【民法改正】残業代請求の時効が2年→5年へ。必要な対策と適切な勤怠管理とは?

未払賃金請求の時効が、現状の「2年」から「5年」へと変更される見込みであることをご存知でしょうか?
本改正を受け、労働者側から企業への未払残業代請求件数が急増するかもしれません。
勤怠管理を疎かにしてしまっている企業においては、速やかに適切な方法での管理を徹底すべきです。
ぜひとも今から、必要な備えを固めましょう。

民法改正により未払賃金の消滅時効「2年」→「5年」の改正は、早ければ2020年に

 新聞やニュース等でこの記事をご覧になって、「すぐにでも改正されてしまうのか」と驚かれた方もいらっしゃるかもしれません。しかしながら、現在報じられている内容は未だ検討段階であり、直ちに適用されるものではありません。
 厚生労働省によると、2017年内に有識者、学識経験者らによる検討会にて方向性を固めた上で、2018年夏の労働政策審議会で労使を交えた具体的な議論を行うとのことです。時効見直しが妥当となれば、早ければ2019年内に法案提出、2020年に改正法施行となる見込みです。

参照:日本経済新聞電子版「未払い賃金請求、最長5年に サービス残業抑制へ検討」

 このような改正が見込まれている背景には、「民法改正」があります。債権の消滅時効について、これまでは様々な短期消滅時効が定められていました。それが原則「5年」に統一されたことを受け、賃金債権の消滅時効に関しても同様の扱いとする動きとなっているのです。

未払賃金の消滅時効改正に向けて、企業がすべき“備え”とは?

未払残業代の清算と、今後の勤怠管理について検討せよ

 未払賃金に関わる時効が延長されることを受け、これまで勤怠管理を怠っていた企業においては、これからあらゆる“備え”を検討しなければなりません。具体的には、まず「これまでの未払残業代を可能な限り清算しておくこと」に加え、「今後の勤怠管理の方法を検討・導入すること」が挙げられます。
前者については、会社の状況に応じて個別具体的に考える必要があるため本稿での解説は控えます。なるべく早期に専門家を交え、相当の時間をかけて慎重に検討・実施を進めていきましょう。
 一方後者に関しては、どの会社でも思い立ったら比較的早期に取り組める事柄ではないでしょうか?法律上望ましいとされる勤怠管理の方法については、以前の記事にて解説しているのでご参照ください。改正安全衛生法施行規則で定められる、“客観的かつ適切な労働時間の把握方法”をクリアするためには、「クラウド」による勤怠管理がオススメです。

【参考記事】『勤怠管理は「義務」になる。まだタイムカードや手書きで消耗してるの?』

就業規則見直しのための細かい施策は専門家と相談を

 その他、「就業規則を整備し、残業を申請・許可制にする」「各人の業務負担を見直す」「業務フローの改善」「職場の意識改革」等、細々とした施策はいくつも挙げることができます。このあたりは専門家も活用しながら、必要な備えを固めていきましょう。

2年以上遡っての未払賃金請求が起きた事例も

 ちなみに現在、労働基準法第115条によって未払賃金の請求に関わる時効は「2年」とされていますが、判例では「3年」分の未払残業代の支払いが命じられた例もあります(杉本商事事件・広島高裁平成19年9月4日)。これは民事法上の不法行為、および債務不履行による損害賠償請求権の時効が適用されたもので、会社が意図的に労働時間を把握しない等の事実があったことが「不法行為」とみなされたケースです。

判例でも明らかなように、勤怠管理を怠ることは「不法行為」です。事業主の皆さん、今一度、襟を正してまいりましょう!

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