「給与の口座振込」にあたり、労使協定の締結が必要です!

給与を口座振込で支払う方法は、今日ではごく当たり前の取扱いとなっていますが、意外にも適正な運用ができていないケースを散見します。給与の口座振込を実施するにあたり、労使協定の締結はお済みですか?特定の金融機関の指定をしていないでしょうか?

労基法に則って、給与の口座振込を正しく行うためのポイントを確認しましょう。

まずは確認!賃金支払の5原則

賃金支払いについて、労働基準法第24条では以下の5原則が定められています。

✓ 通貨払いの原則
✓ 直接払いの原則
✓ 全額払いの原則
✓ 毎月1回以上払いの原則
✓ 一定期日払いの原則

参考:厚生労働省「賃金の支払方法に関する法律上の定めについて教えて下さい。

現在ではすっかり主流となっている給与の口座振込は、一見すると、通貨払いの原則に反するようにも思われます。しかしながら、「公共料金等の引落口座に給与を入れてもらった方が都合が良い」「手渡しで給与をもらうより、口座に振り込んでもらった方が安全かつ管理しやすい」等、給与を口座振込とすることでの労働者側のメリットは多岐に渡ります。そこで、賃金支払の原則の例外として、「労使協定を締結」し、「労働者の同意」を得た上で、給与を口座振込によって支払うことが認められるようになりました

締結していますか?「賃金の口座振込に関する協定書」

給与支払いを口座振込としている会社でも、意外と盲点となっているのは「労使協定の締結」です。御社では適正に締結できているでしょうか?

給与の口座振込に際して締結が必要なのは、「賃金の口座振込に関する協定書」です。協定書には、口座振込の対象者、対象賃金、指定金融機関等の取り決めを盛り込みます。都道府県労働局では、ひな型や記入例を提供しているところもあるので、参考にしてみてください。

参考:神奈川労働局「賃金の口座振込に関する協定書

会社による「金融機関の指定」はできません

労基法施行規則では、給与の口座振込について「労働者が指定する銀行その他の金融機関に対する労働者の預貯金への振込みによる方法」と規定しています。よって、大原則は「労働者が指定する金融機関」となるわけですから、会社側が一方的に「○○銀行で」と特定の銀行を指定することは、労基法に反する取り扱いとなります。また、行政指導では「取扱い金融機関等を一つに限定せず、複数等配慮すること」とされています。

ただし、「○○銀行を推奨する」というような協力要請をすることは可能です。もちろん、協力要請に強制力はありませんから、労働者から異なる金融機関の指定があった場合、会社は対応しなければなりません。

給与からの振込手数料天引きは「全額払いの原則」に反する可能性大

給与から振込手数料を天引きすることは、前述の賃金支払の5原則のうち「全額払いの原則」に違反する可能性が高いといえます。ただし、「賃金控除に関する協定書」を締結して本人の同意が得られれば、給与からの振込手数料控除が認められるとの見解もあり、専門家間でも意見が分かれる部分ではあります。

この点、私個人としては、振込手数料は会社経費とするのが妥当という見解を支持しています。労使間の債務履行とは、「労働者が労務を提供すること」「事業主がこの労務への対価(賃金)を支払うこと」によって成立します。振込手数料は事業主の債務履行に伴って生じる費用のため、会社が支払うべきと考えることができます。

給与の口座振込は、「労働者の同意」が大原則

業務効率化の観点から、「すべての従業員の給与支払いを口座振込としたい」という会社も多いのではないでしょうか?もしくは、「従業員全員、口座振込を原則として処理を進めている」というケースもあると思います。

しかしながら、労基法によると、給与の支払は原則として「通貨で」労働者本人に「直接手渡さなければならない」とされています。口座振込とするためには労使協定の締結だけでなく、「労働者の同意」が必要となりますから、口座振込に同意しない労働者に対して強制することはできません

給与は「支給日の午前10時に全額引き出せる」ように振込処理を

給与の口座振込時のトラブルでよく耳にするのが、「給料日なのに、昼休みに銀行に行ってもまだ入金されていなかった」等、振込のタイミングに関わるものです。この点、行政通達では「賃金支払い日の午前10時頃までに払い出しが可能となっていること」とされているので、会社としてはこのスケジュールに則るようにしましょう

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