梅雨らしくどんよりとした空模様が続き、屋内では日中でも照明を欠かすことはできませんね。ところで、オフィス内の明るさについては、「暗い」「明るい」がしばしばトラブルになることも。自社の照明に関わる問題は「各現場の問題」と思われがちですが、実は、その照度基準は労働衛生基準に定められています。事業所では、法定の基準に従って就業環境を整備しなければなりません。御社では、正しく対応できているでしょうか?
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すべての事業所に適用される、2区分の照度基準
職場の照度基準は、事務所衛生基準規則に定められています。直近では、「事務所衛生基準規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令(令和 3年厚生労働省令第 188 号)」が2022年12月1日より施行され、労働者が常時就業する就業スペースにおける作業面の照度基準が、従来の3区分から2区分に変更されていることをご存知でしょうか?
「一般的な事務作業」としては、通常のオフィスワークを幅広くイメージされると良いと思います。これとは別に「付随的な事務作業」時の基準として、資料の袋詰め等、事務作業のうち、文字を読み込んだり資料を細かく識別したりする必要のない作業に従事する際のルクス数が設定されています。
オフィスの照度基準となる「ルクス」とは?
前項で解説した「職場の照度基準」では「ルクス」という単位が登場していますが、この「ルクス」を理解できなければ適切な照度基準を満たすことはできません。「ルクス」といっても、おそらく多くの方にとって耳慣れない言葉かと思いますので、簡単に解説しておきましょう。
「ルクス」とは、ある特定の方向(面)に放射された光源の明るさを示す単位です。労働衛生基準を満たしているかどうかを確認する際には、部屋全体の明るさではなく、作業する面(手元)の明るさを基準にします。例えば、部屋全体が照明で明るく照らされていても、オフィス家具のレイアウトによっては肝心な手元に十分な光が当たっていないケースがありますが、この場合は必要な基準を満たしていないことがあるため注意が必要です。測定時には、照度を測定する面と、照度計受光部の測定基準面をできるだけ一致させるようにしましょう。
照度の他、トイレの設置基準や職場の温度基準等の確認も行いましょう
今号のテーマは「職場の照度基準」ですが、事務所衛生基準規則及び労働安全衛生規則にはトイレや休養室、更衣室、温度等に関わる労働衛生基準が盛り込まれています。これらの関しても照度基準同様、2022年12月1日に改正法が公布され、すでに施行されていますので、「法改正に対応していなかった」という現場では、改正点を中心に改めて職場の労働環境を確認されてみることをお勧めします。以下のリーフレットより、詳細をご確認いただけます。
参考:厚生労働省「ご存知ですか?職場における労働衛生基準が変わりました」
職場の明るさ基準を始めとする、労働環境の見直しを
職場においてはつい盲点になりがちな労働衛生基準ですが、法の定めに則って適切な形に整備しておかなければなりません。今号で解説した照明に関しては、法律上の基準と併せて、すべての労働者に配慮した視環境の確保を促すことが不可欠です。例えば、パソコンのディスプレイとの兼ね合いで「作業面で300ルクスを維持しようとすると、照明の光が画面に反射して視界に入ってしまいまぶしすぎる」という問題が生じることがあります。このようなケースに対して、配置や角度、間接照明の活用、非光沢ディスプレイへの変更等、状況に応じたきめ細やかな工夫を講じ、各人にとって快適な職場環境を提供できるようにしましょう。また、企業においては高年齢労働者が増加傾向にありますが、必要に応じて個々の労働者に視力を眼鏡などで矯正することを促した上で、作業面における照度を適切に確保できると良いでしょう。