11月は過労死等防止啓発月間|過重労働解消に加え、メンタルヘルス対策の強化を

過労死等防止対策推進法に基づき、厚生労働省は毎年11月を「過労死等防止啓発月間」と定めて過重労働解消、過労死等の防止に向けた様々な取り組みを行っています。これから年末にかけて繁忙期を迎える現場も多いと思いますが、今一度、過重労働や過労死等を生じさせないための取り組みに目を向けましょう。

過重労働解消キャンペーンを契機に、現場で取り組むべきことを知る

現状、「過労死なんてうちの会社には無縁」とお考えの方も少なくないでしょうが、ここ数年、報道等で「過労死」に触れる機会は確実に増えている様に思います。2019年以降、本格的に動き出した働き方改革を追い風に、働く人の就労環境は改善されつつあります。それでも、一部の現場では未だに旧態依然が貫かれていたり、コロナをきっかけにこれまでにはなかった課題が生じていたりと、過重労働やこれに起因する過労死等が未だ大幅に減少することはありません。まずは企業側が過重労働や過労死等への理解、関心を高め、現場における防止策を検討・実施していく必要があります。

「過重労働」「過労死等」とは?

既に冒頭から「過重労働」「過労死等」のキーワードが登場していますが、今一度、それぞれの定義を復習しておきましょう。
「過重労働」とは、長時間に及ぶ時間外・休日労働や連続勤務、身体的負荷を伴う業務への従事により、労働者の身体・精神に大きな負荷がかかる働き方を指します。長時間労働については、いわゆる過労死ラインとして「月100時間超」「2~6ヵ月平均で月80時間」の時間外・休日労働の目安が示され、労災認定時に重視されています。ただしこの点、2021年9月15日より運用開始となった新たな過労死認定基準では、時間外・休日労働の時間数だけでなく、「労働時間以外の業務の負荷要因(休日のない連続勤務、勤務間インターバルが短い勤務、身体的負荷を伴う業務等)」についても総合的に評価することとしました。
また、「過労死等」とは、業務における過重な負荷による脳血管疾患又は心臓疾患を原因とする死亡、もしくは業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡又はこれらの脳血管疾患、心臓疾患、精神障害をいいます

関連記事:『2021年9月15日運用開始!20年ぶりの改正となる過労死認定基準

過重労働解消キャンペーン期間中、重点監督が強化されます

毎年11月に実施されている過重労働解消キャンペーンでは、長時間労働の削減等の過重労働解消に向けた取り組みを推進するため、様々な周知・啓発等の取り組みが行われています。具体的には、都道府県における「過労死等防止対策推進シンポジウム」の実施、特別労働相談受付窓口の設定、過重労働解消のためのセミナー開催等が挙げられ、現に過重労働に苦しむ労働者やこれから過重労働解消に向けた取り組みを行っていこうとする使用者には積極的な活用が望まれます。
ただし、企業側として留意すべきは、キャンペーン期間中、長時間労働が行われていると考えられる事業場等に対して重点的な監督指導が行われることです。重点監督は、主にこれまでに過重労働による過労死等に関する労災請求のあった事業場、労働者から労働局などに相談のあった事業場が対象となります

参考:厚生労働省「11月は「過労死等防止啓発月間」です

過重労働対策と共に取り組むべき、労働者のメンタルヘルス対策

過労死等の防止を考える上では、過重労働による健康障害防止対策と併せて、メンタルヘルス対策にも取り組んでいく必要があります。2021年度中に行われた東京労働局管18労働基準監督署における過労死等(脳・心臓疾患及び精神障害事案)に係る労災請求・認定件数の取りまとめによると、労災補償の認定において精神障害事案の件数が増加傾向にあることが分かります。

参考:東京労働局「令和3年度における過労死等の労災補償状況(東京労働局分)について

小規模事業場における「ラインによるケア」の重要性

労働者のメンタルヘルス対策の重要性は分かっていても、実際にどんなことをするのが良いのか、頭を悩ませる方も多いのではないでしょうか?改正労働安全衛生法に基づきストレスチェック実施義務の対象となった従業員数50名以上規模の会社では、実施者である医師や保健師と共に対策ができるかと思います。一方で、ストレスチェックの実施が努力義務となっている従業員数50名未満の小規模事業場においては、なかなか取り組みが進まないケースがほとんどのようです。
小規模事業場におけるメンタルヘルス対策としてお勧めしたいのが、「セルフケア」、「ラインによるケア」を中心とした取り組みです。セルフケアでは、厚労省が公開する「簡易版ストレスセルフチェック」等を活用して個々にストレスの状況を認識してもらい、各人で(必要に応じて会社と連携しながら)解消に努めていただく方法が考えられます。併せて、「ラインによるケア」として、管理職が主体となって労働者の心の状況や言動の異変に注視し、状況改善に向けて積極的に取り組んでいけるのが理想的です。「ラインによるケア」については以下の参考資料16ページ以降で解説されていますので、ご確認ください。

参考:厚生労働省「労働者の心の健康保持増進のための指針

小規模事業場のメンタルヘルス対策に、外部資源の積極活用を

小規模事業場では、メンタルヘルス対策を中心となって担う産業医や保健スタッフの確保が困難なケースもあるかもしれません。その場合、衛生推進者または安全衛生推進者を事業場内メンタルヘルス推進担当者として選任するとともに、都道府県産業保健総合支援センター等の事業場外資源による支援等を積極的に活用しながら進めていけると良いでしょう。

参考:独立行政法人労働者健康安全機構 東京産業保健総合支援センター「産業保健活動に携わる皆様を応援します

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