セブンイレブンジャパンの残業手当未払い問題に学ぶ正しい残業代計算|計算ミスによる未払い金&遅延損害金支払を防ぐためには

未払残業代問題は、おそらくどの企業にとっても他人事とは言い難い労務課題のひとつと言えます。御社では、正しく残業代を算出し、支払うことができているでしょうか?
今号では、2019年12月10日に公表されたセブン-イレブン・ジャパンにおける残業手当未払問題を元に、残業代を計算する際に注意すべき「手当」の取扱いを復習しましょう。

セブンイレブンジャパンで問題となった、残業代計算時の「手当」の取扱い

このたびの公表で明らかになった給与計算上の問題点は、下記の2点です。

  • おそらく各手当制度創設~2001年9月まで、残業代算定の基礎となる賃金に精勤手当・職責手当(*)を含んでいなかった
  • 2001年10月~2019年11月まで、精勤手当・職責手当にかかる残業代計算式に誤りがあった

*精勤手当:休まずに出勤した場合などに支払われる手当
*職責手当:シフトリーダーなどの職務の責任に対して支払われる手当

セブン-イレブン・ジャパンでは、加盟店で働くアルバイトやパート従業員の給与計算や支払いを本部が代行しているとのこと。残業代計算に精勤・職責手当を含んでいない点については、2001年6月に労働基準監督署から是正勧告を受け、2001年10月以降、給与計算式を変更しています。

ところが、その計算式に誤りがあったまま今日に至ってしまったということがこのたび発覚しました。判明しているだけで、8129店舗、30405名の従業員が対象となり、支払不足金額は約4.9億円(遅延損害金1.1億円を含む)に上るとのことです。


出典:セブン-イレブン・ジャパン「店舗従業員様への給与支払い代行業務における「精勤手当」「職責手当」に対する残業手当の一部支払い不足について

ご存知ですか?残業代の計算式|未払い金支払を防ぐため今一度確認

ここまでお読みいただいた皆さんの中には、「手当にも残業代が付くの?」と驚かれる方もいらっしゃるかもしれません。結論から言えば、一部の手当を除き、残業代計算時の基礎賃金に手当も算入しなければなりません

残業代 = 1時間あたりの基礎賃金 × 残業時間 × 割増率

月給制の場合、「1時間当たりの基礎賃金」に関する考え方が分かりにくいですが、別記事にて解説していますのでご一読ください。

【参考記事】打刻ファースト「本当に合ってますか?その残業代(割増賃金)_正しく計算するための5か条(月給編)

残業代計算に含めるべき手当とは?

「基礎賃金」というと、つい「=基本給(時給)」と勘違いしがちですが、そうではありません。各種手当が支給されている場合には、基礎賃金に含めるべきものとそうでないものを正しく判別し、残業代計算に反映させる必要があります。

残業代算定の基礎となる賃金から除外できるものとして、労働基準法は、下記の手当を限定列挙しています。

・家族手当
・通勤手当
・別居手当
・子女教育手当
・住宅手当
・臨時に支払われた賃金
・1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金

ただし、上記の名称であっても実態からみて除外できない手当もあります。例えば、

・扶養人数に関係なく一律に支給される家族手当
・住宅の形態ごとに一律に支給される住宅手当

など、個別の事情に関係なく一律に支給されているものは、割増賃金算定時の基礎賃金に含めるべき可能性が高くなります。

出典:厚生労働省「割増賃金の基礎となる賃金とは?

手当を含めた残業代計算の注意点をチェック

セブン-イレブン・ジャパンの事例では、時給勤務者について、精勤手当と職責手当に対応する残業手当の計算式に使用する割増率に誤りがあったとのこと。確かに給与計算上、誤りやすいポイントですので、詳しく見ていきましょう。

出典:セブン-イレブン・ジャパン「店舗従業員様への給与支払い代行業務における「精勤手当」「職責手当」に対する残業手当の一部支払い不足について

月3000円の精勤手当+職責手当は、月所定労働時間100時間に対応する月額です。
よって、

  • ①「1時間あたりの手当額(3000円÷100時間)」を算出し、
  • ②法定残業時間10時間分について本来の手当額({3000円÷100時間}×10時間)と、
  • ③割増賃金分({3000円÷100時間}×0.25×10時間)を支給するべき

でした。今回の問題では、上記②が抜け落ちていたことになります。
ちなみに、基本給については「時給×110時間」で計算されており、10時間分がすでに含まれているため、図中「残業代①」で「×0.25」となっていて問題はありません。

御社では、適正に残業代計算ができているでしょうか?折をみて見直されてみると良いかもしれません。もちろん、給与計算上の誤りを生じさせないためには、適正な勤怠管理が大原則となります。クラウド勤怠管理システムIEYASUなら、各種給与計算システムへの連携も安心です!

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