実施していますか?「雇入れ時教育」|雇用形態を問わず、すべての労働者に対して実施しなければなりません

御社では、新たに雇い入れた労働者に対する「雇入れ時教育」を実施しているでしょうか?しばしば、パート・アルバイトなど短時間労働者に対して実施していない事業場が見受けられますが、雇用形態の別に関わらず、すべての労働者に対して行わなければならないため、注意が必要です。

「雇入れ時教育」未実施に伴う労働安全衛生法第59条(安全衛生教育)違反の疑いで書類送検

2021年11月16日、建設工事業を営む会社と同社取締役が、労働安全衛生法第59条(安全衛生教育)違反の疑いで書類送検されました。同社では、2021年5月6日、アルバイト初日の労働者が工事現場の開口部から墜落し、負傷する労働災害が発生しましたが、被災労働者に対する雇入れ時教育を実施していなかったとのことです。

「雇入れ時教育」とは?教育すべき事項を確認

「雇入れ時教育」については「建設業や製造業等、危険が想定される業種で行われる安全衛生教育のこと」と誤解されていたり、雇入時の健康診断同様「常時雇用の労働者のみに行えば良いのではないか」と考えられていたりします。また、単に「雇入れ時教育のことを知らなかった」というケースも意外と多くあります。

こうした認識の誤りによって、新しく労働者を迎える際のステップから、雇入れ時教育がすっぽり抜け落ちてしまっている現場は少なくありません。

「雇入れ時教育」はすべての労働者に対して実施義務があります

雇入れ時教育の受講対象は、「新しく雇入れられたすべての労働者」です。業種や雇用区分の別を問いません。派遣労働者については、派遣元で雇入れ時教育を実施する義務があります

雇入れ時教育の実施に際し、記録の作成・保存に関わる法的な義務はありませんが、会社のリスク管理の一環として、実施記録は残しておくようにしましょう。

「雇入れ時教育」の内容は労働安全衛生法で定められています

雇入れ時教育で実施すべき教育内容は、労働安全衛生法に定められている以下の項目です

  1.  機械等、原材料等の危険性又は有害性及びこれらの取扱い方法に関すること
  2.  安全装置、有害物抑制装置又は保護具の性能及びこれらの取扱い方法に関すること
  3. 作業手順に関すること
  4. 作業開始時の点検に関すること
  5. 当該業務に関して発生するおそれのある疾病の原因及び予防に関すること
  6. 整理、整頓及び清潔の保持に関すること
  7. 事故時等における応急措置及び退避に関すること
  8. 前各号に掲げるもののほか、当該業務に関する安全又は衛生のために必要な事項

ただし、労働安全衛生法施行令第2条第3号に掲げる業種(以下「3号業種」)の事業場では、1~4の事項についての教育を省略し、5~8の事項に関わる教育を行えば良いことになっています。「3号業種」とは、労働安全衛生法施行令第2条に定める1号、2号以外の「その他の業種」を指します。

  • 1号:林業、鉱業、建設業、運送業及び清掃業
  • 2号:製造業(物の加工業を含む)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業及び機械修理業
  • 3号:その他の業種

「雇入れ時教育」の時間はどの程度?

雇入れ時教育の時間について、法律の定めはありません。労働者が従事する業務を十分考慮した上で、必要な教育が実施されるなら、教育時間数についてこだわる必要はないでしょう

「雇入れ時教育」の実施方法

雇入れ時教育は、各事業場で行うものだけでなく、民間の研修会社等が実施する講座によって行うことも可能です。集合形式の研修の他、事業場に講師を出張させて教育を行ってくれるタイプのもの、eラーニングによるもの等、様々な実施方法が想定されます。現場での対応が難しい場合でも、これらを活用できるので安心です。

事務職の「雇入れ時教育」、内容は?

建設業や製造業等、前述の1号、2号に該当する業種の雇入れ時教育に関しては、教育すべき事項が比較的明確です。研修会社の中には、業種に特化した教育プログラムを提供してくれるところも少なくありません。

一方で、3号業種に該当する事業場では、教育内容の検討に頭を悩ませるケースも多々あるでしょう。そんな時には、以下を参考に、各項目についての具体的な教育内容を検討しましょう

5 当該業務に関して発生するおそれのある疾病の原因及び予防に関すること
・デスクワークに伴う腰痛や眼精疲労対策
・ストレスマネジメント
6 整理、整頓及び清潔の保持に関すること。
・整理整頓の必要性、取り組み方のポイント
7 事故時等における応急措置及び退避に関すること。
・労災とは?
・職場の労働安全衛生体制
・地震などの緊急時の対応
・負傷時等の応急措置
・感染症対策

 
その他、会社の規則や職場のルール、業務パソコンの取扱いやSNSの使用について、タバコのマナー、ハラスメント対策等も想定されます。自社内で実施する際には、民間の研修会社のカリキュラムを参考にしながら、御社に必要な教育内容を検討するとスムーズでしょう。

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