2022年度監督指導で「違法な時間外労働」が大幅増!今一度見直したい、「時間外労働の上限規制」

長時間労働が疑われる事業場に対して労働基準監督署が実施した、2022年度監督指導の結果が取りまとめられました。前年度の監督指導結果との比較では、違法項目のうち「違法な時間外労働があったもの」の割合が大幅に増えていることが明らかとなったことを受け、現場においては今一度、「時間外労働の上限規制」に関わる正しい理解と適切な運用の徹底が求められます。

2022年度監督指導で問題視される「労働時間」関連違反

労働基準監督署による監督指導は、毎年、各種情報から時間外・休日労働時間数が1ヶ月当たり80時間を超えていると考えられる事業場や、長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場を対象として実施されています

対象事業場の8割超で労働基準関係法令違反あり!

2022年度に監督指導の対象となった33,218事業場のうち、実に81.2%で何かしらの労働基準関係法令違反が確認されました。各違反項目の割合としては、「労働時間」で42.6%、「賃金不払残業」で9.0%、「健康障害防止措置」で26.6%となっています。

「労働時間」に関わる違反の実態

2022年度に最も割合の高かった「労働時間」に関しては、例年他の項目と比較すると割合の高い項目であるものの、前年度の34.3%から大幅に増加していることが問題視されています。
是正対象となった時間外・休日労働の状況は、以下の通りです(左は2021年度、右は2022年度の結果)。「違法な時間外労働」の割合増の他、「月150時間超」、「月200時間超」の項目の微増にも注視したいところです。

「労働時間」関連の主な指導内容

「労働時間」関連の違反について、労働基準監督署による主な指導内容は以下の通りです。

  • 36協定で定めた上限時間を超えて時間外労働を行わせたことについて是正勧告(労働基準法第32条違反)
  • 労働基準法に定められた上限時間を超えて時間外・休日労働を行わせたことについて是正勧告(労働基準法第36条第6項違反)
  •  時間外・休日労働時間を1か月当たり80時間以内とするための具体的方策を検討・実施するよう指導

参考:厚生労働省「長時間労働が疑われる事業場に対する令和4年度の監督指導結果を公表します

労働時間管理の要となる「時間外労働の上限規制」や「36協定」への対応を見直しましょう

「労働時間」関連での法令遵守を考える上では、時間外労働の上限規制を正しく理解すること、さらに36協定を適切な形で締結することが重要となります。時間外労働の上限規制や36協定については、すでに打刻ファーストでたびたび取り上げているテーマですが、改めて内容を確認し、正しく対応できるようにしましょう。

時間外労働の上限規制の基本ルール

✓ 残業時間の上限
原則として「月45時間・年360時間」
臨時的な特別の事情がなければこれを超えることはできません

✓ 臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、以下を超えることはできません

  • 年720時間以内
  • 複数月平均80時間以内(休日労働を含む)
    ※「2ヶ月平均」「3ヶ月平均」「4ヶ月平均」「5ヶ月平均」「6ヶ月平均」いずれの平均も80時間以内(月80時間は、1日当たり4時間程度の残業に相当)
  • 単月100時間未満(休日労働を含む)
  • 原則となる「月45時間」を超えることができるのは「年間6ヶ月」まで

関連:厚生労働省「時間外労働の上限規制

36協定における留意点

✓ 協定届は、「一般条項(月45時間、年360時間まで)」と「特別条項(上限規制を適用した限度時間まで)」とで別の様式に記入
✓ 「1日」「1ヶ月」「1年」の各期間ごとに延長時間数、割増賃金率を記入
✓ 「時間外労働と休日労働を合算した時間数」の規制に対するチェックボックスへのチェック
✓ 特別条項の必須協定項目に「健康福祉確保措置」に関わる記入

併せて、36協定を有効なものとするためには、「従業員代表者の適正な選出」「特別条項の発動」についても留意する必要があります。

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