その運用、違法かも!実は適用困難な「事業場外みなし労働時間制」の要件とは?

昨今、「事業場外みなし労働時間制」の誤った適用に対する指導、それに伴う割増賃金等の遡及支払命令件数は着実に増加傾向にあります。東京労働局が公開した「監督指導による賃金不払残業の是正結果(平成24年度)」では、一企業に5億円もの遡及是正額の支払が命じられたことも。もはや他人事ではないかもしれません。

参考:東京労働局「都内125企業が割増賃金17億円を遡及支払-監督指導による賃金不払残業の是正結果(平成24年度)-」4ページ目

現代において、「事業場外みなし労働時間制」の適用対象は激減

事業場外みなし労働時間制とは、文字通り、社外で業務に従事した場合に適用される労働時間制です。会社外の業務遂行に伴い労働時間の算定が困難となる場合、この労働時間制を採用することで使用者による勤怠管理義務が免除され、その代わりに労働者が「業務遂行に必要な時間数」働いたとみなすことができるようになります。
従業員に対してテレワークや外回りの営業活動等をさせる機会の多い会社においては、一見するとメリットの多い労働時間制に思えます。ところが、いざ細かな要件を確認してみると、意外にもこの制度の適用対象が非常に限定的であることが分かります

携帯やメールで上司とつながれば、事業場外みなし労働制の適用対象外?

例えば、リーフレットには、下記のケースでは事業場外みなし労働時間制を適用できない旨が明記されています。

①何人かのグループで事業場外労働に従事する場合で、そのメンバーの中に労働時間の管理をする者がいる場合

②無線やポケットベル等によって随時使用者の指示を受けながら事業場外で労働している場合  

③事業場において、訪問先、帰社時刻等当日の業務の具体的指示を受けた後、事業場外で指示どおりに業務に従事し、その後、事業場に戻る場合

参考:東京労働局「事業場外労働に関するみなし労働時間制の適正な運用のために

つまり、「使用者による指揮命令を受けない」ことが大前提となるわけですが、実態としてこの部分をクリアできるケースは極めて稀でしょう。携帯電話やパソコンの普及により、通話やメール、チャットツール等で、どこにいても連絡が取れる世の中です。もちろん、通信可能な状態であれば直ちに事業場外みなし労働時間制の適用が否定されるわけではありませんが、就業時間内であれば業務の連絡をやり取りするでしょうし、仕事の指示を仰ぐこともあるでしょう。会社外での勤務がメインとなる社員に対して、安易に事業場外みなし労働時間制を適用するのは得策とはいえず、必ず実態としてどうなのかに目を向ける必要があります

在宅勤務における事業場外みなし労働時間制の要件

ちなみに、同リーフレットには、在宅勤務に事業場外みなし労働時間制を適用できる例として下記の要件を挙げています。

①当該業務が、起居寝食等私生活を営む自宅で行われること。

②当該情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと。

③当該業務が、随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと。

参考:東京労働局「事業場外労働に関するみなし労働時間制の適正な運用のために

上記①②はまだしも、会社員である以上、③の要件を満たすことは困難といえるのではないでしょうか?在宅勤務においても、事業場外みなし労働時間制の導入は様々難しさがありそうです。

事業場外みなし労働時間制 で高額な残業代が請求されることも

事業場外みなし労働時間制の導入に伴い、厳密にはあらゆる要件を満たす必要があるとはいえ、実態としてこの労働時間制は、数あるみなし労働時間制導入状況の中でも特に高い割合を占めます。
少し古いデータになりますが、平成14年度時点で「みなし労働時間制を採用している企業(8.1%)」のうち、実に7.3%が事業場外みなし労働時間制を採用している、というデータが残っています。

参考:厚生労働省「みなし労働時間制の導入状況

上記のデータからすでに10年以上が経過していること、そして昨今の働き方改革の推進から、現在ではさらに多くの企業が事業場外みなし労働時間制を導入していることは明らかです。しかしながら、本当に必要要件を満たした上でこの制度を採用している企業というのは、実際のところ、そう多くないのではないでしょうか?
働き方改革の実現に向けた動きの中で、ここ数年、全国の労働基準監督署による監督指導が特に強化されています。東京労働局より公開された資料によると、「主要な法違反」として目立つのが「労働時間」と「割増賃金」に関する項目であることが分かります。

参考:東京労働局「平成 28 年の定期監督等の実施結果を公表します-定期監督等を実施した事業場の7割以上に法違反-

この2点は、まさしく事業場外みなし労働時間制に関わる労使トラブルの頻発項目です。冒頭でもご紹介した通り、平成24年度には一企業に対し約5億円の遡及支払が命じられた例もあります。今一度、事業場外みなし労働時間制の要件と実態とを照らし合わせ、適切な運用が行われているかを確認しましょう。不安な点があれば、早めに社会保険労務士にご相談ください。

事業場外みなし労働時間制 の問題点とは?

事業場外みなし労働時間制における最大の問題点は、「本来勤怠管理が可能であるにもかかわらず、誤ってこの制度が適用されてしまうこと」にあります。繰り返しになりますが、これだけ携帯電話やパソコンが普及している中で、「社外にいる従業員を指揮命令下におくことは出来ない」と主張するのはなかなか困難です。また、企業の従業員であれば、たとえ社外にいても、上司による業務指示を受けて動くケースが大半といえるのではないでしょうか。ぜひ実態に目を向け、考えてみましょう。
事業場外みなし労働時間制は、一見すると会社にとって都合の良さそうな制度ではありますが、誤った導入による労使トラブルを散見します。実際に裁判になることもあり、判例ではほとんどの例で事業場外みなし労働時間制の適用が否定されています。特殊な労働時間制の導入によって、わざわざ労使トラブルのリスクを抱えるのは得策ではありません。社外で業務に従事する社員にも、適切な勤怠管理を心がけましょう。

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