多くの会社では、入社後何ヶ月か試用期間を設けているかと思います。
何事もなければ、試用期間後正式採用ということになるはずですが、試用期間中に適性を判断することができず、試用期間を延長したいとなった場合、どんなことを注意するべきなのかということを、今号ではまとめていきます。
就業規則で定められているか確認
就業規則上での上記規定の有無、また延長の期間について確認の上判断する必要があります。
試用期間の延長は、労働者にとって不利益な内容であることから、就業規則上に延長することができる旨が定められていることが必要です。
試用期間の延長自体を制限する法律はない
法律上の制限はないものの、合理的な理由は必要とされています。試用期間中の労働者は、会社が解雇についての権利を留保している状態になるため、社会的に不安定な立場であり、無制限に延長を認めるのは望ましくありません。合理的範囲を越えて長期に及ぶ場合、期間を定めずになす試用期間の延長を無効とする判例もあります。(1984年ブラザー工業事件、1973年上原製作所事件など)
一般的に通常の業務であれば、3か月から6か月程度が妥当な期間と考えられています。
試用期間の延長のポイント
試用期間の延長は正当な理由なく行われてはなりません。以下必要なポイントを挙げておきます。
- 客観的理由、やむを得ない事情がある(本採用を検討する時間が欲しい)
- 就業規則に記載がある(試用期間の延長についてあらかじめ就業規則に定められている)
- 事前に労働者に通知し、合意がある(事前通知と合意が必要、試用期間が過ぎてから伝えてもダメ)
試用期間中であっても労働者
試用期間中とはいえ労働者には変わりはなく、就業規則等にて以下の事項を明確に定めていることが必要です。特に使用期間中の労働条件を低く設定している場合には注意が必要です。
- 労働時間:所定労働時間など正社員と同じ条件で働くもの
- 年次有給休暇:権利発生は雇入れから6ヶ月経過後なので与えなくともよい
- 解雇:能力等が本採用に不適と判断されれば解雇はできるが14日以上働いている場合解雇予告必要
- 福利厚生その他労働条件:正社員と基本的には同じ条件
従業員に納得のいく説明が必要
従業員に納得のいく説明が必要です。入社後面談などを行う等状況把握をしましょう。
試用期間について、労務トラブルを避けるために労働条件通知の際に入社者に話をしたり、雇用契約書に記載するなど事前に連絡している企業が多いかと存じます。ですが、実際に試用期間を延長することは対象者に大きなインパクトを与えます。入社後のフォローとして入社1ヶ月後に面談を実施し、勤務状況や職場環境への適応状況を従業員・現場責任者などに確認をするなど、入社後の様子を把握しておく事が必要です。仮に試用期間を延長する場合はどのような根拠に基づいているのかを従業員に知らせる必要があります。
従業員のモチベーションにも関わることですので、試用期間中に段階的に面談等を行い、従業員が納得した形で延長するように配慮することが不可欠です。
困ったら専門家に相談することを検討
労務関係や助成金のことで、困ったことや具体的に聞きたいことがあれば社会保険労務士に相談してみるのも一つの方法です。
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