退職した社員から退職証明書を発行してほしいと依頼を受けることがあるかと思います。今号では退職証明書とはどんなことを記載する必要があるのか、記載する必要が無いのか作成する際の留意点などをまとめていきます。
退職証明書とは
企業を退職した労働者が確かに退職した事実を客観的に証明する、企業が作成する書類です。労働基準法第22条に記載すべき事項について定められています。
①使用期間 :「○年○ヶ月」や「○年○月○日~○年○月○日」など期間が分かる表現
②業務の種類 :その労働者に任せていた業務内容、どこまで記載するかは企業の任意
③その事業における地位:退職した労働者が辞める直前の役職
④賃金 :退職した労働者の最新の賃金額、手取り額ではなく総支給額
⑤退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む):表現は企業の任意
退職証明書に記載される内容
証明書にはすべてを記載する必要はありません。労働基準法第22条3項にて労働者が請求しない項目を記載してはならないと定められていますのでご注意ください。特に退職の事由が解雇だった場合に、労働者が解雇の事実のみについて使用者に証明書を請求したものであれば、解雇の理由を証明書に記載してはいけません。証明書に記載できるのは解雇の事実のみとなります。(平成11年1月29日 基発第45号)
また、同条4項に労働者の就業を妨げることを目的として労働者の国籍、信条、社会的身分、労働組合運動に関する通信のため秘密の記号等を記入してはならないことも定められています。
記載する事項 | 記載してはならない事項 |
使用期間 | ・本人が記載を望まない事項
・労働者の就業を妨げることを目的として労働者の国籍、信条、社会的身分、労働組合運動に関する通信のため秘密の記号等 |
業務の種類 | |
その事業における地位 | |
賃金 | |
退職事由 |
退職証明書が必要な場面
退職した労働者側で証明書が必要になるのは、以下が主な場面です。
- 転職先の企業からの提出依頼
- 雇用保険や国民健康保険の手続きで何らかの理由で離職票がない場合
なお、企業が退職証明書を発行する義務は2年間で、労働者の退職後2年までは申請に応じなければなりません。
退職照会に備えて網羅した証明書を発行しましょう。
人事の現場にて市区町村から退職照会をご経験された方は少なからずいらっしゃるかと思います。「○○さんが今窓口に来ているのですが、退職日の確認をさせて頂きたく」という具合に国民健康保険に切替の際に退職証明書(資格喪失証明書)がない場合にこの様な連絡が入るケースがあります。この際、退職日に加え資格喪失日を問われるケースがほとんどです。口頭での回答でも国民健康保険の切り替えは可能ですが、電話口の見えない相手に個人情報を伝える事になります。万一の情報漏洩リスクを考え、国民健康保険切替予定の退職者には「退職証明書兼資格喪失証明書」を発行するといいでしょう。
退職者向けのフローに予め退職証明書の発行予定を入れておくと円滑な処理が可能となります。発行義務があるものですので、言われる前に聞くフローを考えてみてはいかがでしょうか。
困ったら専門家に相談することを検討
労務関係や助成金のことで、困ったことや具体的に聞きたいことがあれば社会保険労務士に相談してみるのも一つの方法です。
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