アバウトになりがちなシフト制パート・アルバイトの労務管理を見直そう!

人手不足が深刻化する昨今、企業が人材確保を考える上では、労働者のニーズに合った柔軟な働き方への対応に目を向けていく必要があります。かねてより、飲食店等ではパート・アルバイトを中心としたシフト制の運用で店舗運営をしているケースが目立ちますが、こうした形態は今後様々な分野で広がっていくものと予測されます。

シフト制では、その時々の事情に応じて柔軟に労働日・労働時間の設定が可能である反面、「シフトに入れなかった」「シフトに多く入れられた」といったトラブルが後を絶ちません。このページでは、シフト制にまつわるトラブルを未然に回避するために、労使間で定めておくべきポイントを確認しましょう。

契約締結時には、労使間で「目安となる労働日数・労働時間数」を明らかにしておく

シフト制は、契約締結時に労働日や労働時間数を固定せず、一定期間ごとに作成され勤務シフトにおいて初めて、具体的な労働日や労働時間を確定する働き方です。こうした働き方の柔軟性は、労使双方にとってメリットとなる一方で、冒頭の通り、労使トラブルの火種ともなるため注意が必要です。

シフト制のパート・アルバイトに対しても、労働契約締結時には労働条件通知書等で労働条件の明示が不可欠ですが、その際には以下の項目について明らかにし、労使間で共通の認識を持っておきましょう

労働日数・時間について

  • シフトに入る可能性のある最大の日数や時間数
    例:毎週月、水、金曜日から勤務する日をシフトで指定する
  • シフトに入る目安の日数や時間数
    例:1ヵ月○日程度勤務/1週間あたり平均○時間勤務
  • シフトに入る最低限の日数や時間数
    例:1ヵ月○日以上勤務/少なくとも毎週月曜日はシフトに入る

始業・終業時刻、休憩について

  • 労働日ごとの始業・終業時刻、事前の設定が困難な場合はシフトに入る際の原則的な始業・終業時刻
    ※「シフトによる」等の記載では明示義務を果たしたことになりません
  • 1日の労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩の設定

シフト制の場合でも、労働日数や時間の目安を明らかにしておくことで、労使トラブルの回避につながる他、後述する年次有給休暇の付与や休業手当の支給に際しても検討しやすくなります。もちろん、「実際に勤務開始したら当初の予定通りではなかった」という場合には、労使で契約内容の見直しを行い、都度、実態に即した労働条件通知書を交付します

シフト作成・変更時のポイントチェック

シフト制にまつわる労使トラブルの増加に鑑み、厚生労働省は「いわゆる「シフト制」により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」をまとめ、公開しています。シフト作成・変更に際し、労使間で設定すべきルールについて、以下を挙げています。

シフト作成時

  • シフトの作成時に、事前に労働者の意見を聞くこと
  • シフトの通知期限(例:毎月○日)
  • シフトの通知方法(例:電子メール等で通知)

シフト変更時

  • 一旦確定したシフトの労働日、労働時間をシフト期間開始前に変更する場合に申出を行う場合の期限や手続
  • シフト期間開始後、確定していた労働日、労働時間をキャンセル、変更する場合の期限や手続

厚生労働省の資料より、「シフト制労働契約簡易チェックリスト」をご確認いただけますので、現在の運用についてチェックされてみてください。

参考:厚生労働省「いわゆる「シフト制」により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項(使用者の方等向けリーフレット)

シフト制のパート・アルバイトにも、年次有給休暇の付与や休業手当の支払いが必要

シフト制のパート・アルバイトとの労使トラブルは、労働日数や時間数に関わるものだけではありません。労働者として当たり前に保障されている権利が、パート・アルバイトという雇用形態だからという理由で侵害される事例は後を絶ちません。

例えば、年次有給休暇については、シフト制労働者の場合であっても、雇入れの日から起算して6ヵ月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤したときは、労働基準法所定の日数を付与しなければなりません。また、シフト制労働者の場合であっても、使用者の責に帰すべき事由により労働者を休業させた場合には、休業手当の支払が必要になります。その他、解雇予告のルール(30日前の予告もしくは解雇予告手当の支払い)や無期転換ルール、同一労働同一賃金、社会保険加入等は、雇用形態の違いを問わず、要件を満たす限り適用を受けることになります

シフト制のパート・アルバイトの労務管理は、正社員と比較するとアバウトになりがちです。労使紛争に発展する前に、日頃の取扱いを見直し、不適切な点があれば早期に是正しましょう。労務管理状況の確認は、専門家である社会保険労務士にご相談ください。無料のクラウド勤怠管理システム「IEYASU」は、複雑なシフト制勤務の勤怠管理にも万全対応しています!

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