2022年4月改正で、年金制度はより一層、働くシニアに寄り添った設計に

年金は私たちすべての国民に関わる制度ですが、その複雑さゆえ、一般の方からは「よく分からない」「高額な保険料支払いに不満がある」といったお声を多く耳にします。このように、何かと疑念が抱かれやすい年金制度ですが、人々のライフスタイルや社会的風潮の変化に応じ、時代を経て、私たちの暮らしに寄り添う形へと少しずつ形を変えています。今号では、2022年4月1日より変わる年金制度のポイントについて解説しましょう。

2022年4月年金制度改正① 在職老齢年金制度が見直され、働くシニアの年金受給額UP

最近では、歳を重ねても元気に働くシニアが増えています。こうした背景には、少子高齢化の進展や健康寿命の延伸が挙げられますが、法制度の観点からいえば、2021年4月施行の高年齢者雇用安定法により「70歳までの就業確保措置」が事業主の努力義務とされたことも追い風となっているようです。

シニアの中には、厚生年金保険に加入しながら老齢厚生年金を受給する方もいます。こうした方々には「在職老齢年金」の仕組みが適用され、賃金と年金受給額の合計が一定額を超えると年金額の全部または一部が支給停止されています。

2022年4月の年金制度改正では、この在職老齢年金の仕組みについて、以下の2点が変更となります

① 60~64歳の在職老齢年金制度について、支給停止の基準額が28万円から「47万円」に引き上げ

 現行の65歳以上の在職老齢年金制度では、支給停止の基準額はすでに「47万円」のため変更はありません

60~64歳で老齢厚生年金を受給しながら高年齢労働者の場合、従来は、賃金と年金受給額の合計額が月額28万円超となるとこれを超える部分の年金が支給停止となっていました。この点、2022年4月1日以降は支給停止基準額が「47万円」に緩和され、受け取ることのできる年金額が増える方が出てまいります

② 「在職定時改定」が導入され、65歳以上の高年齢労働者は年に一度年金額が増額に

現行の厚生年金制度では、65歳で一定要件を満たす方に対して老齢厚生年金が支払われます。65歳以降、老齢厚生年金を受給しながら厚生年金保険に加入して就労した場合、在職中に支払った保険料は即座に年金額に反映されず、資格喪失時(退職時もしくは70歳到達時)に初めて年金額が改定されています。

この点、就労を継続したことの効果を、退職を待たずに早期に年金額に反映することで、年金を受給しながら働く在職受給権者の経済基盤の充実を図る目的で、65歳以上の高年齢労働者については、在職中であっても、年金額の改定を定時に行こととされました(毎年1回、10月分から)

「在職定時改定」に関しては、以下の図をご覧いただくと、より分かりやすいと思います。

2022年4月年金制度改正② 年金受給開始時期が75歳まで繰り下げ可能に

現行の年金制度では、受給開始時期を60歳から70歳の間で自由に選ぶことができ、65歳の前後で年金額の減額・増額が行われています。

この点、2022年4月1日時点で70歳未満の方については、繰り下げ受給の上限年齢が70歳から「75歳」に引き上げられ、より柔軟で使いやすくなります。75歳から受給を開始した場合には、年金月額は84%増額となります


なお、原則の年金支給開始時期である「65歳」に関しては、引き上げは行われません。

以上、すべての図の出典:厚生労働省「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律の概要

年金制度を正しく理解し、ご自身のライフプランを前向きに検討しましょう

一見すると複雑に感じられる年金制度ですが、一つひとつの制度を正しく読み込み、理解することで初めて、ご自身の老後の生活設計に則した年金活用に目を向けることができるようになります。年金の専門家である社会保険労務士は、個人向けの年金相談にも対応させていただいておりますので、ぜひお気軽にご相談ください!

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