社員に要注意

2024年1月の新聞紙上をにぎわした「スシロー」の賃金未払いの記事。労働基準監督署の是正勧告に労働時間の計算は1分単位で運用することになりました。「1分単位で計算!」事業主にとっては、賃金の支払いが大変なことになるようです。そこで、労働時間に対する賃金支払いについて説明をします。

スシローの端数切捨てに是正勧告

お店で働くアルバイトの大学生が、過去に5分未満の端数を切り捨てて労働時間を計算されたため、事業主に未払い賃金があると訴えたのですが、解決せずに労働基準監督署に申告しました。今まで事業主は、5分未満の端数は切り捨てて、労働時間を計算してアルバイト代を支払っていたのです。結果、労働基準監督署から是正勧告をうけました

労働基準監督署の是正勧告とは、疑わしい相談があった場合実際に立ち入り検査をし、労働基準法違反が見つかったら是正勧告書を交付します。事業主は、是正勧告書に記載された内容に沿った対応を行い、是正報告書を提出します。是正勧告に従わなかったり、報告を怠った場合には、最悪司法処分が科されることもあるので注意が必要です。

労働時間の計算について

労働時間とは、労働基準法によると使用者の指揮監督下で作業している時間だけでなく、使用者の指揮監督下で作業準備していたり、待期している時間も含まれます。以前、飲食店で働いていたパート社員が、お客さんが少なくてただ立っている時間について賃金が減らされたため労基署に訴えたケースがあります。事業主としては、「仕事をしていない時間=労働時間ではない=賃金なし」と考えるのかもしれません。お客様がいなくてただ待っている時間は、待機時間となって賃金が発生します。

また、よくあるケースとして社員がロッカールームで着替えをしながら雑談しているため、帰る時間が遅いと不満を訴える事業主もいます。確かに制服を着替える時間は労働時間に含まれますが、雑談時間や不必要な化粧時間などは含まれません。このため、終業時間の5分前に仕事を終えたにもかかわらず、終業時間を4分も超えてしまった場合、この4分はどうなるのでしょうか?今までは、5分未満は切り捨てていたのが、切り捨ては認められなくなったのです。ただし、着替えの時間のため早めに仕事を終わらせているのに時間がかかりすぎることを証明すれば支払う必要はありません。

1分単位での労働時間の計算のポイント

これからは、アルバイトやパート社員の賃金は、1分単位で労働時間を計算して支払わないと労働基準監督署に訴えられ、最大3年に遡って支払わなければなりません。そこで、労働時間の計算のポイントについて以下に説明をします。

1.タイムカードは就業場所に置く
タイムカードを会社の入口に置いているところは多いかと思います。そうすると、仕事終わって着替えが済んで雑談をしていると入口に着く時間が遅くなります。着替えがなくても、化粧を直したり髪を整えたりしてからゆっくりと帰る人もいます。いくら「仕事が終わったらさっさと帰ること」と指導しても無理でしょう。

そこで、職場にタイムカードを置くことで労働時間ではない時間を防ぐことができます。ただし、制服がある職場は着替えの時間が必要ですので、終業時間より少し早めに終わることも必要でしょう。なお、始業時間に関しては、あまり厳密に1分単位で計算する必要はありません。早めに来たから仕事を早めにするわけではないので、気にしなくてもよいでしょう。

2.労働者に労働時間について周知する
労働者にとっては、「会社にいる時間=労働時間」と思っている方が多いのが現状です。会社にいても事業主の監督下でなければ労働時間とは見なされないことを知らしめる必要があります。例えば、休憩時間ではないのに休憩室で休んでいたとか、3時にダラダラとおやつを食べているとか、ロッカールームで雑談をしている場合とか、具体的に示します。そして、タイムカードを押すタイミングについても説明をすることです。多くのアルバイトやパートを雇用している事業主にとって1分単位で賃金を支払うことはとても大変です。労働時間については、事業主も気を付けますが労働者自身も気を付ける必要があるのです。

まとめ

 1分単位で労働時間を計算することは、事業主にとって人件費が増えることになります。今まで5分未満や10分未満を切り捨てていた事業主は、今日から計算をし直すべきでしょう。労働基準監督署に訴えられる前に早めに就業規則や賃金規程を見直し、労働時間を再計算しましょう。

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