中小企業でもついに始まる!月60時間超の時間外労働割増賃金率引上げ|よくある質問まとめ

新年度を迎え、労務関連の法改正対応は万全でしょうか?中小企業でも、月60時間超の時間外労働に係る割増賃金率を「50%」以上に設定することとなりましたが、現場においてはまだまだ判断に迷うケースも多いようです。

月60時間超の時間外労働割増賃金率引上げ Q&A

このページでは、月60時間超の時間外労働の割増賃金を50%以上に設定する上で、中小企業の皆さまから頻繁にお問い合わせいただく事項をまとめます。「割増賃金率の変更」と言葉でいうのは簡単ですが、いざ実務上の処理を進める上では正しく理解しておくべき点や、検討・準備が必要な点があります。

Q1. 36協定の記載事項に変更はある?

時間外労働に関わる変更ということで、労使間で締結する36協定書や労基署に届け出る36協定届の記載内容にも変更点があるのでは、とお考えの方も少なくないようです。この点、36協定はあくまで労働時間に関する協定であり、割増賃金に関わる記載は不要であることから、36協定届に関して様式が変わることはありません

ちなみに、36協定とは異なりますが、引上げ分の割増賃金の代わりに有給の休暇を付与する代替休暇制度を導入する場合は、労使協定の締結が必要です。

参考:
厚生労働省「代替休暇制度を導入するための労使協定を締結する場合のポイント
厚生労働省「代替休暇に関する労使協定例

Q2. 就業規則の改定は必要?

就業規則や給与規程の、割増賃金の計算方法に関わる箇所の改定が必要です。「割増賃金」に関わる規定は、就業規則の絶対的必要記載事項のひとつである「賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項」に含まれるため、必ず盛り込む必要があります。1ヵ月の時間外労働が60時間以下であれば25%以上、60時間超の場合は50%以上で、会社が定める割増賃金率で支払う旨を規定します。

Q3. 所定休日労働を、時間外労働ではなく休日労働として処理できない?

割増賃金率について、従来、週に1日の法定休日の他、所定休日労働についても同様に、35%以上の休日労働の割増賃金率を適用して給与計算をしていた会社も少なくありません。このたび、月60時間超の時間外労働に係る割増賃金率が引き上げられますが、引き続き、所定休日労働については休日労働としてカウントし、休日労働の割増賃金率を適用して良いかとのご相談を受けることがあります。

まず「カウント」についてですが、所定休日の労働については「休日労働」ではなく、「時間外労働」に算入する必要があります。この点に関しては、「労働基準法上の定め」を基準に考えると分かりやすいと思います。労基法の定めによると、法定休日は「毎週1日(1回)」または「4週間を通じて4日以上」とされており、これを上回る休日に関しては法定外休日(所定休日)となります。この考え方は、会社が任意に適用する割増賃金率に関係なく適用されます。よって、所定休日労働に休日の割増賃金率(35%)を適用する会社であっても、36協定等で「時間外」「休日」を考える際には、従来から、労基法に則った考え方によって労働時間を検討する必要がありました(つまり、適用する割増賃金率に関わらず、所定休日労働は休日労働として扱うのではなく、時間外労働に含めるということ)。

「月60時間超の時間外労働」を考える場合にも、労基法上の「法定休日」「法定外休日(所定休日)」の考え方に則ることが大原則となりますが、適用する割増賃金率についても原則として労基法上の考え方を元に検討するのがスムーズです。つまり、月60時間を超える時間外労働の算定に際しては所定休日の労働時間分も含め、適正な割増賃金率を適用すべきということになります

ちなみに、これまで所定休日労働に関して、時間外労働ではなく休日労働の割増賃金率を適用することで何の問題も生じなかったのは、本来25%の割増賃金率の適用でよいところを35%の率とする取扱いが法を上回る処遇であるからです。この考えに則り、2023年4月1日以降も引き続き、法定休日及び法定外休日(所定休日)の割増率を共に35%にすることに問題はありません。ただし、会社が任意に法定外休日(所定休日)を法定休日とみなして時間外労働時間の算定から除くことで、月60時間超の時間外労働の算定に支障をきたし、結果的に未払賃金が生じてしまう可能性があります。このあたりを踏まえ、会社としてどのように対応するかを慎重に検討し、必要に応じて賃金制度の見直しを行わなければなりません。

月60時間超の時間外労働割増賃金率引上げへの対応は万全ですか?

いよいよ中小企業でも月60時間超の時間外労働に係る割増賃金率が引き上げられたことに伴い、現場においては対応方法に関わる最終確認を欠かすことはできません。「月60時間超の時間外労働」の考え方に関しては、以下の記事でも解説していますので、ぜひ参考になさってみてください。「こんな場合はどうなるのか?」等のご相談は、労務管理の専門家である社会保険労務士にお問い合わせください。

参考記事:『2023年4月1日から適用となる中小企業の割増賃金率引き上げ!「月60時間超」のカウント方法

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