【新型コロナウイルス】特例措置が講じられた「雇用調整助成金」とは?

新型コロナウイルスの感染拡大による影響が、企業経営に影を落とし始めています。こうした事態を受け、政府は既存の「雇用調整助成金」に特例を設け、幅広く活用できる様、制度の見直しを行いました。さっそく制度概要を確認しましょう。

ご存知ですか?雇用調整助成金

ところで、この記事をお読みいただいている皆さんの中には、新型コロナウイルス関連の報道の中で初めて、「雇用調整助成金」を知った方も多いのではないでしょうか?特例措置の内容に関わる説明に移る前に、まずは「雇用調整助成金とは?」の部分を解説しておくことにしましょう。

雇用調整助成金とは、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、労働者に対して一時的に休業、教育訓練又は出向を行い、労働者の雇用の維持を図った場合に、休業手当、賃金等の一部を助成する制度を指します。

「経済上の理由」とは?

ここでいう「経済上の理由」とは、概ね下記の事例に起因することとされています。

  • 景気の変動
  • 産業構造の変化
  • 地域経済の衰退
  • 競合する製品・サービス(輸入を含む)の出現
  • 消費者物価、外国為替その他の価格の変動等の経済事情の変化

 
ガイドラインでは、下記の事由による事業縮小・停止は対象外としています。

  • 季節的変動によるもの
  • 事故または災害により施設または設備が被害を受けたことによるもの
  • 法令違反もしくは不法行為またはそれらの疑いによる行政処分または司法処分によって事業活動の全部または一部の停止を命じられたことによるもの

「事業活動の縮小」とは?

「経済上の理由」のキーワードと併せて確認しておきたいのが、「事業活動の縮小」の定義です。こちらも、ガイドラインでは明確な基準が示されています。

  1. 売上高または生産量などの事業活動を示す指標の最近3ヵ月間の月平均値が、前年同期に比べ10%以上減少していること
  2. 雇用保険被保険者数および受け入れている派遣労働者数の最近3ヵ月間の月平均値が、前年同期と比べ、中小企業の場合は10%を超えてかつ4人以上、中小企業以外の場合は5%を超えてかつ6人以上増加していないこと

雇用調整金の支給額

前述の「経済上の理由」により「事業活動の縮小」を余儀なくされた場合、事業主は労働者の雇用維持が困難となります。雇用調整助成金とは、このような状況下においても単に「解雇」の選択肢によらず、休業や教育訓練、出向の方法により労働者の失業の予防や雇用の安定を図る事業主に対し、負担額の一部を助成する制度です。

※中小企業とは、下記に該当する企業を指します
小売業(飲食店を含む):資本金5,000万円以下又は従業員 50人以下
サービス業:資本金5,000万円以下又は従業員100人以下
卸売業:資本金1億円以下又は従業員100人以下
その他の業種:資本金3億円以下又は従業員300人以下

その他、雇用調整助成金の制度詳細については、下記よりご確認いただけます。

参考:厚生労働省「雇用調整助成金ガイドブック」

新型コロナウイルスの影響で講じられた、雇用調整助成金の特例措置とは?

前項では、従来の雇用調整助成金の概要をご紹介しました。新型コロナウイルスが蔓延し、多くの企業が影響を受ける中、雇用調整助成金はどのような形で使いやすくなったのでしょうか?

リーフレットを見る限り、「事業活動の縮小」に関わる部分が従来よりも緩和され、より幅広い対象がこの助成金を活用できるようになりました。

出典:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ雇用調整助成金の特例対象を拡大します」

この特例措置の対象となるのは、「新型コロナウイルス感染症の影響を受ける事業主」です。
2020年2月14日時点では、対象を「日本・中国間の人の往来の急減により影響を受ける事業主であって、中国(人)関係の売上高や客数、件数が全売上高等の一定割合(10%)以上である事業主」とされた上で特例措置が講じられていましたが、事態の深刻化を受け、その後さらに拡大されました。

新たに対象となったのは、直接的に中国と関連がなくとも、例えば

  • 取引先の事業縮小を受けての受注減
  • 市民活動の自粛要請の影響による客数減
  • 風評被害による客数減


を受けて事業縮小となった事業主です。

雇用調整助成金の申請をご検討中なら、社会保険労務士へご相談を

雇用調整助成金の支給を受けるためには、あらかじめ雇用調整に係る労使協定を締結する、労働局に休業等や出向に係る計画届を提出する、一定期間ごとに申請を行うといった手続きを経る必要があります。助成金申請は、期限や手順の遵守が鉄則ですから、間違いなく受給を目指すためには社会保険労務士へのご依頼が得策といえます。

労務相談窓口はこちら

「雇用関係助成金に共通の要件」に注意

当然のことながら、雇用調整助成金が雇用関係助成金のひとつであることを鑑みれば、リーフレットの要件に加え、「各雇用関係助成金に共通の要件」を満たさなければなりません。
ここでは、多岐に渡る要件の一部を紹介しておきます。

  • 雇用保険適用事業所の事業主であること
  • 支給のための審査に協力すること
    1. 支給または不支給の決定のための審査に必要な書類等を整備・保管していること
    2. 支給または不支給の決定のための審査に必要な書類等の提出を、管轄労働局等から求められた場合に応じること
    3. 管轄労働局等の実地調査を受け入れることなど
  • 申請期間内に申請を行うこと
  • 支給申請日の属する年度の前年度より前のいずれかの保険年度の労働保険料を納入していること(支給申請日の翌日から起算して2ヵ月以内に納付した場合はOK)
  • 支給申請日の前日から起算して1年前の日から支給申請日の前日までの間に、労働関係法令の違反がないこと


参考:厚生労働省「雇用関係助成金に共通の要件等」

労務管理は万全ですか?

現場おいては、「労働関係法令の違反がないこと」がネックとなって、申請に至ることのできないケースを散見します。ひと口に「労働関係法令」といっても様々な要件が想定されますが、法定帳簿の整備や法に合った形での労働時間把握、適切な賃金支払など、細かく確認していくことでどんな企業においても不安要素が出てくるものです。

今号で解説した雇用調整助成金の申請書類を確認すると、

  • 各対象労働者の労働日・休日及び休業・教育訓練等の実績確認として「出勤簿」
  • 休業手当等の支払実績と併せて、休業・教育訓練が行われていなかった時の所定外労働等の時間数とその時間に対応した賃金(時間外等割増賃金を含む)の実績が確認できる、次の要件を満たす「賃金台帳(判定基礎期間を含め前4ヵ月分)」等の資料提出が求められており、基本的な労務管理の実態がしっかり確認されるようになっています。

雇用関係助成金の申請に一歩近づくために、まずは「勤怠管理の徹底」を

このたびの新型コロナウイルスの影響により、事業縮小を余儀なくされた事業主様の中には、「日頃の労務管理を疎かにしてきたために、必要な助成金を申請できない」といった例は決して少なくないと思います。
こうした場合、まずは社会保険労務士と共に実際の申請可否や必要な対応を検討していく他、少しずつでも将来に向けて労務管理体制を是正していくことが不可欠です。とりわけ就労状況の把握や給与計算に深く関わる「勤怠管理」は、労務管理の要となる要素ですから、まず見直しが必要といえるでしょう。

クラウド勤怠管理システムIEYASUの導入で、政府のガイドラインを満たす、適正な労働時間把握を実践しませんか?

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