2025年改正施行の高年齢者雇用安定法と雇用保険法~高齢者の就業環境の見直しを

昨今の人手不足から高齢者の雇用に関して、制度改正が進められています。2025年施行の高齢者に関する法改正は、高年齢者雇用安定法と雇用保険法があります。この法改正の内容、そしてそれに対する対応の準備について解説します。

現在の高齢者雇用安定法について

高年齢者雇用安定法は、2013年改正され、9条において65歳までの高年齢者雇用確保措置として以下のように定められています。

「定年年齢を65歳未満に定めている事業主は、以下のいずれかの措置を講じなければならない」
①65歳まで定年年齢を引き上げ
②65歳までの継続雇用制度を導入
③定年制の廃止

この規定により定年を60歳に定めて一旦退職させ、65歳までの継続雇用制度を定めている企業は多いものです。最近では、65歳ではなく希望して健康であれば70歳までという企業も多くなってきました。

2025年4月1日施行の改正高年齢者雇用安定法

2025円4月1日の高年齢者雇用安定法の改正は、うわさがとび交っていますが65歳までの定年の引上げではありません。定年後の継続雇用制度の対象者を限定していた企業に対して、希望者全員を対象者としなければならなくなったことです。したがって、継続雇用の対象者を限定していなかった企業は何も変わりません

また、注意してほしいのは、高年齢者雇用確保措置は、「希望者に対する措置」であり、雇用の継続を希望しない社員まで雇用する義務はありません。60歳で定年退職を希望する社員に対しては、会社に対する意欲がないのですから、無理に引き留めることはしない方がよいでしょう。

2025年雇用保険法の改正

2025年4月1日から高年齢雇用継続給付金の支給率が最大15%から10%に引き下げられます。現在の高年齢雇用継続給付は、雇用保険の被保険者期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の被保険者を対象に、60歳以降の賃金が60歳時点と比べて75%未満に低下した場合に最大賃金の15%相当額が給付金として支給される制度です。この支給率が、2025年4月1日以降に60歳に達する人から最大10%に縮小されるのです。

高年齢雇用継続給付金ありきの賃金制度

60歳で定年後、継続雇用する場合給与を大幅に低下させる企業が多いようです。その時に高年齢雇用継続給付の説明をして、賃金の15%が給付金として支給され、さらに非課税となることで、給与の大幅低下を納得させていませんか?しかし、高年齢雇用継続給付は、今後70歳までの雇用の義務化を進めている国にとって、さらなる縮小、そして廃止はありうることです。そのために、70歳雇用に向けた新たな賃金制度を考える必要があると言えます。

高年齢者に対する2つの法改正対応のポイント

定年後の継続雇用制度における対象者を限定する措置の終了、高年齢雇用継続給付の縮小において、企業としてのどのように対応を考えればよいのでしょうか?そのヒントとなるポイントを説明します。

1つ目は、高年齢者雇用安定法の経過措置として60歳定年後の継続雇用制度において、対象者を限定していた企業は、「希望者全員」へと就業規則を改正しましょう。

2つ目は、雇用継続給付金の縮小に伴って、定年後の賃金制度を見直すことです。今までは、例えば40万円の給与が60歳定年後20万円にした場合、61%以下に低下しているので最大の支給額の月々3万円が受け取れます。しかし、2025年4月1日から対象となる社員からは、2万円に低下してしまいます。
従来と比べて給付金が少なくなり、給与の額はモチベーションに比例するので、モチベーションも下がってしまうでしょう。そうすると、60歳で退職する社員も出てくる可能性があります。そこで、給付金に頼っていた60歳以降の賃金制度を見直して、今の会社で元気な限り働きたいと思えるような制度を作ることをおすすめします。

高年齢者雇用安定法による中高年齢者が離職する場合の措置について

高齢者に関しては、高年齢者雇用安定法に中高齢者が離職する場合の措置が規定されています。現在は努力義務ですが、努力義務は数年先に義務となる可能性が高いので、今から確認をしておきましょう。

  • 再就職援助措置
    事業主に解雇などにより離職が予定されている45歳以上65歳未満の人が、希望する時には、求人の開拓などその中高齢者の再就職の援助に関し必要な措置を実施するように努めなければなりません。
  • 求職活動支援化
    事業主は、解雇などにより離職が予定されている45歳以上65歳未満の人が希望する時には、求職活動支援書を作成し、その中高齢者に交付しなければならない。

法律には、解雇などと記載されていますが、離職時に中高年齢者である者を雇用している企業は、再就職援助措置を講じる必要がある企業となります。

高齢者雇用の未来を見据えて

人手不足の現在、高年齢者は実務経験があるので、企業にとっては欠かせない戦力です。また、高年齢者にとって働きやすい職場は、全ての労働者にとって働きやすい職場になるはずです。人材の多様化が唱えられて久しいのですが、まだまだ健康で元気な人に合わせた職場が多いことは否めません。今回、法律が改正されますが、これを機に高年齢者にとって働きやすい職場を考えてみることをおすすめします。

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