2024年度から始まる!自動車運転業務の「時間外労働の上限規制」と改正「改善基準告示」の適用

いよいよ2024年度より、工作物の建設の事業、自動車運転の業務、医業に従事する医師に対する時間外労働の上限規制の適用が開始されます。ただし、労働時間管理の難しさゆえ、これまで適用猶予とされてきたこれらの事業等の中には、それぞれの特性に鑑み、原則的な上限規制とは異なるルールが適用されるものもあります。
今号では、自動車運転の業務に適用される時間外労働の上限規制と、これに関連して改正された改善基準告示の概要を確認しましょう。

自動車運転の業務に適用されるのは、「年960時間」の時間外労働上限

自動車運転の業務、具体的にはタクシー・ハイヤー運転者、トラック運転者、バス運転者に関しては、特別条項付36協定を締結する場合の時間外労働の上限が「年960時間」以内とされます。一般的に広く適用される時間外労働の上限規制では「年720時間」以内とされていることから、若干緩やかな上限設定となっていることが分かります。

「単月」「2~6ヶ月平均」「年間の上限回数」は適用せず

また、原則的な時間外労働の上限規制で適用される「時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満」「時間外労働と休日労働の合計が2~6ヶ月の平均が全て1ヶ月当たり80時間以内」「時間外労働が1ヶ月45時間を超えることができるのは年間6ヶ月以内」の定めに関しては適用されず、あくまで年間の時間外労働の上限のみが適用されることになります。
ただし、実務上の労働時間管理については、改善基準告示の基準に従って適正に管理しなければなりません。

時間外労働の上限規制同様、2024年度より適用となる改正「改善基準告示」

自動車運転の業務の労働時間管理を考える上で重視すべき拘束時間、休息期間、運転時間等の基準については、労働基準法の定めによらず、「改善基準告示(自動車運転者の労働時間等の改善のための基準)」に定められています。2024年度からの時間外労働の上限規制適用に伴い、改善基準告示も改正され、同じく2024年度より適用される予定です。ここでは、主な改正項目について確認しましょう。

タクシー運転者の拘束時間の上限が月288時間に

タクシー運転手の拘束時間について、日勤(始業及び終業の日が同一の日に属する業務)の場合の上限が、月288時間以内とされました。
また、休息期間については、日勤と隔勤でそれぞれ以下の基準が示されました。
・日勤者:勤務終了後、継続11時間以上の休息期間を与えるよう努めることを基本とし、9時間を下回らないものとすること
・隔日勤者:勤務終了後、継続24時間以上の休息期間を与えるよう努めることを基本とし、継続22時間を下回らないものとすること

出典:自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト「ハイヤー・タクシー運転者の改善基準告示

なお、ハイヤー運転者については前述の改正は適用されません。時間外労働の上限規制で示された「月950時間」以内の枠の遵守を前提として、時間外・休日労働の削減に努めること、必要な睡眠時間の確保のために勤務終了後の一定の休息期間付与を行うことが求められます。

バス運転者の拘束時間上限が原則「年3,300時間」「月281時間」に

バス運転手の拘束時間については、年3,300時間かつ、月281時間を超えないことが原則となります。ただし、貸切バス等運転者は、労使協定により年間6ヶ月を上限として、年3,400時間を超えない範囲内において、月294時間まで拘束時間を延長することができます。ただしこの場合、月の拘束時間が281時間を超える月が4ヶ月を超えて連続しないようにしなければなりません。
「4週平均1週間」の拘束時間の考え方を採用する場合にも前述の水準を保っていなければならず、原則として52週の総拘束時間が3,300時間かつ、4週を平均して1週当たりの拘束時間が65時間を超えないものとします。例外的に、貸切バス等運転者は、労使協定により52週のうち24週までは、52週の総拘束時間が3,400時間を超えない範囲内において、4週を平均し1週当たり68時間まで延長することができます。ただしこの場合、4週を平均し、1週当たりの拘束時間が65時間を超える週が16週を超えて連続しないものとする必要があります。
1日の休息期間については、勤務終了後、継続11時間以上の休息期間を基本とし、継続9時間を下回らないようにします。


出典:自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト「バス運転者の改善基準告示

トラック運転者の拘束時間上限が原則「年3,300時間」「月284時間」に

トラック運転者の拘束時間については、年3,300時間かつ、月284時間を超えないことを原則とします。ただし、労使協定により年6ヶ月までは、年3,400時間を超えない範囲内において、月310時間まで延長することができます。この場合、1ヶ月の拘束時間が284時間を超える月が3ヶ月を超えて連続しないものとするとともに、1ヶ月の時間外・休日労働時間数が100時間を超えないように努めることとされます。
1日の休息期間については、勤務終了後、継続11時間以上の休息期間を与えるよう努めることを基本とし、継続9時間を下回らないものとする必要があります。ただし、1週における運行が全て長距離貨物運送(450km以上)、かつ、一の運行(勤務先を出発し、帰着するまで)の休息期間が住所地以外の場所である場合、運航を早く切り上げ、後にまとまった休息を確保できるようにすることも可能です。この場合、1週につき2回に限り、継続8時間以上とすることができ、一の運行終了後、継続12時間以上の休息期間を与えなければなりません(休息期間のいずれかが9時間を下回る場合、一の運行終了後、継続12時間以上の休息期間を与えるものとします)。


出典:自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト「トラック運転者の改善基準告示

以上、2024年4月より自動車運転者に適用される改善基準告示に関しては、なかなか複雑な内容とはなりますが、以下URLのパンフレットにて分かりやすく解説されています。ぜひご一読いただき、理解を深めていただければと思います。

参考:厚生労働省「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)

時間外労働の上限規制対応として、ガイドライン対応の労働時間管理システムの導入を!

2024年度より始まる、自動車運転業務に係る時間外労働の上限規制。現場においては対応の一環として、すでに2019年4月より義務化されている「客観的な記録による労働時間把握」の徹底に努めましょう。複雑な勤務体系となる業種の勤怠管理なら、HRMOS勤怠byIEYASUにお任せください!

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