このたびの働き方改革において「労働時間の上限規制」の導入が予定される等、昨今、恒常化する長時間労働が社会的に問題視されています。こうした中、厚生労働省より平成28年4月から平成29年3月までの「長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導の結果」が公表されました。さっそく、内容を確認しましょう。
目次
最も多い法令違反は「違法な時間外・休日労働」
今回の監督指導結果によると、平成28年4月から平成29年3月までの間に監督指導が実施された事業場数は23,915、そのうち15,790事業場で労働基準関係法令違反が認められたとのことです。つまり、全体のおよそ66%の事業場において何らかの違反があったことになります。
主な違反内容とその件数は、下記の通りです。
- 違法な時間外・休日労働・・・・・・・・・・10,272 事業場
- 賃金不払残業・・・・・・・・・・・・・・・1,478 事業場
- 過重労働による健康障害防止措置の未実施・・2,355 事業場
上記のうち、特に件数の多かった「違法な時間外・休日労働」の項目について、「時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数」が下記の通りまとめられています。
- 月 80時間を超えるもの: 7,890事業場(76.8%)
- うち、月100時間を超えるもの: 5,559事業場(54.1%)
- うち、月150時間を超えるもの: 1,168事業場(11.4%)
- うち、月200時間を超えるもの: 236事業場( 2.3%)
参照:厚生労働省 「長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導結果を公表します」
このように、
- 「違法な時間外・休日労働」は監督指導対象となった23,915事業場のおよそ43%に上ること
- さらに、このうち大半の事業場において、時間外・休日労働の時間数が“過労死ライン”といわれる月80時間を超える労働者が存在すること
から、今回の働き方改革の目玉として「労働時間の上限規制」が盛り込まれた背景を見てとることができるのではないでしょうか。
加えて、別添の資料では、業種別データも公表されていますのでご確認ください。
参照:厚生労働省
「【別添1】 平成28年4月から平成29年3月までに実施した監督指導結果(PDF:300KB)」
監督指導の実施事業場のおよそ10%が「労働時間の把握が不適正」
その他、注目すべきは「労働時間の適正な把握に係る指導」の項目です。データによると、監督指導を実施した23,915事業場のうち2,963 事業場について、「労働時間の把握が不適正」として指導対象となったとのこと。この数は、全体のおよそ10%に及びます。
既出の資料【別添1】によると、主な指導内容は下記の通りです。
- 始業・終業時刻の確認・記録 ・・・・・・・・・・・1,661事業場
- 自己申告制による場合 自己申告制の説明 ・・・・・ 467事業場
- 自己申告制による場合 実態調査の実施 ・・・・・・1,277事業場
- 自己申告制による場合 適正な申告の阻害要因の排除・・213事業場
企業においては、適切な勤怠管理の徹底実施が求められます。
自己申告制による勤怠管理は、今後是正の対象に。適切な方法に移行すべきです
ところで、前項の「労働時間の適正な把握に係る指導内容」では、「自己申告制による場合」と前置きされた指導内容が目立ちます。それもそのはずで、今回、監督指導を実施した 23,915 事業場のうち、8,880 事業場で「自己申告制」による労働時間の管理がされていることが判明しました。
自己申告制による勤怠管理では、記録と実態が乖離する等、不適切な運用が横行しやすいというデメリットがあります。また、2017年秋に予定されている安全衛生法施行規則の改正では、勤怠管理について「客観的かつ適切な方法で行われなければならない」旨が明記される見通しとなっています。よって今後、自己申告制による勤怠管理は是正対象となる可能性が極めて高いと言えます。
まとめ_いまあなたがすべきこと
御社における勤怠管理は、どのように行われているでしょうか?現状、自己申告制による方法が取られているとするならば、直ちに見直しが必要です。
厚生労働省では2017年5月より、労働基準関係法に違反し1年以内に書類送検された企業をホームページ上で公開し始める等、法違反を犯した企業に対する取り締まりの強化に乗り出しています。
「監督指導が入るのは大企業ばかりだろう」と考えるのは誤りです。今回公表された結果からは、労働者数1~9名規模の企業から監督が実施されていることが明らかになっています。御社にとっても、決して“他人事”とは言えないのです。
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