社員への療養補償を軽減する「打切補償」という仕組み、条件とは?

業務上の理由でもし大きな怪我をしてしまったら・・・。そんな時、会社には従業員への補償責任が課せられます。従業員がしっかり現場に復帰できるように会社がそれをサポートするのですが、やはりそれは会社にとっては負担です。その負担を軽減するためにある「打切補償」という仕組みについて、解説します。

3年以上の病気療養には「打切補償」が許される

『業務で荷物を運搬中に交通事故にあってしまった。危ない薬品を取り扱う現場で事故が発生してしまった。』

もしそんなことが起こってしまった時、会社は従業員が全治するまでに必要な療養補償をする責任が生まれます。給付などは労災保険等から支払うことができますが、従業員の解雇はできません。簡単に治る病気やケガであればそれほど大きな負担にはなりませんが、数年単位など、長く治療が続くとなるとその補償負担は大きなものとなるでしょう。
そこで労働基準法では、療養補償期間が3年を超えると、打切補償を支払うことで補償責任を免れることが許されています。

平均賃金の1200日分を支払うことでも「打切補償」が行える

建設現場や製造業など業務上の危険を特に注意すべきところでは、常に労働災害が発生しないような取り組みが行われています。しかし危険といわれる作業場では、それでもやはり一定の労働災害が発生してしまうのです。そしてそれによって治療や療養が必要になる従業員も決してゼロにはできません。上述したように、やはりそうなってしまった場合には全治するまで会社に補償責任が生まれます。3年の経過を待つ以外にも、1200日分の給与を支払うことでも、それを「打切補償」とすることができるようになっています。

労災で傷病補償年金を受けることで打切補償を認められる

会社に入社する際には、社員には様々な社会保険への加入が義務つけられます。健康保険や厚生年金保険、雇用保険などです。そのうちの一つに労災保険というものがあります。労災保険は使用者側が全額を負担して加入する仕組みとなっていて、業務上や通勤上の理由で病気やけがをしたときには、労災保険から給付を支払うことができるのです。業務上の災害が発生した時に会社が負担する補償については、労災保険からの給付がその役割の一部を担ってくれます。療養開始後3年間、傷病補償年金が支払われているのなら、もちろん労災を使っていた場合でも打切補償を支払ったものとみなされます

打切補償を支払うことで、解雇制限も解除される

会社側が従業員を使用するときは、必ず就業規則に基づいた解雇としなければいけません。業務上の理由で療養などを行っている最中や、療養終了以後30日の解雇は規則上では認められていません。しかし、打切補償を支払うことで補償責任がなくなるだけでなく、解雇に係る制限も解除されるので、解雇の判断も行えるものとなります。

従業員に一定の補償をもたせた上で、会社の負担も減らすために、このような制度があります。
使うか使わないかは会社の判断と状況によって変わってくるでしょう。しかし、従業員側のあなたも、会社を動かす立場のあなたも、こういった制度があることは認識しておきましょう。

LINEで送る

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事