2024年5月31日公布の改正育児・介護休業法|7つの改正点と施行時期を総まとめ

仕事と育児・介護の両立支援強化を目的とする改正育児・介護休業法が、2024年5月31日に公布されました。育児・介護休業法に関しては、たびたび改正が行われており、企業実務において特に注視すべき法令のひとつです。今回の改正の概要に関しては既に以前の記事で解説していますが、ポイントを改めて確認すると共に、それぞれの施行時期についても把握しておきましょう。

関連記事:『速報!2025年以降施行予定の改正育児・介護休業法

2024年5月31日公布 改正育児・介護休業法の概要

各改正点を確認する前に、まずは今回の改正の全体像を把握しておきましょう。育児関連では、図の通り、子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置が拡充されています。介護については下図に記載がありませんが、仕事と介護の両立支援に関わる取り組み(介護離職防止のための個別の周知・意向確認、雇用環境整備等の措置)が事業主の義務とされます。

出典:厚生労働省「令和6年改正法の概要

改正育児・介護休業法 7つの改正点を解説

全体像を把握したところで、それぞれの改正点を確認していきましょう。事業主の義務とされる項目が多くありますので、確実に対応できる様、準備を進める必要があります。

1. 柔軟な働き方を実現するための措置等の義務化 (施行日:公布後1年6ヶ月以内の政令で定める日)

① 3歳以上、小学校就学前の子を養育する労働者に関する柔軟な働き方を実現するための措置

  • 事業主は、「始業時刻等の変更」「テレワーク等(10日/月)」「保育施設の設置運営等」「新たな休暇の付与(10日/年)」「短時間勤務制度」の中から2以上の制度を選択して、フルタイムでの柔軟な働き方を実現するための措置する必要があります。措置を選択する際、労働者側から意見聴取の機会を設けることとされます。

② 事業主が選択した措置について、労働者に対する個別の周知・意向確認の措置

  • 労働者は、事業主が講じた措置の中から1つを選択して利用することができます。
  • 個別周知・意向確認の方法は、今後、省令により、面談や書面交付等とされる予定です。

2. 所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大(施行日:2025年4月1日)

現状、「3歳に満たない子を養育する労働者」が請求することによって認められる「所定外労働の制限(残業免除)」について、「小学校就学前の子を養育する労働者」が請求可能となります。

3. 子の看護休暇の制度拡充(施行日:2025年4月1日)

「子の看護休暇」が「子の看護等休暇」に名称変更され、以下の通り拡充されます。

4. 仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮 (施行日:公布後1年6ヶ月以内の政令で定める日)

妊娠・出産の申出時、及び子が3歳になる前に、労働者の仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮が事業主の義務となります。会社側が講ずべき配慮については、勤務時間帯・勤務地にかかる配置、業務量の調整、両立支援制度の利用期間等の見直し、労働条件の見直し等が考えられますが、今後、指針によって示される予定です。労働者への意向聴取の方法は、面談や書面の交付等が想定されます。

5. 育児休業取得状況の公表義務が300人超企業に拡大(施行日:2025年4月1日)

現状、従業員数1,000人超企業に公表が義務付けられている「育児休業等の取得状況の公表」が、従業員数300人超の企業にも義務付けられます。

参考:厚生労働省「男性の育児休業取得率等の公表について

6. 育児のためのテレワークの導入が努力義務化(施行日:2025年4月1日)

3歳に満たない子を養育する労働者がテレワークを選択できるように措置を講ずることが、事業主に努力義務化されます。併せて、3歳に満たない子を養育する労働者を対象に講じる短時間勤務について、労使協定により短時間勤務が困難な業務に従事する労働者を適用除外とする場合の代替措置に、「テレワーク」が追加されることも理解しておきましょう。

参考:厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし

7. 介護離職防止のための個別周知・意向確認、雇用環境整備等の措置義務化(施行日:2025年4月1日)

いざ労働者が介護の必要に直面した時、労使双方が仕事と介護の両立支援制度を十分に理解していない、もしくは制度を十分に活用できないことのよって、介護離職に至るケースは多々あります。このたびの改正では、介護離職防止を目的として、仕事と介護の両立支援制度の個別周知と意向確認、両立支援制度を利用しやすい雇用環境の整備に取り組むことを事業主に義務付けています。

  • 介護に直面した旨の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置(面談実施や書面交付による)
  • 介護に直面する前の早い段階(40歳等)での両立支援制度等に関する情報提供
  • 仕事と介護の両立支援制度を利用しやすい雇用環境の整備(研修、相談窓口の設置等)
  • 要介護状態の対象家族を介護する労働者がテレワークを選択できるよう事業主に努力義務
  • 介護休暇について、引き続き雇用された期間が6ヶ月未満の労働者を労使協定に基づき除外する仕組みを廃止

義務化された項目への対応を中心に、御社の両立支援体制を整備しましょう

今回の改正育児・介護休業法では、「労働者への個別周知・意向確認」や「環境整備」等、新たに事業主に義務付けられる項目がいくつかあります。また、「子の看護等休暇」のように、現行制度が拡充されるものもあります。改正の概要については会社側で正しく把握し、確実に対応しましょう。事業主が講ずべき措置の詳細など、今後、指針等で明らかにされる内容もありますので、引き続き、最新情報のご確認をお願いいたします。

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