【学校の働き方改革】文部科学省概算要求から読み解く、2024年度「教員の働き方改革」加速化プラン

遅々として進まぬ教員の働き方改革ですが、2024年度以降、一歩前進する見込みです。文部科学省が発表した「令和6年度概算要求のポイント」によると、2024年歳出予算「一般会計」の要求額が前年度比11.9%の5兆9,216億円となっています。「質の高い公教育の再生」の実現に向け、教師等の働き方改革の更なる加速化、処遇改善、指導・運営体制の充実等が図られます。

「文教関係予算のポイント」に盛り込まれた、教員の働き方改革における2024年度重点項目

「令和6年度概算要求のポイント」より、さっそく教員の働き方改革に向けた取り組みを確認しましょう。

小学校における高学年の教科担任制の強化や35人学級の計画的な整備、教師の処遇改善

  • 教科指導の専門性を持った教師による小学校における高学年の教科担任制の強化
  • 小学校における35人学級の計画的な整備
  • 学校における働き方改革、複雑化・困難化する教育課題へ対応するため、教職員定数5,910人の改善要求
  • 定年引上げに伴う特例定員を活用した定数改善の前倒し
  • 教師の給与体系の改善に向けた検討

学校における働き方改革の推進のための支援スタッフ等の充実

  • ・学習プリント等の準備や来客・電話対応、行事や式典等の準備補助等をサポートする教員業務支援員
    (スクール・サポート・スタッフ)の配置を支援
  • 学校教育活動を支援する学習指導員等の配置
  • 副校⻑・教頭の厳しい勤務実態を踏まえ、学校マネジメント等に係る業務を専門的に支援する人材の配置
  • 市区町村における学校・保護者等間の問題解決支援体制の構築(市区町村教育委員会等に、学校管理職OB等による学校問題解決支援コーディネーター(仮称)を配置)
  • 都道府県における広域的な学校への支援体制の構築(都道府県教育委員会等に、学校管理職OB等による
    学校問題解決支援コーディネーター(仮称)を配置)

教師人材の確保強化

  • 教育委員会・外郭団体により以下の活動・業務を実施
    →民間企業や大学、PTA等と連携・協働し、教職の魅力について広報・啓発
    →広報活動等を通じ、元教師や企業等の退職者をはじめ、広く臨時講師等のなり手を募集
    (アスリートやアーティスト等の多様な専門性を持つ人材を含む)
    →民間企業等から期限付きでの学校現場派遣の可能性の把握・働きかけ
    →学校現場への入職にあたり基礎的知識を身に付けるための研修コーディネート
    →臨時講師・⾮常勤スタッフ等募集の学校側ニーズを集約および学校現場とのマッチング ・地域教員希望枠を活用した教員養成大学・学部の機能強化
    →教員養成学部・大学と教育委員会が連携・協働した教員養成の取組強化に係る経費の⼀定期間支援
    →大学入学者選抜における【地域教員希望枠】の導入
    →地域課題に対応したコース・カリキュラム構築
    →高校生に対する特別プログラム構築・拡充

出典:文部科学省「令和6年度概算要求のポイント

教員の働き方改革、現状は?

学校現場の人手不足に伴う教員の多忙化と長時間労働の解消に向け、残業時間の上限を「月45時間、年360時間」とするガイドラインが2019年に示され、さらに2020年の改正給特法施行によりこのガイドラインが指針へと格上げされています。しかしながら、文部科学省が実施した令和4年度教員勤務実態調査によると、「平日・土日ともに、全ての職種において在校等時間が減少したものの、依然として長時間勤務の教師が多い状況」が明らかになりました

中学校で77.2%、小学校で64.4%の教諭が、月45時間の残業時間上限越えの可能性

グラフは、同調査において把握された、小中学校に勤務する教諭の「1週間の総在校等時間の分布」です。小中学校の教諭の1週間当たりの正規勤務時間「38時間45分」に、週残業時間の上限相当となる「11時間15分(月45時間÷4週間)」を加算すると、1週間あたりの在校時間は50時間までである必要があります。しかしながら、調査結果では、小中学校共に大半の教諭が「週50時間以上」のラインを超える働き方をしていることが分かります。

過労死ライン越えは減少傾向

さらに、グラフ中の黒線以下の分布は、過労死ラインとされる月80時間超の時間外労働が疑われる教員の層であり、こちらも一定数確認できます。もっとも、過労死ライン超が疑われる教員の割合は、2016年の前回調査と比較すると格段に減少しており、2019年以降の働き方改革の効果が伺えます。2024年以降、教員の働き方改革をさらに加速させ、次回調査時にはすさらに多くの教員がグラフ中の赤線の上に含まれるようになることが目指されます。

注視すべき「残業の持ち帰り時間増」

もっとも、指針に伴う残業時間の上限規制により、現場では過度な「帰宅圧力」やこれに伴う「持ち帰り残業」の発生が問題視されています。同調査結果でも、平日の「持ち帰り時間」の増加が明らかになっています。

出典:文部科学省「教員勤務実態調査(令和4年度)【速報値】について

学校現場の働き方改革の第一歩は「勤怠管理」の徹底から

長時間労働が問題視される教育現場ですが、「生徒のために」「保護者のために」と日々尽力される先生方であれば、「時間だから」と区切って良いものかどうか、判断に迷われるケースも少なくないと思います。とはいえ、働き過ぎは心身を蝕みますし、公私共に充実した人生を送ることは、どんな人にとっても例外なく守られるべき当然の権利ではないでしょうか。教員の長時間労働解消は、働く人それぞれが自身の労働時間を客観的に把握し、長時間化解消に向けた意識を持つことから始まります。日々教育現場で奮闘される先生方の健康と幸せを守るための一歩として、HRMOS勤怠byIEYASUのご活用をお勧めします。

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