2019年より順次進められている、企業における働き方改革。改正労働基準法の施行から早2年半ほどが経過しようとしており、すでに施策の多くが適用となっていますが、御社においての取り組み状況はいかがでしょうか?企業における働き方改革に関する理解度について、石川県経営者協会が興味深い調査結果を公表していますので、今号でご紹介しましょう。
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目次
確認しましょう!働き方改革に関する理解度チェック
石川県経営者協会は、2020年6月、県内の従業員5人以上の事業所に対して働き方改革に関する理解度を〇×クイズ形式で調査しました。このページを訪れている皆さんも、まずは以下の設問について、理解度を確認されてみてください。
年次有給休暇について ~○×で解答しましょう~
- 年次有給休暇を5日以上取得義務化の対象者は年次有給休暇が10日以上付与された者である
- 年次有給休暇を5日以上取得義務化の対象者にパート社員も含まれる
- 年次有給休暇を5日以上取得対象者が5日未満の場合は一人当たり30万円の罰金が課せられることがある
- 年次有給休暇義務化の取得日数に半日単位有給休暇は含まれるが、時間単位の有給休暇は含まれない
- 使用者は労働者ごとに年次有給休暇管理簿を作成し、5年間保存しなければならない
時間外労働について ~○×で解答しましょう~
- 36協定を提出しなくても時間外労働の命令をすることはできる
- 時間外労働時間の上限の45時間、年360時間に休日労働は含まれない
- 臨時的な事情がある場合の時間外労働時間は最大100時間未満であれば違反とならない
- 中小企業において法定労働時間外労働が月60時間を超えた分について、2024年4月から割増賃金が5割以上になる
- 通勤手当は時間外の算定基礎額に含まれる
同一労働同一賃金について ~○×で解答しましょう~
- 隣接する企業の社員が同一業務を行った場合、賃金は同程度にしなくてもよい
- 同期入社の社員同士が同一業務を行った場合、賃金は同程度にしなければならない
- 非正規社員には正規社員と同一の基準で通勤手当を与えなくてはならない
- 非正規社員も正規社員と同様に福利厚生施設を利用させなければならない
- 非正規社員から正規社員との待遇差の説明を求められた場合、企業側は説明する義務がある
いかがでしょうか?いずれも素直な問題ですが、中には判断に迷うものもあったかもしれません。各設問の解答・解説、及び正解率は、以下よりご確認いただけます。
以上、出典:石川県経営者協会「働き方改革理解度に関する調査(2021/Ⅰ概要)」
7割以上正解は全体の46.7%
同調査によると、7割(11問)以上正解した企業は681社(46.7%)とのことで、現場においては概ね働き方改革関連の知識が浸透している印象を受けます。ただし、設問によっては実務上重視すべきにも関わらず、正解率の低いものも見受けられます。
例えば、「臨時的な事情がある場合の時間外労働時間は最大100時間未満であれば違反とならない。」については、全体の5割ほどの正解率にとどまります。本設問の場合、「月100時間未満」の要件と併せて、「2ヵ月から6ヵ月の平均で80時間以下」「年720時間まで」といった基準もあり、これらを満たさない場合は時間外労働の上限規制違反となります。
また、「中小企業において法定労働時間外労働が月60時間を超えた分について、2024年4月から割増賃金が5割以上になる。」についても、正解率は5割弱です。こちらは、「2023年4月から」が正解です。
さらに、同一労働同一賃金に関連して「同期入社の社員同士が同一業務を行った場合、賃金は同程度にしなければならない。」については、必ずしも同期入社の社員の賃金を同程度にしなければならないというわけではないものの、正解率は4割程の低い数字でした。同一労働同一賃金は、正規雇用労働者・非正規雇用労働者間の不合理な待遇差を禁止するものですが、現場においては正しく認識されていない場合もありそうです。
働き方改革の各施策については打刻ファーストでも解説済みですが、すでに施行から時間が経過していることに鑑みれば、今一度、現場において曖昧になっている部分の理解を深めておくと良いでしょう。厚生労働省でも特設サイトから情報発信が行われていますので、ぜひお役立てください。
各施策に関わる具体的な取り組み方、その他ご不明点やご相談事等は、労務管理の専門家である社会保険労務士にお気軽にお問い合わせください。