【働き方改革】賃金不払残業解消のカギとなる「適正な勤怠管理」に目を向けよう

働き方改革が本格的に動き出してから早2年半が経過し、日々社労士業務に携わる中で、労働環境の改善は各現場において着実に進んできているなと感じます。私が実務を通して受ける印象は、今号で解説する2020年度「監督指導による賃金不払残業の是正結果」にも数字として表れており、是正企業数・対象労働者数・是正指導により支払われた割増賃金合計額のいずれも前年度から大幅減となっていることが分かります。しかしながら、今回の調査から浮き彫りとなった「不適切な労働時間の認識・記録による不払残業の発生」については、いずれの現場においても今一度、検討しておく必要のある課題と言えます。

各社の賃金不払残業解消に向けた動きが伺える、2020年度「監督指導による賃金不払残業の是正結果」

「監督指導による賃金不払残業の是正結果」は、労働基準監督署が監督指導を行った結果、不払となっていた割増賃金が支払われたもののうち、支払額が1企業で合計100万円以上である事案をまとめたものです。

2020年度是正結果のポイントは、以下の通りです。

✓ 是正企業数:1,062企業(前年度比549企業の減)
うち、1,000万円以上の割増賃金を支払ったのは、112企業(同49企業の減)
✓ 対象労働者数:6万5,395人(同1万3,322人の減)
✓ 支払われた割増賃金合計額69億8,614万円(同28億5,454万円の減)
✓ 支払われた割増賃金の平均額は、1企業当たり658万円(昨年度は611万円)
労働者1人当たり11万円(昨年度は13万円)

 
このように、「支払われた割増賃金の平均額(1企業当たり)」を除くすべての項目で、数字の減少が見られました。以下の図から、2020年度の「100万円以上の割増賃金の遡及支払状況」は、過去10年度の中で最も改善されていることが分かります。

「賃金不払残業の解消のための取組事例」では、いずれのケースも「適正な労働時間把握」がカギに

本是正結果では、毎年「賃金不払残業の解消のための取組事例」が紹介されていますので、各現場においては監督指導の実施対象となった経緯や問題点、解決策を参考にされてみてください。2020年度資料によれば、いずれの事例においても、「ずさんな勤怠管理」に係る情報提供があったことによって労基署の調査が行われているようです。以下、具体事例より抜粋します。

  • 「出勤を記録せずに働いている者がいる。管理者である店長はこのことを黙認している。」との情報を基に、労基署が立入調査を実施
  • 「時間外労働が自発的学習とされ割増賃金が支払われない」との情報を基に、労基署が立入調査を実施
  • 「自己申告制が適正に運用されていないため賃金不払残業が発生している」との情報を基に、労基署が立入調査を実施
  • 「退勤処理を行った後に働いている者がいる」との情報を基に、労基署が立入調査を実施

今一度見直したい、「労働時間についての認識」と「勤怠管理の方法」

「賃金不払が生じている」というと、給与計算上のミスと考えられがちですが、実態として「労働時間の定義を正しく理解できていない」「勤怠管理の方法が適切ではない」といったことが温床になっているケースは少なくありません。御社では、正しい認識の元、勤怠管理に対応できているでしょうか?

厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(平成29年1月20日策定)」を参考に、労働時間の定義と労働時間を適正に把握するための方法について見直しておきましょう。

◎ 労働時間の定義

  • 労働時間とは使用者の指揮命令下に置かれている時間であり、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たること・例えば、参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間は労働時間に該当すること

◎ 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置

  • 勤怠管理=労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、適正に記録する
  • 原則的な方法は、「使用者自らが現認することにより確認すること」「またはタイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること」
    ※自己申告制はやむを得ない場合に、勤務実態との乖離がないよう、適正に行われるべきとされている

勤怠管理関連の不安は「IEYASU」で払拭できます

適正な勤怠管理の実施については、働き方改革への対応の一環としてすでに取り組んでいる企業がほとんどかと思いますが、今号にご紹介した是正結果を見る限り、改善が必要な現場は依然として少なくなさそうです。

無料のクラウド勤怠管理システム「IEYASU」をご活用いただくことで、ガイドラインに則した適正な労働時間把握が可能になります。適切なツールを導入し、一日も早く、勤怠管理に関わる不安を解消しましょう!

参考:厚生労働省「監督指導による賃金不払残業の是正結果(令和2年度)

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