フレックスタイム制における60時間超過時間の取り扱いは?

近年様々な働き方への対応を求められるようになり、さらにコロナ禍でテレワークが徐々に浸透してきたということもあり、フレックスタイム制の導入を検討する企業が増えてきているのではないか思います。

そこで今号では、清算期間が1か月を超えるフレックスタイム制において、「60時間を超える時間外労働の割増賃金」はどのように取り扱うべきなのかということにスポットをあてて解説していきたいと思います。なお清算期間は3か月、1日の標準労働時間は8時間の場合を想定して解説をしていきます。

フレックスタイム制における60時間超過時間外勤務の割増

清算期間が1か月を超えるフレックスタイム制においての「60時間を超える時間外労働の割増賃金」の取り扱いについてですが、1か月単位での「時間外労働時間」が60時間を超過した場合に1.50割増の対象となります

フレックスタイム制の「時間外労働時間」とは、1か月単位で1.25の割り増し対象となる時間になります。3か月の精算期間の初月であっても週平均50時間以上の時間が月間60時間を超過した場合、または3か月経過後に結果的に1.25割増しとなる時間外労働時間が60時間を超過した時間が対象となります。

なお、働き方改革関連法によって、以下手順で算出した時間外労働時間に対して、上限規制が適用されます。このことにより、1か月単位では45時間未満の時間外労働の場合にも、3か月単位のフレックス制によって3か月での合計の時間外労働+法定休日労働が100時間を超えるケースなどでは、上限規制の対象となりますのでご注意ください。

清算期間が1か月を超えるフレックスタイム制の時間外労働の計算手順

清算期間を通じて、法定労働時間の総枠を超えて労働した時間が時間外労働としてカウントされます
清算期間が1か月を超えるフレックスタイム制における時間外労働の計算手順は以下のとおりです。

■最終月以外
(ⅰ)その月の実労働時間が週平均50時間を超過しているか?
→超過 (実労働時間>週平均50時間) →(A)超過時間をその月の時間外労働としてカウント

■最終月
(ⅰ)最終月の実労働時間が週平均50時間を超過しているか?
→超過 (実労働時間>週平均50時間) →(B)超過時間を時間外労働としてカウント
(ⅱ)[清算期間を通じた総実労働時間-(A+B)]が清算期間における総労働時間を超過しているか?
→超過(総実労働時間-(A+B)>清算期間における総労働時間) →(C)超過時間を時間外労働としてカウント
(ⅲ)(B)+(C)の合計時間を、最終月の時間外労働としてカウント

休日労働を行った場合の計算方法

休日労働(1週間に1日の法定休日に労働すること)を行った場合には、休日労働の時間は、清算期間における総労働時間や時間外労働とは別個のものとして取り扱われます。従って、法定休日に労働した時間は全て休日労働としてカウントし、休日労働以外の時間について、上記の手順で時間外労働を算出します。

フレックスタイム制のメリット・デメリットを理解して導入の検討を

フレックスタイム制は、「自分の都合で自由に勤務時間を選択することで成果につながりやすい職種」で導入すれば、自らの成果を上げたり、ワークライフバランスを取るために有効な手段です。

一方でコアタイムの活用で組織としてのつながりを維持することができますが、それでも働く時間帯がバラバラの状況はマネジメントに支障をきたす可能性をはらんでいます。担当者の出社時間がまちまちなため、迅速な対応ができず、顧客からのクレームにつながりかねません。また、時間外労働を削減する目的があった場合、カウントの方法が通常と異なるためにかえって増えてしまうこともあります。

自社にとってのデメリットも考慮したうえで、導入を検討してみてはいかがでしょうか。

困ったら専門家に相談することを検討

労務関係や助成金のことで、困ったことや具体的に聞きたいことがあれば社会保険労務士に相談してみるのも一つの方法です。

もしお困りのことがございましたらこちらをクリックし、どんな小さなことでもお気軽にお問い合わせください。

LINEで送る

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事