【新型コロナウイルス】派遣業許可更新時の財産的基礎要件に特例措置が講じられます

新型コロナウイルス感染拡大に伴う業績悪化等で、派遣業・有料職業紹介業許可更新時の財産的基礎要件を満たすことが難しいケースにおいて、特例措置が講じられることになりました。

2018年9月末の特定派遣廃止に伴い、現在の派遣事業許可に切り替えた事業者であれば、新型コロナで大打撃を受けた2020年度の決算資料を元に2021年中に許可更新手続きをしなければならないところも多いと思います。財産的基礎要件を満たせないからと更新断念を決断する前に、事業継続の可能性につながる特例措置について把握しておきましょう。今号では、主に派遣業のケースに特化して解説します。

派遣業許可更新時の財産的基礎要件に関わる特例措置の内容

依然として感染拡大が続く新型コロナウイルスの影響に鑑み、2020年10月2日付で厚生労働省より公表された案内から、派遣業許可更新時の財産的基礎要件に関わる特例措置の概要を把握しましょう。

対象は「2020年10月末日から2022年3月末日に更新期限を迎える事業者」

まずは対象となる事業者ですが、以下のすべてに該当することが要件となっています。

✔  最近の事業年度における決算書等または最近の事業年度終了後の月次決算や中間決算等では財産的基礎要件が満たせないこと
✔  許可有効期間更新申請書の提出期限が、2020年10月末日から2022年3月末日までの間であること
✔  許可有効期間更新申請書の添付書類として提出する最近の事業年度における決算書等について、その最近の事業年度または所得税の確定申告の対象となる期間(以下「事業年度等」)に2020年1月24日以降の日付が含まれること

前述の通り、特定派遣からの切り替えで労働者派遣業の許可申請をした事業者の多くが、本特例措置の適用対象となることが予想されます。初めての許可更新にもかかわらず、更新時に必要な財産的基礎について新型コロナウイルスの影響を大きく受けてしまったとお困りの事業者は、ぜひ特例措置の活用を検討しましょう。

特例措置により、財産的基礎要件に実質「更新日から1年の猶予」が認められる

今回公表された財産的基礎要件に係る特例措置は、

  • 更新申請時に
    「直前決算の前年度(更新期限によっては前々年度)の決算書等」
    「許可更新日から1年内の決算で財産的基礎要件を満たすための事業計画書」
    を提出することで仮の更新が認められ、
  • その後、更新日の1年後から1ヵ月以内に「本来の財産的基礎を満たした決算書等」を提出すれば
    正式な更新となる(一方、1年1ヵ月以内に財産的基礎要件を満たせない場合は許可取消の対象になる)とされるものです。

より詳しい内容は、リーフレットよりご確認いただけます。なお、この特例措置は派遣業の許可更新時に認められる要件であり、これから新たに許可を受ける場合に適用できる要件ではありませんので、くれぐれもご注意ください。

図の出典・参考:厚生労働省「新型コロナウイルス感染拡大による影響を受けた「労働者派遣事業者」「職業紹介事業者」の皆さまへ 許可有効期間の更新申請に関する特例措置のご案内

コロナ禍における派遣事業の一旦廃止、「小規模派遣元事業主への暫定的な配慮措置」を受けている事業者は要注意

新型コロナウイルス感染症で経営悪化に苦しむ派遣事業者の中には、更新に際して要件を満たすことができない場合、「一旦派遣事業は廃止して、落ち着いたらまた許可を受ければ良い」と考えるところもあるかもしれません。こうした事業計画も選択肢のひとつではありますが、特定派遣からの切り替え時に「小規模派遣元事業主への暫定的な配慮措置」による財産的基礎要件の緩和を受けている場合には注意が必要です。

現状、「小規模派遣元事業主への暫定的な配慮措置」を受けている事業者であれば更新時にも許可申請時同様の財産的基礎要件が適用されますが、一方で、新規に労働者派遣事業を行おうとする事業主はこの緩和措置の対象外となります。つまり、状況が落ち着いてから新しく許可を取得する際には、原則の財産的基礎要件の充足が必要になるのです。

参考:厚生労働省「労働者派遣事業を適正に実施するために-許可・更新等手続マニュアル-許可基準

派遣許可更新手続きは、有効期間満了の3ヵ月前までに行う必要がありますから、早め早めの準備を心がけるのが得策。お困りの場合には、お気軽に社会保険労務士までご相談ください。

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