特別条項付36協定の締結だけではダメ!労働時間が限度時間超となる場合の「特別条項の発動手続き」とは?

労働時間について、「月45時間」「年360時間」の限度時間を超える労働が想定される場合、単に特別条項付36協定を締結しているだけでは足りず、「特別条項の発動手続き」が必要となります。御社では、都度適正に対応できているでしょうか?今号では、盲点になりがちな時間外労働関連の手続きについて確認しましょう。

限度時間を超えて労働させる場合は要事前手続き!

従業員に、「月45時間」「年360時間」の限度時間を超えて働いてもらう際には、あらかじめ特別条項を発動させるための手続きを経なければなりません。御社の特別条項付36協定届に記載した「限度時間を越えて労働させる場合における手続」をご確認いただき、これに沿って対応します。

出典:東京労働局「時間外労働・休日労働に関する協定届(特別条項)様式第9号の2

一般的には、事前の「労使協議」か「通告」

「限度時間を超えて労働させる場合における手続」の欄に定められている特別条項発動手続きに関しては、①「労使間における協議(労使協議)による方法」か②「会社からの通告(通知)による方法」のいずれかだと思います。①は従業員代表者に対する事前申し入れと労使間で協議を行う方法、②は従業員代表者に対して単に特別条項を発動する旨を通告(通知)する方法となります。会社が36協定に定める方法に従って実施し、記録に残しておきましょう。

出典:厚生労働省「FAQ

健康・福祉確保措置の実施状況も記録に残しておきましょう

併せて、36協定届に記載した「限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置」についてもご確認いただき、実施の状況を記録に残して保管しておきます。
なお、発動手続きに関する記録も、健康・福祉確保措置の実施状況に関わる記録も、法定の様式があるわけではなく、保管期間の定めもありません。この点、記録に関しては前項の図を参考にご作成いただき、労働基準法第109条に定める労務関連書類の保存期限(完結の日から5年間。ただし、法改正の経過措置として当分の間は3年間)に準じた取扱いとされると良いでしょう。

36協定を適正に締結していますか?

36協定の締結・届出については、今号で解説した「特別条項の発動手続き」以外にも、注意すべき点がいくつかあります。以下は、36協定の基本的な手続きとなりますが、今一度、実務上の取扱いを確認しておきましょう。

36協定について、年に一度の見直しと締結・届出ができていますか?

36協定とは、「時間外・休日労働に関する協定」のこと。労働基準法第36条の定めを根拠条文とすることから、一般的に36協定と呼ばれています。従業員に時間外・休日労働をさせる会社は、労働者の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者と書面による協定を締結しなければなりません。加えて、36協定は締結後、労働基準監督署への届出が必要です。
36協定は、一度届け出れば良いというわけではありません。協定の有効期間内に、内容の見直しを行い、新たな協定の締結・届出を行わなければなりません。有効期間について法令では定められていませんが、「1年」が望ましいとされており、実務上も年に一度の締結・届出を行う企業がほとんどです。

協定書、協定届を正しく作成できていますか?

36協定の原則的な締結の方法は、労使間で協定書を作成・締結し、その内容を36協定届によって労働基準監督署に届け出るというものです。ただし、実務上は協定書を作成せず、協定書兼協定届の形で36協定届のみを作成するケースが多く見受けられます。ちなみに、36協定届については2021年4月より押印不要となりましたが、協定書を兼ねる場合(別途労使協定書を作成しない場合)には引き続き労使の署名・押印が必要ですのでご注意ください。

特別条項の発動が必要なケースを理解できていますか?

36協定締結後、認められる時間外労働の上限は、原則として「月45時間」「年360時間」です。これを「限度時間」と言います。ただし、臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合、特別条項を付けて締結することにより、以下の範囲内で限度時間を越えた労働が可能となります。

  • 時間外労働が年720時間以内
  • 時間外労働と休⽇労働の合計が月100時間未満
  • 時間外労働と休⽇労働の合計について、「2ヶ月平均」「3ヶ月平均」「4ヶ月平均」「5ヶ月平均」「6ヶ月平均」が全てひと月当たり80時間以内
  • 時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6ヶ月が限度

なお、限度時間を超えて労働させることができるのは、通常予見することのできない業務量の大幅な増加等の臨時的かつ特別の事情が生じた場合に限られ、恒常的であることは認められません。特別条項発動に際しては、36協定に明記した「臨時的に限度時間を超えて労働させることができる場合」と照らし合わせ、あらかじめその必要性を十分に確認する必要があります。

参考:厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説

「うっかり上限オーバー」とならないために

自社の時間外労働が時間外労働の上限内で行われているかどうかを確認するためにも、特別条項の発動に際して所定の手続きを経て記録を残しておくこと、さらに適正な形で勤怠管理を行うことが重要になります。
HRMOS勤怠 by IEYASUなら、時間外労働の上限規制に従った勤怠アラートの設定が可能。忙しい現場でも、労働時間の適正管理が可能です。

参考:HRMOS勤怠 by IEYASU FAQ「Q.【新労基法対応】時間外労働の上限規制に従った勤怠アラートの設定方法は?

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