2月も中旬にさしかかり、企業においては着々と新年度準備に取り組まれている頃かと思います。2024年度には「労働条件明示ルールの変更」や「障がい者法定雇用率の引き上げ」等、人事労務分野における重要な法改正が予定されていますが、毎年恒例となる「各種社会保険料率の改定」についても忘れずに確認しておきましょう。今号では、労災保険、雇用保険、健康保険、厚生年金保険に関わる2024年度版保険料率をまとめてご紹介します。
目次
労災保険料率は業種によって引き上げ・引き下げあり、雇用保険料率は据え置き予定
□ 労災保険料率
各業種の過去3年間の災害発生状況等を考慮して、原則3年ごとに改定されます。直近では2021年度に改定があり、2023年度まで保険料が据え置きとされていました。2024年度は改定年度に該当し、具体的には「業種平均で0.1/1000引き下げ(4.5/1000 → 4.4/1000)」「全54業種中、17業種で引き下げ、3業種で引き上げ(その他34業種は据え置き)」となります。
業種ごとに異なる労災保険料率については、以下よりご確認いただけます。引き上げとなるのは、「パルプ又は紙製造業」「電気機械器具製造業」「ビルメンテナンス業」です。
参考:厚生労働省「労災保険料算出に用いる労災保険率の改定等を行います_別添3 労災保険率の改定について」
この他、「一人親方などの特別加入に係る第2種特別加入保険料率」「請負による建設の事業に係る労務費率(請負金額に対する賃金総額の割合)」も改定予定です。必要に応じて、上記URLよりご確認ください。
□ 雇用保険料率
昨年一年間における失業手当受給者数や労働者の実質賃金、積立金残高等を参考に、毎年見直されます。近年の状況を見ると、2022年度、2023年度と連続して引き上げられていましたが、2024年度は前年度据え置きとなる見込みです。ご参考までに、2023年度雇用保険料率表を掲載しておきます。
参考:厚生労働省「令和5年度の雇用保険料率」
厚生年金保険料は2017年9月分以降「18.3%」に固定
厚生年金保険料率は従来、毎年9月分より改定されていましたが、年金制度改正に基づき2004年から段階的に引き上げられ、2017年9月を最後に引き上げが終了して以降「18.3%」で固定されています。2024年度も引き続き、「18.3%」が適用されることになります。
2024年3月分(4月納付分)以降の健康保険料率、介護保険料率は改定予定
□ 健康保険料率
協会けんぽの健康保険料率は、例年3月分(任意継続被保険者にあっては4月分)より見直しが行われています。2024年3月以降の料率に関しても、協会けんぽの各支部の評議会、全国健康保険協会運営委員会で審議が行われ、その結果、各都道府県で引き上げ、引き下げがある見込みです。
□ 介護保険料率
40歳から64歳までの健康保険の加入者は、健康保険料と一緒に介護保険料を納めます。介護保険料率について、2024年度は全国一律で1.82%から「1.60」に引き下げられます。
参考:協会けんぽ「令和6年度の協会けんぽの保険料率は3月分(4月納付分)から改定されます」
□ 子ども・子育て拠出金
厚生年金保険の被保険者を使用する事業主は、児童手当等の支給に要する費用の一部として子ども・子育て拠出金を全額負担しています(従業員負担額なし)。負担する子ども・子育て拠出金額は、「被保険者個々の厚生年金保険の標準報酬月額及び標準賞与額に拠出金率を乗じて得た額の総額」です。拠出金率については、前年据え置きの「3.6/1,000」となる見込みです。
改定された保険料率はいつの給与計算から適用すべき?
改定後の各種社会保険料率と併せて、今一度、改定後の保険料率がいつから適用されるのかを確認しておきましょう。
労災保険料率・雇用保険料率は「施行日以降、最初に到来する締日により支払われる給与」から
労災・雇用保険料率の施行日は2024年4月1日なので、4月1日以降最初に迎える締日の給与計算から、さっそく新しい保険料率を適用します。支払日ベースではなく、締日ベースである点に注意が必要です。
ただし、2024年度は雇用保険料率が前年据え置きとなる予定ですので、給与計算上、保険料率の変更は不要です。一方で労災保険料率が変更となりますが、こちらに関しては全額事業主負担のため、毎月の給与計算での対応はありません。年度更新時に2024年度分の概算保険料を算出する際に、新たな労働保険料率を用いることになります。
健康保険料率、介護保険料率は「4月に支給する給与」から
健康保険・介護保険料の徴収・納付は、「翌月徴収・翌月納付」が原則となっています。今回の改定は「3月分の保険料」から適用となり、その納付期限が「4月末日(翌月納付)」ですから、4月に支給される給与から徴収することになります(翌月徴収)。なお、会社によっては「当月徴収」とするケースもあるようですが、健康保険法上適切な取扱いとは言えませんので、「翌月徴収」に移行されることをお勧めします。