【民法改正】準備は大丈夫?月給制正社員の退職ルールが変更されます

退職の申請とその後のフローについては各社で一定のルールは存在しているでしょう。それに加え、退職の取り扱いについては実は民法でも定められているのです。
その民法が、みなさんご存知の通り2020年から改正・施行されようとしています。それにより、「月給制」「無期雇用」に該当する労働者の退職の取扱いが変更されます
ご確認の上、いざという時は労使ともに気持ち良く退職ができるようにしておきましょう。

民法上、正社員でも「2週間前までの予告」で退職できるようになります

まずは、現行法の定めを整理しましょう

期間に定めのない雇用契約を締結している労働者(無期雇用や正社員など)の退職について、民法627条1項では「各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。」と定められています。
ただし、使用者からの解約の申入れについては「解雇予告」を定めた労働基準法第20条が優先されるため、原則としては下記のルールが適用されます。

・期間に定めのない労働者からの退職の申入れ→2週間前まで
・使用者からの解雇予告→少なくとも30日前の予告 or 30日に満たない日数分の解雇予告手当の支払い

ただし、月給制のような「期間によって報酬を定めた場合」には、現行の民法627条2項において「解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。」とされています。つまり、現行法では、期間に定めのない労働者であっても月給制の場合には、必ず2週間後に退職できるわけではないのです。月末締めの場合、「月の前半に解約を申し出れば当月末に、月の後半に申し出れば翌月末に退職」というルールに則ることになっていました。

民法改正で、627条が変わります!

ところが、前項後半に解説した民法627条2項の定めについては、民法改正で変更されることが明らかになっています。改正条文を確認すると、下記の通りとなっています。

‘期間によって報酬を定めた場合には、使用者からの解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。’

参考:法務省「民法(債権関係)の改正に関する要綱仮案

一見すると、「以前と同じではないか」と思ってしまうのですが、よく見てください。本ルールが適用されるのが、「使用者からの解約の申入れ時」に限定されることになったのです。

よって「労働者側からの退職の申入れ」については、月給制の正社員であっても民法上は「2週間前までの申し入れ」で良いことになります。

就業規則と民法はどちらが優先される?

法律上の定めは前述の通りです。しかし就業規則上、労働者からの退職の申入れについて「30日前までに」等としている会社は多いのではないでしょうか?
この場合、民法と就業規則のどちらが優先されるのか、気になるところでしょう。

この点については見解が分かれるところですが、過去には民法627条を優先した判例がありました。

参考:公益社団法人全国労働基準関係団体連合「高野メリヤス事件-東京地判昭和51年10月29日

よって、原則は「民法優先」とするのが妥当と言えそうです。

ただし、民法627条の定めはあくまで「労働者側からの一方的な退職」に関するものです。労使の話し合いのもと退職日を決める「合意退職」が成り立つ場合には、就業規則の定めに従い「30日前まで」とすることに何ら問題はありません。ただし、就業規則で極端に長い退職申入れ期間を設定している場合には、該当部分の定めは無効とされるので注意が必要です。

民法改正を見据え、就業規則等の見直しを

本稿で解説した民法改正に伴う退職ルールの変更を想定し、今後、企業が検討すべきは下記の事項です。

月給制でも、締め日を待たずに2週間で退職する労働者が生じる可能性がありますので、
・賃金規程において、欠勤控除のルールは明確か?
・月の途中で退職するケースに対応する、社会保険手続きマニュアルは万全か?
・十分な引継ぎ期間を確保できない可能性がある。就業規則に定めるべき対応策は?

これらを確認し、準備しておくのが良いでしょう。

何かあってから慌てるのでは、時すでに遅し。民法改正を見据え、今一度社内規程を見直し、必要な条文を検討・追加されておくことをお勧めします。

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