ご存知ですか?労災保険休業補償給付の「受任者払い制度」

前号では、新型コロナウイルス感染症に伴う労災適用の判断と労災給付について解説しました。職場で新型コロナウイルスの感染がみられた場合、労基署の審査によって労災が認められる可能性がありますが、審査に時間を要する場合に備えて知っておきたいのが「受任者払い制度」です

労災保険休業補償給付の「受任者払い制度」とは?

労災保険の休業補償給付を受けるためには、労働者(実務上は会社)からの申請、その後の労基署による入念な審査を経る必要があります。請求~支給の期間の目安は1ヵ月以上とされていますが、案件によってはそれ以上の時間がかかることもあること、さらに申請自体、原則として休業の実績を受けて(長期にわたる場合は1ヵ月ごと)行うことになっていることに鑑みれば、実際の休業から支給までには相当の時間を要します。

労災保険休業補償の給付要件については後述しますが、原則として、病気やケガで仕事ができず、会社から賃金を受けていないことが求められます。被災労働者としては、たちまち生活が立ち行かなくなるといった状態に陥る可能性がありますが、「受任者払い制度」の活用によってこうした不利益を回避できます。

「受任者払い制度」の概要

受任者払い制度とは、会社が社員に対して休業補償給付相当額を立て替え払いし、後日、労災保険から支払われる休業補償給付を会社の口座に振り込まれるようにするための手続きです。受任者払い制度を活用することにより、被災労働者は休業補償給付の支給決定を待つことなく、受け取れるはずの給付を受けることができるため、安心して療養に専念できるようになります。ただし、万が一、労災として認定されなかった場合、労働者は立て替え払いを受けたお金を会社に返還しなければなりません。会社も労働者も、このあたりの手続きも想定された上で、受任者払い制度活用の可能性を考える必要があります。

受任者払い制度に関わる書類には以下が想定されますが、必要書類やフォーマットは都道府県によって異なりますので、確認の上、準備を進めましょう。

・ 受任者払依頼書(受任者払いに関する届出書)
・ 被災労働者からの委任状

受任者払依頼書は会社が受任者払いを希望する際に提出するもので、委任状は被災労働者本人が会社から立て替え払いを受けている旨等を記したものです。

被災労働者の生活を支える、労災保険「休業補償給付」

被災労働者の生活の安定のために受任者払い制度が適用される、労災保険「休業補償給付」とは、業務災害に起因する病気や怪我の療養のために、仕事ができない(出勤できない)日が4日以上となった場合に支給される給付のことです。通勤災害に起因する場合は、「休業給付」といいます。

労災保険の休業補償給付を受けるための要件は、以下の3つです。

✓ 負傷や疾病による療養のため
✓ 働くことができず
✓ 賃金の支払いを受けていない

これらすべてを満たす休業の4日目から休業補償給付(通勤災害の場合「休業給付」)と休業特別支援金の支給を受けられます。

○ 休業補償給付(休業給付)=(給付基礎日額の60%)×休業日数
○ 休業特別支給金=(給付基礎日額の20%)×休業日数
※「給付基礎日額」は、原則として発症日直前3ヵ月分の賃金を暦日数で割ったものです

ただし、業務災害の場合、休業3日目までの待機期間について会社は労働基準法に基づく休業補償(1日につき、平均賃金の60%以上)を支払う必要があります。待機期間は、連続、断続の別を問わず、実際に休業した日が通算して3日間あれば成立します。

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