【裁量労働制】正しく適用できていますか?見極めるために知っておきたいポイント5選

厚生労働省が、不適切な裁量労働制を実施している事業所の取締りを強化するというニュースが報道されました。

厚生労働省は、裁量労働制を導入している事業所を対象にした自主点検の報告の結果、運用に問題があると見られる事業所などに対して、立ち入り調査を行う方針を固めました。対象となる事業所は、1000以上に上ると見られるということです。(2018/5/17 NHK NEWS WEB)

裁量労働制は、実労働時間にかかわらず一定の時間労働をしたものとみなして賃金を支払う制度ですが、上記の通り、適切に運用されていないケースが少なくありません。
そこで、本稿では、自社の裁量労働制が正しく運用されているかチェックをする重要ポイントを5つ紹介したいと思います。

1.裁量労働制は適用できる職種は限られている

第1のポイントは、裁量労働制には専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制の2種類がありますが、いずれの制度も適用することができる職種は限られているということです。

まず、専門業務型裁量労働制に関してですが、研究者、システムエンジニア、証券アナリスト、弁護士など、法令で定められた19の職種に限り対象となります。
次に、企画業務型裁量労働制に関しましても、本社の経営企画室といったような会社全体の経営に直結した部署などに適用範囲は限られています。
上記の職種に当てはまらないにも関わらず、裁量労働制が適用されている場合には不適切な形で裁量労働制が運用されている可能性が高いと言うことができます。
とくに誤りが多いのが営業職で、「企画営業」や「提案営業」というような名前がついている職種であっても、現行法においては裁量労働制の対象にはなりませんのでご注意ください。

2.適用可能な職種であっても「実態」の確認が必要

第2のポイントは、裁量労働性が適用可能な職種に該当していたとしても、それだけで必ずしも裁量労働制の対象になるわけではないことにも注意が必要です。
たとえば、弁護士は専門業務型裁量労働制の対象になる職種ですが、全ての弁護士に裁量労働制を適用して良い訳ではありません
裁量労働制を適用するためには、実態として、業務の進め方などが大幅に当該労働者に委ねられていることが必要です。
すなわち、先輩弁護士の指示を逐一受けながら、アシスタントを行っているような新人弁護士にまで裁量労働制を適用してはならないのです。
また、弁護士業務とは全く関係のない職務を行っている人が、たまたま弁護士の資格を持っていたというような場合も、裁量労働制の対象にはなりません。

3.割増賃金を支払わなくてよいわけではない

第3のポイントは、裁量労働制が適用されたからといって、会社が一切の割増賃金の支払義務を免れるという訳ではないということにも注意をして下さい。
裁量労働制は、「1日8時間とみなす」ことで労使の合意が取れていれば、確かに時間外の割増賃金は発生しません。
しかし、裁量労働制であっても、深夜割増賃金や休日出勤手当は発生するのです。
また、労使の合意が1日10時間であった場合には、1労働日につき、2時間分の割増賃金が発生していることになりますので、たとえば、ある月の実労働日数が20日であった場合には、2時間×20日=40時間分の時間外労働に対する割増賃金が発生しているという扱いになります。

4.裁量労働制ならば残業命令はできない

第4のポイントは、裁量労働制で働いている労働者に対して、会社は残業命令等を出すことはできないということです。
裁量労働制は、仕事の進め方や時間配分を労働者の判断に委ねることが大前提ですので、会社は「今日は残業していって、もう少し仕事を進めなさい」というようなことを言うことができません。
同様に「会議があるので、明日は必ず10時までに出社しなさい」というような、出社時間を指定することも不可能です。
実務上は労使の信頼関係に基づいて「業務命令」ではなく「お願い」という形で出社時間や残業を行うかどうかの調整が行われることがありますが、いずれにしても会社は裁量労働制の労働者に対して勤務時間に関する業務命令を出すことができず、給与計算においても、会社が望んだ時間に出社しなかったから遅刻控除を行うということもできません。
裁量労働制を適用されているにも関わらず、会社から残業を命じられたり、所定の始業時刻に遅れた日に減給をされたりしたというような場合は、誤った裁量労働制が適用されていると考えて、ほぼ間違いないと思います。

5.そもそも労使協定が結ばれていないケースもある

第5のポイントですが、自社で裁量労働制が適用されているという場合、法的な手順を踏んだ書面が社内に残っているかを確認して下さい。
専門業務型裁量労働制に関しては、これに関する労使協定を締結し、所轄の労働基準監督署に届出て、はじめて合法的に行うことが可能になります。
企画業務型裁量労働制に関しても、使用者側代表者と労働者側代表者で「労使委員会」という会議体を形成して協議を行い、そこでの決議内容を所轄の労働基準監督署に届け出たうえで実施する必要があります。
裁量労働制が導入されているにもかかわらず、労使協定や決議内容を結んでいなかったとしたら、その裁量労働制は法的には無効ということになります。
労使のトラブルで万が一裁判になったような場合には、裁量労働制は否定され、実労働時間を基準として、未払い賃金の精算を行うということになりますので、十分にご注意ください。

細かな規定も確認し、適切に裁量労働制を執り行いましょう

裁量労働制は、正しく運用されなければ、働く人にとっては大きな不利益になりますし、会社側にとっても労働トラブルの火種となるリスク要因になってしまいます。
自社の裁量労働制が正しく運用されているか、是非チェックをしてみて下さい。

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