結婚して改姓したら健康保険被保険者証の氏名変更は必要?注目される旧姓併記の手続き方法も解説

新しい年を迎え、今年も芸能界から数多くの結婚報告が報道されましたね。一方で、芸能人でなくても、新年早々に入籍を済まされた方もいらっしゃるかもしれません。ところで、夫婦別姓が認められていない日本では、結婚(または離婚)には「改姓」がつきものです。今号では、従業員の姓が変更された際の社会保険上の氏名変更の流れ、さらには近年注目される「旧姓併記」「通称名記載」の手続き方法について解説しましょう。

マイナンバー届出済みなら氏名変更届は不要

結婚または離婚による改姓に伴う氏名変更届は、現在では原則不要となっています。というのも、社会保険関係の諸手続き上、被保険者はマイナンバーを届け出ることになっているためです。日本年金機構は、マイナンバーを活用して地方公共団体システム機構(J-LIS)に変更情報の照会を行っており、協会けんぽに情報提供を行っています。これにより、改めて氏名変更の手続きをすることなく、変更後の氏名が記載された保険証が交付されるようになりました。新しい保険証が届き次第、古い保険証を返却します。ちなみに、住所変更についても氏名変更同様、現在では原則不要となっています。
ただし、被扶養者については氏名変更の届出省略は行われないため、従来同様に被扶養者異動届により変更の届出を行うことになります。

健康保険被保険者証の「旧姓併記」「通称名記載」とは?

ところで最近では、多様な性自認に伴う通称名使用、婚姻後の旧姓使用等、職場においてはあらゆる従業員対応が求められる様になっています。通称名や旧姓の取扱いに関しては会社独自で柔軟な対応をとることが可能となりますが、かたや社会保険の各種届出においては、氏名についてはあくまで「戸籍上の記載」に則ることとされ、健康保険被保険者証には戸籍上の氏名が印字されます。この点、協会けんぽが交付する健康保険被保険者証に関して、氏名等記載変更に係る申出を行うことにより、通称名や旧姓を記載できます。

被保険者証に通称名を記載する申出を行う場合の表記

健康保険被保険者証への通称名の記載は、性同一性障害を有する方について、協会けんぽがやむを得ないと判断した場合に認められます。申し出が認められると、被保険者証表面の「氏名欄」に「通称名」、「性別欄」に「裏面参照」と記載されます。また、被保険者証裏面の「備考欄」に「戸籍上の氏名」「性別」が記載されます。

被保険者証に旧姓を併記する申出を行う場合の表記

選択的夫婦別姓制度導入を求める声の高まりを背景に、婚姻後の旧姓使用を希望する方に対しての行政側の配慮が各所で進んでいます。すでに住民票やマイナンバーカードに関しては旧氏併記が認められていますが、申し出により健康保険被保険者証についても同様の取扱いが可能となっています。被保険者証表面の「氏名欄」については、戸籍上の氏と名の間に括弧書きで旧姓が表記され、その上で裏面の「備考欄」に「氏名欄の括弧内は旧姓」と記載されます。

通称名記載、及び旧姓併記の申し出手続きの詳細に関しては、以下よりご確認いただけます。

参考:協会けんぽ「被保険者証通称名記載及び旧姓併記の取扱い

通称名や旧姓の使用に係る多様な従業員ニーズへのご配慮を

職場での通称名や旧姓の使用について、御社ではルールを定めているでしょうか?今日では、多様な性自認への理解が進んでいること、さらに選択的夫婦別姓制度について議論が重ねられていることに鑑みれば、従業員側の通称名や旧姓使用の希望に対し、企業側が最大限の配慮を講じるべきことは言うまでもありません。健康保険被保険者証同様、通称名の使用や旧姓の併記については行政側で幅広く認められつつあります。もちろん、企業においては経理上及び人事上の管理として、通称名・旧姓と戸籍名の両方の把握、適切な使い分けを徹底すべきこととなりますが、これらを踏まえて前向きにルールを作っていくことが、時代の流れに則した対応と言えるのではないでしょうか。
姓名はその人のアイデンティティそのものであり、職場での旧姓使用が認められないことから訴訟に発展したケースもあるため、企業においては慎重に検討を進めるべきテーマです。社内における通称・旧姓使用の範囲や手続き等、具体的なルール策定に際しては、労務管理の専門家である社会保険労務士にお気軽にご相談ください。

LINEで送る

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事