【新型コロナウイルス】勘違いしていませんか?休業手当と雇用調整助成金

全国に広げられた緊急事態宣言の発令を受け、企業に対し出勤自粛や休業要請が求められる事態となり、企業は休業手当を支払わなければいけないのか、社員も休業手当をもらえるのかどうかとういうところが気になるところかと思います。また雇用調整助成金との関係についてもまとめていきます。

勘違いしていませんか?

この、メディアに関しては主に人事担当者の方がご覧になっているかと思うので、もうすでにご存じの方も多いかとは思いますが、助成金に仕組みをよくわかっていない社員の方のなかにはたまに勘違いしている方がいるので、念のため…。
雇用調整助成金は、社員に直接支払われるものではありません。
雇用調整助成金は会社がまず会社のお金で休業手当を支払い、その支払った休業手当の額の90%、ただし最大1日8,330円を上限に助成するというものです。つまり会社がすでに社員に支払った休業手当の一定の割合分を会社に返してあげるという制度だという事を理解しなければなりませんし、社員にも理解してもらわなければなりません。

休業手当について

雇用調整助成金は休業手当の支払いが前提ということを前述しましたが、そもそも休業手当とはどんなものなのかということや、人事担当の方は、「うちの会社は休業した場合払わなくてはいけないのか」、社員の方は「休業になった場合、休業手当はもらえるのか」ということが一番知りたいところかと思います。

休業補償と休業手当の違いについて

まず、間違いやすい休業補償と休業手当の違いについてです。

【休業補償】
労働基準法第76条に定められています。

第七十六条 労働者が前条の規定による療養のため、労働することができないために賃金を受けない場合においては、使用者は、労働者の療養中平均賃金の百分の六十の休業補償を行わなければならない。

業務中に生じたけがや病気原因で、やむを得ず働けなくなった従業員を保証することが目的。賃金ではないため課税対象になりません。

【休業手当】
労働基準法第26条に定められています。

第二十六条 使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。

会社都合によって生じた休業に対して、休業期間中従業員に平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。こちらは賃金になるため課税対象になります。

今回のような場合は休業手当はもらえるのか?

厚生労働省のQ&Aでは以下のように記載されています。

問7 新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言や要請・指示を受けて事業を休止する場合、労働基準法の休業手当の取扱はどうなるでしょうか。

労働基準法第26条では、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合には、使用者は、休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければならないとされています。不可抗力による休業の場合は、使用者に休業手当の支払義務はありませんが、不可抗力による休業と言えるためには、
①その原因が事業の外部より発生した事故であること
②事業主が通常の経営者としての最大の注意を尽くしてもなお避けることができない事故であること
という要素をいずれも満たす必要があります。

①に該当するものとしては、例えば、
今回の新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言や要請などのように、事業の外部において発生した、事業運営を困難にする要因が挙げられます。
②に該当するには、使用者として休業を回避するための具体的努力を最大限尽くしていると言える必要があります。具体的な努力を尽くしたと言えるか否かは、例えば、
・自宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させることが可能な場合において、これを十分に検討しているか
・労働者に他に就かせることができる業務があるにもかかわらず休業させていないか
といった事情から判断されます。

したがって、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言や、要請や指示を受けて事業を休止し、労働者を休業させる場合であっても、一律に労働基準法に基づく休業手当の支払義務がなくなるものではありません。

出典:厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」

①については「例えば、今回の新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言や要請などのように、事業の外部において発生した、事業運営を困難にする要因が挙げられます。」と記載があるので、この部分についてはクリアしているけれど、問題は②の「②事業主が通常の経営者としての最大の注意を尽くしてもなお避けることができない事故であること」についてです。
「例えば、
・自宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させることが可能な場合において、これを十分に検討しているか
・労働者に他に就かせることができる業務があるにもかかわらず休業させていないか
といった事情から判断されます。」と記載されているため本当に休業手当を支払わなくても良いのかどうかというところは労働局に問い合わせをしたほうが良いように思われます。

また、Q&Aの4の問8では以下のように記載されています。

問8 新型コロナウイルス感染症に関連して労働者を休業させ、休業手当の支払いが不要である場合について、労働者に対する賃金の支払いは不要でしょうか。

そもそも、事業主は、その雇用する労働者のうち、特に配慮を必要とする方について、その事情を考慮して対策を行う等して労働条件の改善に努めなければならないものであり、これは新型コロナウイルス感染症に関連して労働者に休んでいただく場合も同様です。
そのため、新型コロナウイルス感染症に関連して労働者を休業させ、労働基準法の休業手当の支払いが不要である場合についても、労使の話し合いのうえ、就業規則等により休業させたことに対する手当を支払うことを定めていただくことが望ましいものです。
なお、このような労使の話し合いによって、事業場で有給の特別休暇制度を設ける場合の手続については、問11「特別休暇の導入の手続」をご覧ください。
また、一般的には、現状において、新型コロナウイルス感染症の拡大防止が強く求められる中で、事業主が自主的に休業し、労働者を休業させる場合については、経済上の理由により事業の縮小を余儀なくされたものとして、雇用調整助成金の助成対象となり得ます。

出典:厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」

厚生労働省としては、労使で話し合いのうえ、就業規則等により休業させたことに対する手当を支払うことが望ましいとしています。

休業手当は正規雇用も非正規雇用も関係ない

非正規雇用の社員には休業手当を支払う必要がないと勘違いしていることがよくあります。
休業手当は労働基準法第26条にも書いてある通り該当労働者に支払わなければならないものです。正規雇用の社員も非正規雇用の社員もどちらとも労働者に含まれるため、非正規雇用の社員にも支払う必要があります。

雇用調整助成金の上限

これまで頑張ってきてくれた社員や優秀な社員を引き留めるためには、休業手当を支払うのが一番いい方法かもしれません。おそらく休業手当を支払わなかったら、退職をしてしまう社員もいるでしょう。
しかし雇用調整助成金には最大1日8,330円という上限があるため休業手当として支払った金額がすべて助成金でまかなえるというわけではありません。助成金でまかなえなかった金額については会社が負担することになります。
また、助成金は申請すれば必ずもらえるというものでもありません。
4月14日の時点では、214件申請されていますが支給が決定しているのはたったの2件となっています。

出典:テレ朝news「「雇用調整助成金」214件申請も…支給決定わずか2件」

これは申請されているものがまだ審査中のため支給決定件数が少ないということも考えられますが、支給決定までに最低でも1カ月かかるため、たとえ申請してもすぐに会社に助成金が入ってくるわけではありません。

ある程度、余裕のある会社であれば休業手当を払うということもできるかもしれませんが、そうもいかない会社もあるかと思います。
今回の場合は以下の記事でも記載しているように休業要請が出ている以上、営業を継続することは困難ですから、「使用者の責めに帰すべき事由がない(不可抗力)」を満たすことになり、また、テレワークでの対応が難しい業種においては、「経営者として最大の注意を尽くしても避けることのできない」ともいえ法律上「休業手当の支払い義務は生じない」ことになり、休業手当を支払わなくても良いということになるかもしれません。

【参考記事】『【新型コロナウイルス】全国に緊急事態宣言発令!企業における休業手当の支払義務はどうなる?雇用調整助成金の活用で60%支給が賢明か。

もし、労働基準監督署や顧問社労士によく相談をしたうえで、休業手当を支払わないと決めた場合、社員からは当然不満の声が出てくるでしょう。なぜ休業手当を支払わないと判断したのかをきちんと説明しなくてはいけません。
失業給付をすぐもらえるようにと解雇をした会社もあるようですが、失業給付は雇用保険から支払われるため雇用保険に加入していない社員は失業給付の対象になりません。
また、雇用保険に加入している社員でも加入期間によっては失業給付をほとんどもらえないということもあり得ます。
そうしたことも含め、会社は社員にきちんと説明をしなけれなばいけませんし、きちんと説明してもらえるように求めなければいけないでしょう。

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