「アンコンシャスバイアス」とは?労務管理上気を付けたい「無意識の偏見」を取り除く

人は誰でも、自分なりの価値基準や物事に対する捉え方を持っていますが、これを内心に留めず、周囲に押し付けるようになれば途端にあらゆる関係において悪影響をもたらすようになります。近年、企業において問題視される「アンコンシャスバイアス」とはまさにこうした「無意識の偏見」であり、職場風土や人間関係の悪化を引き起こす原因ともなると言われています。今号では、事業主様や人事労務ご担当者様が正しく理解しておくべき、職場における「アンコンシャスバイアス」の具体例と対処法を解説しましょう。

実はいたる所に潜んでいる!アンコンシャスバイアスの具体例

「アンコンシャスバイアス」というとなかなかイメージしにくいかもしれませんが、実際には職場のコミュニケーションにおいてあらゆる場面で見受けられます。

身近なアンコンシャスバイアスを知る

例えば、性別や世代、学歴等で相手をイメージする、性別によって任せる仕事や役割を決める等の取扱いに心当たりはないでしょうか?また、男性の育休取得率向上が目指される時代においてはだいぶ改善されてきたものの、いざ男性社員から育休申請が出されると直感的に違和感を覚えてしまうという人事ご担当者様も少なくないようです。同じく育休関連でいえば、妊娠中や育休明けの女性社員に対する配慮のつもりで配置変更を打診したものの、当の女性社員本人からは不利益取扱いと捉えられてしまうといった事例もあります。

アンコンシャスバイアスが職場にもたらす悪影響

もちろん、人間ですから誰しも、各人の経験則に基づく物事の捉え方を持ち合わせているのが当たり前です。しかしながら、ご自身のアンコンシャスバイアスを自覚しないでいることで、知らず知らずのうちに、意図せずあらゆる悪影響を生じさせている可能性があるため、注意が必要です。
職場においては、冒頭で挙げた職場風土や人間関係の悪化の他、ハラスメントやコンプライアンス違反につながる、イノベーションを妨げとなる等の弊害が考えられます。また、周囲の人に対するアンコンシャスバイアスによって、相手のモチベーション低下や不適切な人事評価が生じる他、職場におけるご自身の評判の低下や成長機会の逸失にもつながりかねません

職場におけるアンコンシャスバイアスへの対処法

アンコンシャスバイアスは、ある種その人の思考のクセのようなものなので、簡単に取り除くことはできません。しかしながら、アンコンシャスバイアスに気が付き、それにとらわれないよう気を付ける努力をすることが肝心です。

職場において、決めつけや押しつけをしない

例えば会議中、誰かの意見に対して「普通は〇〇だ」「~はこうあるべきだ」「その方法では無理だ」等の決めつけや押しつけが頭によぎったら、それはアンコンシャスバイアスの可能性が高いので注意しましょう。こうした考えを発信する際、頭ごなしに決めつけたり押し付けたりするのではなく、客観的な理由と共に、ご自身の考えを伝えるようにします。ご自身とは違った考えに触れた時には、まず対話をすること、相手を尊重する心の姿勢を持つことが肝心です。

相手の表情や態度の変化に敏感になる

やり取りの後、相手はどのような表情や態度をしているでしょうか。急に表情が曇ったり、声のトーンが変わったり等は、悪い方向への心境の変化を表すサインです。ご自身の直近の発言にアンコンシャスバイアスが潜んでいなかったかを振り返り、必要なフォローを講じる必要があります。

ご自身の思考のクセを理解する

アンコンシャスバイアスは、文字通り、無意識のうちに生じていることがほとんどです。ご自身で意識的に修正していかなければ、何度でも繰り返してしまう可能性があります。そこでお勧めしたいのが、アンコンシャスバイアスだと疑われる言動や状況、反応、考えたことをメモに取り、折を見て振り返ることです。

  • 自分の言動に対しての相手の表情や態度の変化:自分の発言の後に相手が黙り込んでしまった
  • 誰かの言葉に対する自分の心境の変化:こういわれてむっとした、違和感があった等
  • 仕事上一歩踏み出せない状況とその原因等:「無理に決まっている」と考えるが、思い込みではないか

このような地道な取り組みの積み重ねが、アンコンシャスバイアスに影響を受けないために有効な手立てとなります。

事業主様、人事労務ご担当者様から率先して意識改革を

人間の脳は、無意識のうちに自分にとって都合のよい解釈をしようと機能するもの。そのために、自分とは異なる考え方や価値観に接した際に、どうしても自己防衛心が働き、決めつけや押しつけをしがちになるようです。
今号で解説した通り、アンコンシャスバイアスは、組織や人間関係に悪影響をもたらす原因となります。まずは事業主様や人事労務ご担当者様等、日々従業員管理に携わる立場の皆さんから、ご自身のアンコンシャスバイアスを正しく理解・コントロールし、働きやすい職場作りを進めていく必要があるのではないでしょうか。

関連:日本労働組合総連合会「気づこう、アンコンシャス・バイアス~真の多様性ある職場を~

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