こども・子育て政策強化の試案が公表!企業がおさえておくべきポイントは?

異次元の少子化対策の推進に向け、2023年度よりついに動き出した「こども家庭庁」。政府は創設の前日に「こども・子育て政策の強化について(試案)~次元の異なる少子化対策の実現に向けて~」を公表し、取り組みの方向性を示しています。今後、企業における対応は多岐に渡ることが見込まれるため、今のうちから概要をおさえておきましょう。

異次元の少子化対策において、企業が実務上おさえるべき「共働き・共育ての推進」

日本における少子化対策は、つい最近始まったわけではありません。戦後最低の出生率を記録した1990年の「1.57ショック」を契機に、すでに30年以上もあらゆる施策が講じられています。これまでの施策において、政策領域の拡充や安定財源の確保は図られた結果、待機児童の大幅減少等の一定の成果が見られました。ところが一方では、依然として少子化傾向に歯止めをかけるまでに至っていないのが現状です。
こうした中、2022年度の出生数が過去最低を記録する等、少子化問題がもはや待ったなしの喫緊の課題となっていることを受け、政府は次元の異なる少子化対策へと舵を切ることとなりました

異次元の少子化対策 3つの基本理念

若い世代が希望通り結婚し、希望する誰もがこどもを持ち、ストレスを感じることなく子育てができる社会、さらには、こどもたちが、いかなる環境、家庭状況にあっても分け隔てなく大切にされ、育まれ、笑顔で暮らせる社会を実現すべく、こども・子育て政策の基本理念として以下の3点が示されました。

✓ 若い世代の所得を増やす
賃上げ、雇用のセーフティネット構築等
✓ 社会全体の構造・意識を変える
共働き・共育ての推進、こども・子育てにやさしい社会づくりのための意識改革
✓ 全ての子育て世帯を切れ目なく支援する
ライフステージを通じた子育てに係る経済的支援の強化、全てのこども・子育て世帯を対象とするサービスの拡充

「共働き・共育ての推進」として示された5つの柱

前述の基本理念のうち、企業実務に影響が生じるポイントとして「共働き・共育ての推進」が挙げられます。出産・育児期における休暇制度の活用促進と給付の拡充、さらにより柔軟な働き方の実現に向けて、企業に求められる対応は今後幅広く想定されます

◎ 「男性育休は当たり前」になる社会へ
男性の育休取得率について、現行の政府目標(2025年までに30%)を大幅に引き上げる。具体的には、2025年までに公務員85%、民間50%の取得率を目標とする。
◎ 男女で育休取得した場合、一定期間、育休給付を手取り100%に
両親ともに育児休業を取得することを促進するため、男性が一定期間以上の「産後パパ育休」を取得した場合、その期間の給付率を現行の67%(手取りで8割相当)から8割程度(手取りで10割相当)に引き上げるとともに、女性の産休後の育休取得についても28日間(産後パパ育休期間と同じ期間)を限度に給付率を引き上げる。
◎ 周囲の社員への応援手当など男性育休を支える体制整備を行う中小企業への支援の大幅強化
男女ともに職場への気兼ねなく育休を取得できるようにするため、現行の育児休業期間中の社会保険料の免除措置及び育休給付の非課税措置に加えて、周囲の社員への応援手当など育休を支える体制整備を行う中小企業に対する助成措置を大幅に強化する。
◎ こどもが2歳未満の期間に、時短勤務を選択した場合の給付の創設
・男女ともに、短時間勤務をしても手取りが変わることなく育児・家事を分担できるよう、こどもが2歳未満の期間に、時短勤務を選択した場合の給付を創設する。その際、現状の根強い固定的性別役割分担意識の下で、女性のみが時短勤務を選択することで男女間のキャリア形成に差が生じることにならないよう、男女で育児・家事を分担するとの観点も踏まえて、給付水準等の具体的な検討を進める。
・柔軟な働き方についても、体制整備を行う中小企業に対する助成措置の大幅に強化する。
・子育て期における仕事と育児の両立支援を進め、多様な働き方を効果的に支える雇用のセーフティネットを構築する観点から、現在、雇用保険が適用されていない週所定労働時間20時間未満の労働者についても失業手当や育児休業給付等を受給できるよう、雇用保険の適用拡大に向けた検討を進める。
◎ 自営業、フリーランスの方々の育児期間の保険料免除制度の創設
自営業・フリーランス等の国民年金の第1号被保険者について、被用者保険の取扱いも踏まえながら、現行の産前・産後期間の保険料免除制度に加えて、育児期間に係る保険料免除措置の創設に向けた検討を進める。

異次元の少子化対策への具体的な取り組みに向け、職場における意識改革を

2023年度よりついに始まる、異次元の少子化対策。今号でご紹介した基本理念、取り組みの柱を元に、今後、詳細な制度内容や実施時期が示される予定です。企業においては、その発表を受けて対応が求められることになるでしょう。
子育て支援の諸施策に取り組む企業において、まず着手すべきは、労使双方の「意識改革」です。出産・育児支援制度がどんなに整備されても、それを積極的に活用できるかどうかは、職場の雰囲気に大いに影響されます。確かに、出産・育児期にある従業員もしくは上司・部下、同僚を支援することは、会社や周囲にとって難しい側面もあるでしょう。この点、異次元の少子化対策ではただ現場に取り組みを求めるだけではなく、「企業支援」が大幅に拡充される予定となっています。企業においてはこれらの活用を念頭におき、働き方改革と併せて出産・子育て改革にも前向きな職場風土の醸造に努めていただけると良いかと思います。

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