2024年4月1日より事業主に義務化される、障がい者への「合理的配慮の提供」とは?

民間の事業者に対し、障がい者への合理的配慮の提供を義務付ける改正障がい者差別解消法が、2021年5月に可決・成立、2024年4月1日より施行されます。障がい者への合理的配慮の提供に関わる法的義務は、従来、国や自治体のみに対するものでしたが、今後は企業においても同様に合理的配慮義務が求められることとなります。改正法の概要を理解し、民間企業における具体的な対応を考えてみましょう。

障がい者差別解消法で義務化された「合理的配慮の提供」

2024年4月1日より民間事業者に義務付けられる「障がい者への合理的配慮」とは、障がいのある人が障がいのない人と同じように行動したりサービスの提供を受けたりすることができるよう、過度の負担にならない範囲で、それぞれの違いに応じた対応をすることをいいます。

「合意的配慮の提供」に係る具体的取り組み

日常生活・社会生活において提供されている設備やサービス等については、障がいのある人の活動や利用等を制限している障壁を取り除く必要があります。障がい者差別解消法に規定される「合理的配慮の提供」は、以下①~⑤の取り組みを求めるものです。

① 行政機関等と事業者が、
② その事務・事業を行うにあたり、
③ 個々の場面で、障がい者から「社会的なバリアを取り除いてほしい」旨の意思の表明があった場合に
④ その実施に伴う負担が過重でないときに
⑤ 社会的なバリアを取り除くために必要かつ合理的な配慮を講ずること

合理的配慮の内容としては、事務・事業の目的・内容・機能に照らし、以下の3点を満たすものとされています。

  • 必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること
  • 障がい者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること
  • 事務・事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないこと

また、「過重な負担」の有無については、個別の事案ごとに、以下の要素等を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要です。

  • 事務・事業への影響の程度(事務・事業の目的・内容・機能を損なうか否か)
  • 実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)
  • 費用・負担の程度
  • 事務・事業規模
  • 財政・財務状況

合理的配慮の提供に不可欠な「建設的対話」を考える

「合理的配慮の提供」にあたっては、障がいのある人と事業者等との間の「建設的対話」を通じて相互理解を深め、共に対応案を検討していくことが求められます。なお、建設的対話を一方的に拒むことは、合理的配慮の提供義務違反となる可能性もあるため注意しましょう。具体的に、以下のキーワードには十分留意する必要があります

  • 「前例がありません」
    ⇒合理的配慮の提供は個別の状況に応じて柔軟に検討する必要があります。前例がないことは断る理由になりません。
  • 「特別扱いできません」
    ⇒合理的配慮は障がいのある人もない人も同じようにできる状況を整えることが目的であり、「特別扱い」ではありません。
  • 「もし何かあったら…」
    ⇒漠然としたリスクだけでは断る理由になりません。
    どのようなリスクが生じ、そのリスク低減のためにどのような対応ができるのか、具体的に検討する必要があります。
  • 「○○障がいのある人は…」
    ⇒同じ障がいでも程度などによって適切な配慮が異なりますので、ひとくくりにせず個別に検討する必要があります。

「不当な差別的取扱い」と併せて、あらゆるケースを想定した柔軟な「合理的配慮」の検討を

ちなみに、障がい者への「不当な差別的取扱い」に関しては、すでに行政機関、民間事業者共に禁止となっています。「不当な差別的取扱い」とは、具体的には、正当な理由なく、障がいを理由としてサービスの提供を拒否すること、サービスの提供にあたり時間や場所を制限すること、障がいのない人にはつけない条件をつけること等が該当します。
すでに禁止されている「不当な差別的取扱い」についても、2024年度より新たに必要となる「合理的配慮」についても、個別のケースでの判断が求められます。事業者においては円滑な対応ができるよう、柔軟な対応体制を整えておくことが肝心です。

参考:内閣府リーフレット「令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化されます!

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