【新型コロナウイルス】休業による収入減の場合、休業開始翌月から標準報酬月額の変更ができる「特例改定」が創設!算定等への影響は?

世界的には依然として猛威をふるう新型コロナウイルス感染症ですが、日本においては緊急事態宣言解除後、徐々に日常が戻りつつあると感じている方も多いのではないでしょうか。しかしながら、企業における雇用問題は深刻であり、私たち社労士の元には日々労使双方からのご相談が後を絶ちません。

現在、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業主、労働者双方に、各方面で特例措置が講じられています。今号では、休業を余儀なくされ収入減に至った場合の社会保険料の特例についてご紹介しましょう。

標準報酬月額の特例的な改定の創設で、休業開始翌月から変更が可能に


出典:日本年金機構「【事業主の皆さまへ】新型コロナウイルス感染症の影響に伴う休業で著しく報酬が下がった場合における標準報酬月額の特例改定のご案内

社会保険(健康保険・厚生年金保険)の標準報酬月額の随時改定は、通常、下記の3要件を満たしたときに届け出が可能です。

(1)昇給又は降給等により固定的賃金に変動があった
(2)変動月からの3か月間に支給された報酬(残業手当等の非固定的賃金を含む)の平均月額に該当する標準報酬月額とこれまでの標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた
(3)3か月とも支払基礎日数が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上である

既存の随時改定では(2)の要件があるため、休業手当により収入減となった4ヵ月目からようやく標準報酬月額が変更されることになります。今般の新型コロナウイルス感染症では、労使双方が大きな打撃を受けていることを鑑みれば、この「4ヵ月目から」という部分の取扱いが問題視されていました。

そこで、今回の特例改定で、休業開始の翌月からの標準報酬月額変更が可能となったというわけです。

特例改定の対象は?

新型コロナウイルス感染症に伴う標準報酬月額の特例改定で対象となるのは、下記のすべてに該当する方です。

✓ 新型コロナウイルス感染症の影響による休業(時間単位を含む)があったことにより、2020年4月から7月までの間に、報酬が著しく低下した月が生じた方
✓ 著しく報酬が低下した月に支払われた報酬の総額(1ヵ月分)が、既に設定されている標準報酬月額に比べて2等級以上下がった方
※固定的賃金(基本給、日給等単価等)の変動がない場合も対象となります。
✓ 本特例措置による改定内容に本人が書面により同意している

重要なのは、3項目にある「本人の同意」です。標準報酬月額は、社会保険関連の諸手当や将来の年金額の算出の基準となることを被保険者本人に十分に説明し、同意を得ておく必要があります。

対象となる保険料

特例改定は、2020年4月から7月までの間に休業により報酬等が急減した場合に、その翌月の2020年5月から8月分の保険料について対象となります。なるべく早めの手続きが求められますが、2021年1月末までの届け出については遡及して適用されるようです。

届出に伴う添付書類は特に必要ありませんが、休業命令等が確認できる書類、出勤簿、賃金台帳、本人の同意書等は届出日から2年間保管しておかなければなりません。

算定基礎届は通常通りの手続きでOK

今回ご紹介した特例改定は、最長で2020年8月までの保険料算定の基礎となる標準報酬月額を定めるものです。一方で、社会保険の算定基礎届は2020年9月以降の保険料に適用となる標準報酬月額の決定、保険料算定に関わる手続きですので、通常通りに処理して問題ありません。

ちなみに、休業手当が支払われた場合の算定基礎届は、「7月1日時点」に休業しているか、もしくはすでに休業状態が解消されているかによって記入方法が変わります。このあたりは、ガイドブックを参考にしながらご記入いただくと分かりやすいと思います。


出典:日本年金機構「算定基礎届の記入・提出ガイドブック 令和2年度

「7月1日時点で一時帰休の状況が解消していない場合」の補足として、4、5、6月のいずれも報酬を全く受けない場合は、
⇒ 算定基礎届では、従前の標準報酬月額で決定されます
※記入例は「算定基礎届の記入・提出ガイドブック 令和2年度」13ページ「ケース⑧ 一般的な方法では算定できないとき」をご参照ください
⇒ ただし、一時帰休(レイオフ)のため、継続して3ヵ月を超えて通常の報酬よりも低額の休業手当等が支払われた場合は、固定的賃金の変動とみなし、随時改定の対象となります
⇒ その後一時帰休が解消され、継続して3ヵ月を超えて通常の報酬が支払われるようになった場合も随時改定の対象となります

休職期間を含む算定基礎届や随時改定については複雑なため、年金事務所や社会保険労務士にご相談いただくのがスムーズです。

【動画で確認】休業による収入減の場合、休業開始翌月から標準報酬月額の変更ができる「特例改定」が創設!算定等への影響は?

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